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妖少女Ⅱ  作者: 龍華ぷろじぇくと
第三節 三味長老
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学園攻防戦3

「なんだぁ、こりゃぁ?」


 三味長老率いる兵士達が学園にやって来ると、学園には衝立の群れ。

 校庭は衝立で迷路となっており、要塞のように変化していたのである。

 学校周辺を衝立が囲み、入口は正門からの一カ所のみ。

 そこから衝立の迷路が入り組み、学校に辿りつくまでの校庭を衝立が完全に封鎖していた。


「クソめんどクセェなぁオイ!?」


 毒吐きながらも兵士に指示を送って衝立を銃弾で粉砕する。

 しかし直ぐに新たな衝立が現れ壁を壊して真っ直ぐに侵入、という方法が難しいと悟る。

 面倒臭いが正規に迷路を踏破しなければならないらしい。


「野郎、徹底的に俺らを邪魔するつもりか。おもしれぇ」


 すぅっと息を吸い込み、手前の衝立向けて叫ぶように吐きだす。

 音波と言うなの暴虐が周囲の衝立を粉砕して行った。


「半分は正攻法で向え、他はおれについてきなァ!」


 半壊した衝立を乗り越え進む半数の兵士。

 直ぐに衝立が復活するが、そのたびに三味長老の音波により衝立が粉砕して行く。

 大人数なのでかなり時間が掛かる。

 しかし着実に進める連撃だ。


 向こうも見ているのだろう。途中から衝立が数枚単位で壁になるよう出現するようになったので仕方なくずるをするのを諦める三味長老だったが、校庭の半分程までを61人で突破した。

 残りの60人は正攻法で向っているのでまだここの半分にすら至っていない。

 銃撃が起こっていることから迷路の中に何か放たれているのだろう。


「まぁ、ったく、面倒なことこのうえねぇな。たかが一匹狩るだけの筈だろォがよぉ?」


 そう告げて通路を破壊した次の瞬間、目の前に佇む廃棄品だらけの生物。

 型落ちしたテレビに壊れた傘、赤いポストに穴のあいた桶。ありとあらゆる廃材をこねて混ぜて固めて作った不格好で巨大な人型。

 塵塚怪王が目の前に佇んでいた。

 呆然とする兵士達に、巨人は拳を握り、引き上げる。


「た、退避ーっ!!」


 三味長老が飛び退くと同時に、重量物が衝立を割り砕き兵士に激突した。

 数人の兵士が避けきれずに押しつぶされる。

 動き出した塵塚怪王は衝立を圧し砕き進軍を開始する。


「クソっ、ここでアレを投入してくるかよ!」


 毒吐きながら迷宮と化した道をひた走る。

 ある程度離れたところで再び衝立を破壊しながらショートカットを行う。

 安全を確認して人数を確認すると、61人居た筈のメンバーは35人に減っていた。

 数人がゴミの王に押し潰され、残りは逆方向の道に逃げてしまったようで、一気に戦力が四分の一になっていた。


「クソ、他の兵士が辿りつくまで待った方が良いか?」


 迷路内を巨大生物のトラップが付いているのだ、別の兵士たちも壊滅したかもしれない。とこの人数での攻略を考えた時だった。胸に入れていたレシーバーから声が聞こえてくる。


『隊長、こちらB班』


「あん?」


『なぜか迷わず校舎に辿りつきました。生存者60名。全員無事です。校舎左側より突入開始出来ます』


「左からか……」


 さすがにここから辿りつくのは少し時間が掛かる。


「分かった。先に突入しろ、気を付けてな。俺もそちらに向かう」


 正面玄関への到達を諦め左へと向かうことにする三味長老。

 生き残った兵士達を連れて衝立破壊しながら左へと向うのだった。

 ただ、先程までと違い、破壊される衝立は一枚づつになっており、簡単に破壊できる。

 まるで誘導されている気がしてあまり進みたくないなと思ってしまったのは、彼の思いすごしではないだろう。


 後方からは塵塚怪王の移動する衝立の破砕音と、兵士達の悲鳴。

 悔しいが別れた残りの兵士達は死亡したと思った方が良いだろう。

 A班は初めから35人だったのだと自分に言い聞かせ、左側の入り口へと向かう三味長老。


 どうせ校舎内もトラップだらけなのだ。

 ならば喰い破るつもりで動かなければいけないだろう。

 果たしてこの素人兵だけで闘えるモノだろうか?


「ああ、そうだ。B班、敵勢力について連絡するように……B班?」


 レシーバーに伝え忘れていたと話しかけるが、何故か返信が無かった。

 嫌な予感を浮かべつつ左の入り口へと急ぐ。

 入口には既にB班は居なかった。


 先に突入を任せたのは自分なのでとやかく言う必要はないが、流石にこれはマズい。

 校舎の奥から無数の銃撃音と悲鳴が響いている。

 嫌な予感しかしない。


 ぽっかりと開かれた勝手口が不気味に見える。

 本当にここから突撃していいのだろうか?

 罠であることくらいは分かる。だが……


「隊長……」


「いや、行こう。我々の目的は高梨有伽の捕獲。生死は問わず、邪魔者は全て消して構わん。全力を持って捕獲任務を遂行する」


 皆を元気づけるように三味長老は告げる。

 だが、それは自分自身に言い聞かせるようでもあった。

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