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妖少女Ⅱ  作者: 龍華ぷろじぇくと
第二節 神隠し
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作戦開始

「伝令、索敵に敵影確認!」


 三味長老率いる捕縛部隊は妖索敵能力に反応した複数の妖使いを捕らえていた。

 三味長老だけが索敵は可能なので、他の面子は目視確認でしかなかったが、森の中を木々を背にしてやって来る敵の存在に銃器を構え殺す気満々で敵の接近を待つ。


 そして、彼らと敵対するためにやって来た陽動部隊である

 為替梃(琴古主)、大河和馬(アンサー君)、小峠紫乃(闇子さん)、渡嘉敷縷々乃(花子さん)、高足柚葉(面霊気)、周茂美三留(影女)、江西総一郎(衝立狸)、舞之木刈華(雪女)、常思慧亜梨亜(塵塚怪王)、福島賽音(琵琶牧々)、鋒鋩傑(大坊主)、桃井修一(脛擦り)、皆木暮阿(呉葉)の妨害メンバーである。


「さぁって、ただの一般学生が軍隊相手に闘うとか死亡フラグ満載だよね?」


「勝手に死なすなよ、僕のアンサー君で最適解を調べるから、皆下手に動いて死んだりするなよ?」


「全員、さっきの話は覚えた? ちゃんと守らないと死ぬわよ」


「小学生の癖に生意気っ」


「私は一応中一なのだけど?」


「そういや本土から来たんだっけ舞之木さん。大丈夫よ、私達がやるのは遠距離からの嫌がらせ。私達の得意技でしょ?」


 ニヤリ、笑みを浮かべる暮阿の言葉になるほど、と刈華が頷く。


「しっかし、こんなことでもないとあんまり話すこと無かったよな別学年は」


「こんなこと日常でもあったりするのはいやだけどね」


「さぁ、戦闘準備! 行くわよ!」


「ちょ、暮阿先輩、陣頭指揮リーダーは私ぃっ」


 美園が慌てるが、暮阿の掛け声で皆が妖能力を発動する。

 琴古主と琵琶牧々が音を鳴らし始める。

 不意に聞こえた音楽に困惑する兵士達。


 何が起こったのか理解する間もなく更なる妖能力が襲いかかる。

 周囲に出現する黒い影。闇子さんが一人、また一人と増えて行く。

 周囲に雪が舞い落ち、徐々に吹雪になって行く。


「チッ! 先手を越されたか? 総員戦闘準備! 撃て!」


 チュインチュインと銃弾が飛んでくる。

 近くの木の一部がはじけ飛ぶ。


「うおおっ!? 頬、頬掠った!?」


「江西、ンなこと言ってる暇あったら衝立立てろっ!」


「わ、分かった!」


 傑の一喝で慌てて衝立を立てて行く総一郎。

 大坊主が出現し、接近しつつある敵を攻撃し始める。

 脛擦りが無数に走りだす。つむじ風のようなそれは兵士達の足元に纏わり付いて転ばせていく。


 音楽が足音を消していく。

 近づく影に銃撃が向けられる。

 女の影に足音は無い。しかし音楽のせいでその違和感に気付けず兵士たちは影を攻撃する。

 影女と闇子さんが雪に紛れて接近する。これを人と間違え兵士たちは無駄弾を打ち込んでしまうのだ。


 さらに雪童子たちが降り積もった雪から出現を始める。

 大坊主と塵塚怪王が左右から挟撃を掛ける。

 銃撃を受けるが人が入っている訳ではないので気にせず敵兵力の無力化を行っていく。


 暮阿の妖力で味方に向かって来る銃弾の弾道を捻じ曲げ、アンサー君に答えを尋ねることで的確に追い詰められることを防ぐ。

 面霊気の面が飛び交い、敵兵士の顔に装着。

 次の瞬間味方同士の同士打ちが始まった。


「うわー、柚葉さんえげつねーい」


「あら、縷々乃ちゃんこそ、何もしてないけどいいのー?」


「私はいいのです。花子さんですから」


 なら何でついて来た!? 思わず言いたくなったのは傑だけではないだろう。

 確かに彼女だけは何もせずにただ一緒について来ただけ、和馬の隣で便器を抱えて座っているだけである。


「なんで便器抱えてんのよ!?」


「携帯便器。便利だよ?」


「あれ? おかしいな? 便器って携帯するもんだっけ?」


「災害時用の携帯便器はあるけどこんなんじゃないよな?」


「ちょっと先輩方、無駄話してる暇無いわよっ!」


 刈華の怒声で我に返った美三留、修一、傑の三名は慌てて迎撃に意識を向ける。




「クソッ、一般妖使いしか居ないくせになぜここまで苦戦してやがるっ!?」


 そして三味長老は味方の兵士達が薙ぎ払われ、同士打ちして数を減らしていく姿にほぞを噛んでいた。

 あまりにも不甲斐ない。しっかりと相手を見て動けば惑わされることもないのだが、寄せ集めた兵士達では妖使い相手にならないらしい。

 もちろん、たった一人の妖使いを捕獲、もしくは殺害するだけのつもりだったため、錬度の低い有志兵を募っただけなのだ。


 本来なら死刑執行が余儀なくされる死刑者たちを無理矢理に。少女一人殺せば無罪放免。簡単すぎる任務の筈だった。

 捕獲するだけでもいいし殺しても構わない。原型さえ留めておけば何をしてもいい。

 こんな涎垂ものの任務、死刑しか待っていないものたちが見逃すわけがなかったのだ。


 しかし、そんな奴らだからこそ、学生たちの足止めを軒並みくらって倒れて行く。

 軍として注意力があれば、組織力があれば、あるいは違った未来もあったかもしれない。

 だが、彼らは個々として殺人に手慣れているだけで協力し合うことはなかった。


 ゆえに殺人に慣れておらずともゲーム感覚で組織戦を仕掛けた学生たちに良いように混乱させられ、自滅していったのである。

 ちなみに兵士達の被害で死者は同士打ちしたメンバーだけである。

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