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妖少女Ⅱ  作者: 龍華ぷろじぇくと
第三節 三味長老
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学園攻防戦2

 三味長老率いる兵士たちは、街中を行軍しながら学園へと展開しつつあった。

 ソレを田んぼの畦に隠れながら双眼鏡で観察する楠葉と縷々乃。

 双眼鏡自体は土筆が天井から出したものである。天井内にあらゆる武器を置いておけるので必要になりそうなものは大体揃えてあるのだ。


 双眼鏡に小型望遠鏡、暗視スコープなどなど、部隊で動くこともあるので一個小隊分の在庫を揃えている。もちろん銃器は言わずもがなであろう。

 とはいえ、今回二人が必要としたのはこの双眼鏡とトランシーバーだけである。

 トランシーバーの相手は学校に居る有伽へと繋がるようになっている。


「こちら縷々乃。ウサギは餌に食いついた」


「何ソレ?」


「トランシーバーだもの、ちょっと雰囲気を出そうかと」


「あ、そう……」


『本部了解、ベルフェゴル1、作戦遂行を祈る』


「意外とノリノリね……」


「有伽はこういうの好きそうだもの」


 二人は任務を開始する。

 と言っても作って送ってだけなのだが。

 

 そして、二人が作業に取りかかる頃、他のメンバーもまた、準備を始めていた。

 本部を三階トイレに設置し、本部で連絡を取るメンバー、大河和馬(アンサー君)、為替梃(琴古主)、福島賽音(琵琶牧々)、近藤雄也(迷い家)の四人を残し、他のメンバーは江西総一郎(衝立狸)が立てまくった衝立で場所を作り、隠れながら相手を妨害することにしたのである。


 基本攻撃を行うのは有伽、土筆、葛之葉、根唯の四人。

 これに加え、楠葉の泥田坊がトイレを伝って無数に学園内に放たれている。

 彼らも動きは鈍いが相手を殺せるという意味においては攻撃部隊である。

 田んぼの近くに楠葉がいるので田んぼの内部に設置した便器を使って定期的に増援部隊がどんどん校内へと入り込んでいる。

 いわば神隠しがやっていたことを逆にやっているのである。


 屋上に陣取るのは常思慧亜梨亜(塵塚怪王)と鋒鋩傑(大坊主)。

 屋上で相手を確認しながら校庭に巨大生物を作り出し撹乱する部隊である。

 もちろん外に居るので敵の攻撃に晒される可能性はあるが、一緒にいる小峠紫乃(闇子さん)が校舎の壁に顔を張りつかせることで敵の動向を確認し、二人に指示をすることで屋上から顔を出さないように工夫している。

 ゆえに相手の居場所を確認するために顔を出して狙撃される、と言った間抜けな死亡フラグは消しているのである。


 残った面々、三枝秋香(水虎)、高足柚葉(面霊気)、周茂美三留(影女)、樹翠小雪(氷柱女)、舞之木刈華(雪女)、桃井修一(脛擦り)、皆木暮阿(呉葉)は衝立に隠れながら敵の進行を阻む掛かりだ。

 彼らのいる場所は厚めに衝立を重ねて立てるのでまず銃弾を受ける可能性は無い筈だが、何事ももしもがないとは言い切れないので危険は変わりない。


 一階は刈華が雪原に変えており、小雪が氷柱で見ながら階段の一つに隠れ潜んで敵を迎撃する。

 一階が雪だらけなので泥田坊に加えて雪童子も出現する危険地帯だ。

 しかもトイレからは絶えず泥田坊が出現し続けるし、床が消えるほどに降り積もった雪原廊下からは雪童子も限りなく出続ける。


 二階に陣取るのは美三留と桃井、秋香の三人だ。こちらは雪原廊下を突破して体育館側の階段を上った先にある二階と三階を繋ぐ通路で待ち伏せだ。

 周囲は見えないものの、既に二階に脛擦りや水虎、影女を潜ませているので妨害は出来る。

 ここは影女を操る美三留が目の役だ。

 問題は秋香がどれだけやれるか、だけど、彼らは足止めしてくれれば問題は無いのでそこまで気にする程ではないだろう。


 泥田坊達も結構いるし、廊下のいたるところに衝立あるからかなり足止めになるだろう。

 問題があるとすれば三階だろう。

 足止め部隊は高足柚葉(面霊気)、皆木暮阿(呉葉)の二人だけである。

 一応、根唯と有伽がこの階にいると言えばいるのだが、二人の安全は確保されておらず、屋上への階段に衝立を連続で立てた場所に籠って罠を敷いている状態なので見ることが出来ないのだ。


 手探り状態のまま、仮面の感覚だけで柚葉が暮阿に敵の出現を教えて攻撃を加える。

 有伽たちと間違えないようにしなければならないのである。

 根唯の幸運に期待するしかないだろう、ということで碌に話し合いすらしていない。綿密に打ち合わせられればよかったのだが、そこまでの時間がなかったせいでもある。


 迎撃部隊は一階から三階全ての天井を土筆が、葛之葉は特異な能力のため遊撃を、有伽が三階、根唯が予備としてトイレの近くで待機している。

 とはいえ、根唯は既に能力を存分に使っている。

 この学校を家と見たてて、幸運を掛け、外敵に災いを齎すため義手を取り外して能力を使用中なのである。


 幸運を味方に付けての学園要塞、まるで勇者を待ち望む魔王のように、有伽は最奥となるトイレの前で待ち続けるのだった。

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