クラスメイト紹介
本日も朝から学校だ。
木造建築なので周囲の声も良く響く。
隣にあるのは二年教室と小学校の上級クラスなのだが、既に出席が取られているようだ。
残念ながらここ、一年教室にはまだ先生が来ていないのでホームルームは始まっていない。
周囲では友達同士で集まって会話に花が咲いている。
基本は昨日見たテレビの事だとか、誰々が昨日なにしてたとか、おっちゃんがどうとかおばちゃんがどうとか。
どうでもいい会話ばっかり聞こえてくる。
その間、ワタシはといえば、窓から外を覗いている。
こうすると煩わしい会話に強制参加させられないし、外の景色も見られるし、敵が来てもすぐ分かる。
最初こそ会話を楽しもうとか思ったんだけど、この島での話などついて行ける訳もなく、壁の華になるしかなかった。
どんどん切り替わっていく会話に付いていけなかったのだ。
有伽はこういう時、どういう対応をしていたんだろう。
コミュニケーション能力に乏しいワタシではさすがに会話に入っていく勇気はない。
最初こそ気を利かせて会話に強制参加させようとしていた梃たちも逆に気を使っていることに気付いたようでここ最近は話をしに来ては居ない。
それがちょっと哀しくもあり、気を使ってくれて嬉しくもあり……
先生がようやくやってくる。
トイレで唸ってたんだ。とかどうでもいい言い訳を告げて来るのだが、皆それに反応する気は無いらしい。
出欠確認がはじまると、一気に静かになる。先生もボケが不発に終わったせいか真面目な顔で出欠を取り始めた。さっきの言い訳を無いことにしたいようだ。
「相生~」
先生の気の無い声が響く。真面目な筈なのにやる気がない声なのは何故だろうね。
ちなみに、この教室、あいうえお順という訳ではないらしい。
生徒はワタシを入れて26名。
簡単に名前を紹介するとワタシ、こと有高梨伽は【垢嘗】の妖使い。
赤峰根唯は【座敷童子】。ソバカスが多い背の低い女の子だ。
近衛雄也は【迷い家】。マルコメ頭の野球少年天然風味。
東華踏歌は【樹木子】。ショートカットのワカメ髪少女。
相生美園は【コックリさん】。
為替梃は【琴古主】 ツインテールにパッドを被せ中華系な髪型をしている軽音部。
大河和馬は【アンサー君】。ちょっとぼっちゃんカットで控えめな少年だ。
模白弘樹、篠原哲司、屋良美織、穂高弘輝、近藤礼治、堂本小夜音は一般人。
小峠紫乃は【闇子さん】。本人もちょっと暗い性格で長い髪がちょっと怖い。
芦田興輝は【不落不落】。提灯ぶら下げて夜中歩きまわるのが好きらしい。
渡嘉敷縷々乃は【花子さん】。背が小さくおかっぱ頭の少女だ。
高足柚葉は【面霊気】。おっとりとしたお姉さんタイプの人だ。
周茂美三留、飯草正樹、財前博次、安心院巡、高麗誠二、桃田太郎、江西総一郎、川北奉英、觀月空枝は妖使いなのかどうかはワタシには分からない。とりあえずクラスメイトである、ということだけ覚えている程度だ。
基本踏歌か梃が話しかけてくるぐらいなのでまず接点が生まれないのである。
まぁ、殆どの人が人懐っこい性格のようなので話しかければそれなりに話は弾む筈である。その辺りは有伽が起きた時に任せるつもりだ。
あまり知り合いを広げ過ぎるのも問題だからである。
有伽とバトンタッチしたら性格変わったとか言われそうだし。
ワタシだって多少はそういうこと考えているんだよ。
「有高梨伽」
名前を呼ばれたので手を軽く上げて返事とする。
下手に声を上げると変な声になりそうだし、今の有伽のキャラじゃないので手を上げるだけにしているのだ。
ちゃんとこちらを見て名前を呼んでいるため、先生には今のだけでしっかりと伝わる。
「よし、今日も全員の顔を見れたこと嬉しく思う。俺は嬉し過ぎてオッケルイペが出ちまいそうだ」
「よし、先生狩りだぁ!」
「オナラしたら吊るし上げだからねせんせー」
ちなみにこの先生はオッケルイペの妖使いだそうだ。
オッケルイペとはアイヌ語でオッケ(屁)ルイ(猛烈)ぺ(者)だそうで、ようするに誰もいない場所でオナラの音を鳴らす妖怪である。
その為皆からは親愛を込めて屁こき先生と呼ばれている。
本人がそれで良いと認めているのでこれはイジメではないし蔑称でもない。
立派な渾名なのである。ほんとだよ?