山の上の変な人
神社のあるおこぼれ山とやらに登る。
山登りは行ったことあったっけ? 確か有伽の隊長さんだっけ、あの人探しにいった時に無駄に長い階段登った神社だか仏閣だかある山に登った気がする。
あの日以来かな?
皆で山登り。
山の大きさはそこまで無いので山道をゆったり歩いて向かう。麓こそ車の通る道はあったけどこの山には無いらしい。
人が通れる程度の道は整備されていたので皆縦になって登っていく。
「いやー、山登るの久々だねー」
「私は毎日のように登ってるかも、神社に居る子が面白いかも」
神社に居る子?
「え? 誰かいるの?」
「最近住んでるんだって。くーちゃんって呼ぶと妾を子供扱いするでないわーって怒るかも」
それが可愛いかもーっと楽しげる告げる美園。
どうやら子供のような存在らしい。
「はー、しっかし、ここってなんか変なのでてくるっけ?」
「変なのってなんだべよ」
「えっと、クマ、とか?」
「鹿とか狸はみたことあるかも?」
「イノシシやクマがいないならそれで良し!」
危険な生物がいなければいいらしい。
「にしても、九月入ったからか枯れ葉が結構落ち出しとるなぁ」
確かに、落葉はもう少し後な気がするけど、ここはかなり落ち葉が酷い。
万年床並みに敷き詰められた落ち葉は、もしかして去年からこんな感じなのだろうか?
「あ、ミミズ」
「ひぃっ!? ちょ、有高さん何発見してるのよ!?」
どうやら踏歌は虫嫌いのようだ。
コンニチワしたミミズを盛大に避けて踏歌がケンケンパ。
しかし、避けた先に更なるミミズ。
土が良いのかミミズさんが大量発生だ。
「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」
直前で気付くが、仰け反ったせいで枯れ葉に滑ってすってんころりん。
盛大に尻持ちを着く。
「あーあ」
そしてぐにゅっと手を着いた場所にもミミズさん。
「ぎにゃあぁぁぁぁぁぁ――――っ!?」
もはやパニック状態だった。
皆で山登りは一人の少女に深い心の傷を負わせてようやく頂上へと至った。
山頂まで約30分。結構早いと言うべきか、掛かったと言うべきか。
ワタシは根唯に手を引かれながらだったから比較的に早く着いたと言った方が良いかもね。
石で出来た回廊が神社まで繋がっている。途中にあるのは赤い鳥居。さらに奥には石で出来た狐の石像。稲荷像という奴だろう。
本殿と思しき場所に存在していた階段に、そいつは腰かけていた。
巫女服、でいいのかな? そんな白と裾などを赤くした服を身に付けた、金髪の少女。
即頭部というか頭の上というか、に狐の耳をくっつけて、おはぎと思しき物を食べている。
「ぬ? 客人かや?」
「くーちゃん、遊びに来たかも」
「なんじゃお前か」
美園に気付いた少女は面倒臭そうに残っていたおはぎを口に放り込み、手に付いていた餡子をちろりと舐める。
「なんじゃなんじゃ、知らん顔がようさんおるの。にょほほ、皆妖使いかや」
妖使いと分かるってことはこの娘も妖使い?
まぁ狐耳ある時点で一般人じゃないか。
近づいて来たから分かったけど、これ付け耳じゃなくて普通に生えてる耳だ。ぴくんぴくんっと動いているのがちょっと可愛い。撫でてもいいかな?
「こちらくーちゃん。くーちゃん、学校の友達と一緒に来たかも」
「くーちゃん言うなと言うとろうが。妾には小出葛之葉という名前があるのじゃ。全く、何がくーちゃんか」
葛之葉だからくーちゃんか。安直過ぎる気がするけど、私達と同じかそれ以上に幼く見えるのでいい渾名のような気がしなくもない。ワタシもくーちゃんと呼んでおこう。
「それで、美園、この子って何者?」
「さぁ? ここに住んでる子?」
「阿呆、妾は久々に日本に来たから宿がないだけじゃ! 最近秋葉にも行き飽きての、田舎暮らしに嵌っておるのじゃ」
なんだそれ? とりあえず変な子であることは確かなようだ。
「コルァ! そこのなんか大量の妖ついとる奴っ、今変な子とか思ったじゃろ! 妾を変人などと言いおって、貴様のがよっぽど変人ではないかぁーっ」
おお、有伽が複数の妖持ちだって気付いた。
でもこっちからは相手の妖は分からない、か。
狐っぽいし、九尾の狐? 管狐? 銀狐かな? でも名前から言えば葛之葉? 確か安倍清明を産んだ妖怪だっけ?
「くーちゃんさんはここに住んでるの?」
「貴様までくーちゃん呼ぶな!? 妾には葛之葉という自分で決めた名前があるのじゃ!」
自分で決めたのかよ!?
思わず心の中でツッコミいれちゃったよ。
「ふん、まぁよい、暇していたところじゃ、今日は何をするつもりじゃ」
「いっつもここでくーちゃんとゲームしたりこっくりさんしたりしてるかも」
ゲームはいいけどコックリさんはやりたくないな。