表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
妖少女Ⅱ  作者: 龍華ぷろじぇくと
第三節 三味長老
111/182

学園攻防戦4

 想定外とは何を差すのだろうか?

 指示を間違えたこと? 兵士が分断されたこと? 迷路が意外と大変だったこと?

 あるいは、無策で学園内に侵入したこと? 廊下が雪原地帯になっていたこと? どこからともなく泥の人型が現れ襲いかかって来ること?


 いや、おそらく、一番手前にあった階段だ。

 一度衝立を破って侵入を試みたが物凄い衝立の数に断念し、敵の誘いのまま廊下を進んだことだろう。

 思えばあそこで無理にでも食い破っておけば、一人くらいは殺せているかもしれない。


 現状、兵士達の地獄絵図が広がっていた。

 三味長老はまさかの光景にしばし呆然とする。

 何しろ、雪原地帯となった廊下には泥人形が徘徊しており、そちらに意識を向ければ雪の中から雪童子が出現し始める。


 どれだけ銃弾を打ち込んでも意味は無い。

 しかし近づかれれば抱き付かれ、引き倒され動けなくなる。

 そこに泥がかぶさってくればもう終わりだ。


 泥も雪もそこまで腕力がある訳ではない、破壊も可能だ。

 銃を鈍器として使えば粉々に出来る。

 しかし、一度パニックを起こせば引き倒され口を塞がれ窒息死。


 先に突入したB班もそんな連携にやられたようだ。

 しかも、だ。たまに天井から現れる銃器をもったゴシックロリータの少女がさらに廊下を地獄に変える悪魔であった。

 ガトリングガンを乱射しながら笑い続ける天原土筆。こいつがいるせいで下手に進軍出来ない状態である。


 方法はあるのだ。今はまだタイミングが合わないだけだが、既にある程度のタイミングは計った。

 あとは再びアイツが出てくるのを待つだけだ。

 兵士達はもう11人に減ってしまったが、ようやく反撃の目が出て来た。


「じゃじゃーん、三味長老、覚……」


 真上に出現した天井下りに、三味長老は大きく口を開き叫ぶ。

 ただの叫びではなく妖能力を使用した一撃だ。

 獲物を撃ち殺すだけのつもりだった天井下りは音の暴虐に一瞬焦るも、彼女の耳にはしっかりと耳栓があった。

 彼女だって馬鹿じゃない。三味長老の能力から音関連だと当たりを付けて耳栓をしていたのだ。


 ただ、彼女は本当の意味で三味長老の妖能力が分かっていた訳ではない。

 ゆえに、鼓膜ではなく骨ごと揺さぶられた彼女は踏ん張ることすらできずずるりと天井から落下する。

 なんとか必死に頭を振って立ち上がろうとするが、全身丸ごと揺さぶられたせいで上手く立てない。


 顔を上げた瞬間、銃口が額に突き付けられた。

 見上げれば、三味長老のねばつくようなしたり顔。

 悔しげに歪む天井下りの顔を見て、喜色に笑みを浮かべる。


「残念だったなぁ土筆ちゃぁん。ラボ裏切らなきゃ死ぬ、だから裏切ったのに死ぬ。げひゃひゃ、テメェどっちみち詰んでんじゃーん」


 三味長老が引き金を引く、その刹那。

 彼の真下から出現する雪童子。

 想定外の一撃に尻持ちを着く三味長老。

 銃撃が行われるが倒れる間に放たれた銃弾は天井だけを穿つ。


 雪童子たちが土筆を持ち上げ去っていく。

 慌てて立ち上がった三味長老は仲間に指示を出し一斉射。しかし、泥田坊が割り込み衝立が邪魔して土筆を銃弾から守りながら撤退を始めてしまう。


「クソっ、悪運強ぇなぁオイ」


 直ぐに大勢を整え兵士達を編成しなおす。

 といってもたった11人。もはや大勢という程でもなかった。

 協力しながら土筆を追っていく。

 衝立を破砕して進むと、丁度トイレに運び込まれる土筆が見えた。


「トイレ、なぁ、嫌ぁな予感しかしねぇなぁ」


 トイレに追い付く、一つ一つトイレを開けて確認するが、土筆の姿は既に消えていた。


「逃した魚は大きいってかぁ?」


「た、隊長っ!」


 全ての個室を調べた瞬間、トイレから唐突に出現する泥田坊。


「お、おいおい……クソ、トイレから出ろォっ!」


 全員慌ててトイレから脱出し、二階への階段へと向かう。


「面倒臭ぇ、やってくれやがる。随分泥田坊がいると思ったがそういうことか。今からじゃ泥田坊探すのは無謀だなぁ。まったく、泥田坊の妖使いを田んぼ付近に待機させて花子さんの便器移動で泥人形だけ連続召喚ってかぁ。ふざけてやがる」


 毒吐きながら階段を上る。

 すると兵士が数名二階廊下前で警戒しているのを見付けた。


「おいおい、何してる?」


「あ、隊長、俺らはB班です。こちらのリーダーは既に下の階でやられました」


「ああ、だからレシーバーに返答なかったのか。生き残ったのは4人だけか?」


「いえ、俺らは連絡役で隊長が来るのを待ってました。他40余名は先に向かっています。こちらの廊下には相変わらず泥田坊、それと影がたまに見えました。おそらく影女。がいます」


 ここから見えたのはそれだけらしい。

 4名を合流させ、合計15名になった兵士を引き連れ三味長老は二階攻略に乗り出すのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ