学園攻防戦1
学校に戻って来た私達は教室に集まっていた。
とりあえず情報共有した方がいいと思って皆でここに集合することにしたのだ。
適当な椅子に腰かけあるいは立ったまま、私達は円陣組んで顔を突き合わせていた。
「さて、とりあえず神隠しは倒したからこれ以上の増援は無い」
「でもまだ百人くらいいるよね?」
「さすがに百人はキツイ、かなぁ」
私は思わず口にだす。
当然、自分一人では、と言う意味だ。
土筆が上手く嵌れば天井からの銃撃で幾らでも屠れるだろうが、相手も土筆の戦法は理解しているはず。
そうなると、やはり土筆の攻撃はフォローとして見た方が良いだろう。
ここで土筆を失う訳にはいかない訳だし。
つまり、メインアタッカーは私とここにいる面子になる。
ここで人を殺せる、つまり相手の数を確実に減らせる存在は、私、根唯、葛之葉、楠葉だろうか。
小雪と刈華は一応殺せるとは思うけど、実際に殺してる訳じゃない筈だ。
そして川北奉英。自分が殺した訳じゃないが、自分の行動で兵士が死んだのを目の当たりにしたせいか、他の面子とは違って一人切羽詰まった顔をしている。
他の面々は殺しは無理だろう、陽動するので精いっぱいだ。しかし、相手も陽動に引っ掛かったと分かった以上私以外を放置して来る可能性が高い。
狙いは私と私の護衛である土筆、他は多分無視だ。
そう皆に告げてみる。それでも引く気は無いらしい。
むしろ無視されるなら足止めくらいはできるよね。とやる気を出す始末である。
「けど、それはただの楽観論だろ? 俺が相手殺した訳だし、皆も殺される可能性は消えない」
「ちょ、川北?」
「否定はしないわ。敵は百人越えてる兵士の群れ。私だけを狙ってるとはいえ、邪魔になる皆を攻撃してこないとは言えない。油断すれば死人が出る。かといって確実に相手を殺せとは言わない。基本相手を減らすのは私と葛之葉に任せて」
「ちょ、妾は強制かや!?」
「殺人狐が今更何を?」
「かもしれぬが、かもしれぬがぁ、えーい妾も狐じゃ、敵を屠るのは任せい! って、誰が殺人狐じゃ!!」
反応遅っ!?
「で、どうやって減らすの? また森の中で迎撃戦?」
「残念ですがソレは無理ですわ」
偵察を行ってくれていた土筆が戻って来たらしい。
「どういうこと?」
「敵兵は集合してこちらを目指してきています。おそらく学校が戦場になりますわ。下手に向かえば街中での銃撃になるのでここで迎え撃った方が良さそうですわね」
「マジかよ!?」
「仕方ない、戦闘非参加組は縷々乃に安全な場所……自宅に送ってもらいなさい」
「え? 俺の迷い家に避難させねぇの?」
「雄也が最悪死んだ場合内部の人間がどうなるか分からないから、今回は大事を取って自宅待機」
「え? 俺死ぬ予定!?」
私の言葉に驚く雄也。だから、死んだらって言ってんだろうが。
ホント話聞かないなこいつは。
さすがに銃撃での足止めでも恐ろしいと思った面々も、今回は家に戻って貰うことにした。
「すまん、俺は……」
「気にしないで川北。こればっかりは本人が乗り越えないとどうしようもないし、今はその時間がない。ここに居ても殺されるだけなら自宅にいなさい」
「ああ。すまない」
川北も今回は自宅に戻した。
残ったのは為替梃(琴古主)、大河和馬(アンサー君)、小峠紫乃(闇子さん)、渡嘉敷縷々乃(花子さん)、高足柚葉(面霊気)、周茂美三留(影女)、江西総一郎(衝立狸)、舞之木刈華(雪女)、常思慧亜梨亜(塵塚怪王)、福島賽音(琵琶牧々)、鋒鋩傑(大坊主)、桃井修一(脛擦り)、皆木暮阿(呉葉)の妨害メンバーと、高梨有伽(垢嘗)、近衛雄也(迷い家)、赤峰根唯(座敷童子)、小出葛之葉(妖狐)、樹翠小雪(氷柱女)、射魏楠葉(泥田坊)、三枝秋香(水虎)の襲撃メンバーだ。
三太郎は銃弾相手に役立ちそうにないってことで川北と共に帰ることにしたらしい。
桃田が健闘を祈るって言いながら便器の中へと消えて行くのはシュールだった。
便器に飛び込んで別の便器に出るのか、便器掃除してなかったら病気とかならないだろうか?
ちょっと怖い能力だな。あまり使用はしたくない。
でも、便器を使ってゲリラ戦は出来そうなんだよね。
天井下りと合わせれば結構な……いや、止めとこう。私はやりたくないし。
あ、そうだ。
「楠葉、ちょっと戦法思いついたんだけど……」
私はその迎撃法を思いついて楠葉と縷々乃に告げる。
なんか面白そうだからって縷々乃の方がノリノリである。
よし、迎撃準備だ。時間は殆ど無さそうだし、急がないと。
さすがに一階だと直ぐに征圧されそうだし、屋上? いや、三階の部屋を一つ借りるのが一番か。トイレの近くの方がいい、というかもうトイレが本部でいいか。
その方が脱出路の確保も出来るし。トイレにダイブはしたくないけど。