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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

ちょっとサイコな人がクリスマス・イヴに人を殺めるだけのお話

作者: トカウロア




―――――なんとしても殺さなければならない。




 クリスマスを1週間後に控えた今日、僕はそう決意した。世間一般の人にとっては殺さなくてもいいような取るに足らない理由かもしれないが、けれども僕にとってはそれはとても重要なことで、だからこそ再三そこは僕にとって譲ることのできない一線なのだと主張したつもりだったのだけれど彼らは僕の主張を聞き入れることはなかった。あるいは僕にとってそれが重要なことであると伝わっていなかったのだろうか?それは分からないが彼らと僕の利害が致命的に合わない以上、もはや殺すしかないのだ。だからこそクリスマス直前だというのにこうしてせっせと殺す場所の下見をすることになっているのである。


 殺害するのは3人、名前は―――――――――そこまで脳内で考えて僕はふと思った。彼らはどうせこれから僕に殺されるというのにわざわざ名前を言う必要があるのだろうか、と。その疑問に対して僕は明確な回答を持たなかったため彼らのことはこれからそれぞれA、B、Cと呼ぶことにする。そうした方が彼らに付随した嫌な思い出を思い出す機会も減るだろうし。


 下見のやり方はそう難しいことじゃない。息が白くなり登り途中の太陽の光が夜の終わりを告げる早朝、ピカピカの上下のジャージに身を包みながら僕は自転車に跨る。もちろんただのサイクリングではなく彼らがクリスマス・イヴ――――――彼らの命日になる日に通るであろう帰り道の下見である。だから僕は彼らが通る道を自転車で通り過ぎながらどのポイントがいいかの検討を付けているのだ。


 ・・・それにしても彼らごときがクリスマス・イヴに死ねるだなんてなんて贅沢なのだろう、と思わなくもないけれどこれから死にゆく者であるのだし人生最後の贅沢になるのだからと許してあげることにした。ふふ、僕はなんて寛大なんだろうか。










 そんなこんなな日々を続けて6日間、ついにAとBとCの命日がやってきた。そうと決まった後の一週間はとても長く感じた(例えるのなら遠足の前の1日に似ているだろうか?)けれどけれども僕はやり遂げたのだ、いやもちろんやるのはこれからなのだけれどね。


 失敗する可能性は十分にあるのだろうけどやる前から失敗することばかり考えていても仕方がないだろう。それに僕はこれからのことがきっとうまくいくだろうとそういう予感があるのだ。何故なら朝のニュース番組の中で行われた星座占いでは僕の星座が1位だったし、お昼少し前に立ち寄った飲み物の自動販売機が当たり付きで飲み物がもう1本余計にもらえた(正直この手のクジは外れるものだとばかり思っていたからびっくりだ。ただ正直2本もいらなかったかも。)し、行きつけの食堂の日替わりメニューが好物の豚の生姜焼きだったのだ。今までの人生でもこんなにもついている日というのはおそらく無かっただろう。今日が失敗するというのならいつなら成功するというのだと言わんばかりである。これはきっとサンタさんが僕に本懐を遂げろと言っているに違いがなかった。なんて血生臭い奴だ、お前の服が赤いのがちょっと怖いぞ。


 そうこうしているうちに予定の時刻がやってきた。Aの奴は恋人とクリスマス・イヴを過ごすために今日はかなり早く仕事を終えるらしい。これに関しては事前に確認しているから間違いない。そうして待つこと十数分、どうやら何かがあり少し遅れていたのだろう。息を切らして走っているAが眼に入る。僕はそんなAに自転車で急いで追いつき後ろから包丁を突き刺した。ぐさり。


「・・・・・・え?」


 Aが間抜けな声を出して倒れる。おっと!?・・・危ないな、運動神経には自信があったのだけれど自転車に乗りながら包丁を刺すのは初めてだったために少しよろけてしまった。もう少しバランスを崩したら転んでしまったかもしれない。危うく地面とキスをしてしまうことになりそうだった僕が一息ついていると近くから謎のうめき声が聞こえる。その音の方を見るとAが――訂正、僕とは違い地面と熱烈なキスをしたAが何事かを呻いていた。恋人がいるというのに他の奴とキスをしてしまったのを悔いているのだろうか?


 ともあれまだ息があったので包丁を引き抜き二度三度と刺していく。えい、やあ、とう、うりゃ、もひとつえい。・・・勘違いしないで欲しいのは僕は別にリア充死ねなどと思ったことはないということだ。Aが死ぬはAのせいでありAがリア充かどうかは一切関係がない。その証拠にCはいわゆる非リア充に相当する暗い奴だ。だから全国のリア充の皆さんはどうか安心してリアルを充実させていて欲しい。


 そうやって何度かAを刺せば流石にAは動かなくなる。台所にたまに現れる黒光りする奴に殺虫剤を当て続けた後に少し似ている気がして面白かった。とはいえ死んだと思ったのが僕の勘違いだと困るので最後にもう一刺し、首を包丁で刺しておく。ぐしゃり。


 そうやって何度かAに包丁を突き刺したのはいいけれど、いくらここが人通りが少ないからと言ってあまり時間をかけるわけにはいかない。えいしょ、えいしょっとAを道の脇の排水溝の中に落とすとその上から多少の返り血がかかった僕のコートを上からかけてちょっと見えづらくする。暗色のコートだし少しは気づかれにくくなったらいいなぁ、と思うがまぁ最大限持って一日程度だろう。


 そうしてAを殺す作業を終えた僕は急いで自転車を走らせる。コートを脱いでしまって寒くなったので途中の信号で持っていたバックから新しいコートを持ち出して上に羽織りそのままBを殺す場所――――ではなく大型のスーパーへと向かった。

 

 犯行に使用した包丁は汚れてしまったのでAにそのままプレゼントしたからだ。どうして予備を持ってこないのかと言えば・・・それは当然、包丁をそのまま持ち歩いたら不審者になってしまうからだ。だから僕はお店で包丁を購入し(この時レシートをもらい忘れないようにする)、それを家に持って帰る途中を装いながら彼らの心臓や喉元にプレゼントするのだ。メリークリs「あ、すいません。ラッピングお願いします。えっと、はいそうです。クリスマスので大丈夫です。」・・・うん、今のはうっかり渡し終えられる直前まで言い忘れてた僕が悪い。


 で、包丁を購入したらBの元へ向かう。Bは家族でクリスマスパーティをするらしいが、だからと言って別に早く帰ったりはしな――もとい帰れたりはしないタイプだ。まあそれでも子供とクリスマス会を出来る時間には帰宅できるのだから悪くはないのだろう。あっ、でも僕に殺されるから参加できないや。・・・どうしてもクリスマスを祝いたければ化けて出てもらおう。殺した奴が幽霊になって家族とクリスマスを祝ったりお盆になすに乗って会いに行くのを許すくらいの度量は僕にだってあるのだ。


 正直冬場に自転車を飛ばしたために多少の疲労はあったが、やはり一度目よりも2度目の方がうまくいくらしい。何事も経験ということなのだろうか。こうなると今まで殺人を犯してこなかったのが少し悔やまれるが、もし人を以前にも殺していたら彼らを亡き者にできなかっただろうと考えてこれでよかったのだと納得する。


 そして同じく2度目となっている杜撰な隠蔽を行いながら今更ながらに振り替える。きっとどうして1日にまとめて殺人をするのだともし僕の心を読んでいる人がいたら気になるだろうから。・・・もったいぶってみたけれど別にそう深い理由があるわけじゃない、ただ単にこの国の警察という組織は優秀だからだ。いろいろとバッシングされることも多い彼らだが犯罪捜査を日夜やっているプロなのだから殺人素人の僕程度が欺けるとは到底思わない。けれどもAやBを殺している際中に彼らに捕まってしまえばCを殺すことができないのだ。


 僕はこの問題を最初に思いついた時、途方に暮れた。なにせ彼らを生かしておくことを許せるはずがないというのに、上手く欺けるようなそれこそ推理小説の犯人たちのような高尚なトリックなどさっぱり思いつかなかったからだ。


 そういう時、僕は決まってシャワーを浴びることにしている。経験則上、行き詰っている時にシャワーを浴びると何かしら思いつくことが多いのだ。そして今回もその例に漏れなかった。シャワー万歳。


 僕が閃いたのはすごく単純なことで、殺すと必ず捕まってしまうのなら捕まる前に殺し終わればいいじゃない、ということだった。いくら警察が優秀とは言っても現行犯逮捕でないのであれば数時間程度の猶予はもらえると思ったのだ。もしそうでないのならば残念がりながら予想よりも警察と言うのは優秀だった、このような彼らが居ればきっとこの国は安泰だろうとでも供述することにしよう。


 そうして順調にBも殺害しCを殺害するための包丁も購入した僕だったが、警察の人に呼び止められることになった。時間的余裕は多少あるし、この場合の備えもあるとはいえ少しドキリとしてしまう。どのようなご用件だろうか?お名前とメッセージを添えて3分以内で答えてほしい。


「・・・自転車の盗難、ですか?ああ、なるほどクリスマスに乗じて。あ、はい。大丈夫ですよ。きちんと防犯登録してあるので確認してもらえば。あ~でも用事があるのですいませんが、あんまり時間は――短時間で済む?分かりました。・・・えっと身分証明書?今あんまり手持ちが――あっ、マイナンバーカードでもいいです?はい、じゃあそれで。はい。バックの中?整理整頓されてないんでぐちゃぐちゃですけどそれでも良ければ。・・・プレゼントの中身?包丁です、いつも料理をしてくれている家族に―――買って家に持ち帰るのは大丈夫でしたよね?家の方向?はい、あっちです、駅前の・・・。あ、レシートもありますけど御覧になります?・・・・・・はい、はい。お疲れさまでした~!」


 ただその時の彼らは殺人事件ではなく自転車の盗難について調べている人たちであったこともあり、問題なく通過することができた。買った店と家の間にCを殺す場所があったのもよかったかもしれない。これでCも殺すことができるはずだ。


 Cは3人の中で一番帰ってくるのが遅いがそれでも常識外れな時間ではない。どうにも本人はクリスマス・イヴに予定がないのが辛いらしくなるべく遅くまで会社で仕事をしていたかったらしいのだが、同僚や上司はほとんど用事があるために残業があまりできないらしい。仕事が早い奴で受け持ちの仕事も早く終わってしまったのも悪かったかもしれない。だけどC、安心して欲しい。お前は家にたどり着く前に死ぬから家で寂しく一人、クリスマスケーキを食べなくても済むぞ。良かったな。


 そんな僕の優しさに感動したのかそれとも余計なお世話だ!と言いたかったのかは僕がハンカチで口を塞いでいたために分からない。けれどもきっとドクドクと流れる血液と包丁による痛みできっと寒くはないのだろう。寒がりでもあったCにとってはきっと嬉しいことのはずだ。それから段々と冷たくなっていくCに僕はやっぱり所々赤くなったコートを掛けてあげる。情けは人の為ならずというしどうか遠慮しないで欲しい。


 そんな僕の優しい善行を祝福してか、それとも僕が全員を殺せたことを祝してかは分からないけれど今年のサンタさんはキザなやつなのだろう。空から白くて冷たいモノ―――雪を降らせて僕を祝福してくれた。ありがとう、怖い奴なのは変わらないけどいい奴でもあるんだな、お前。ちょっと見直したよ。











 ―――――――――――こうして僕がやらなければいけないことは全て終わったのだけれど、きっと僕がやったことのせいで警察の皆さんはこのままではクリスマス・イヴだというのに忙しいことになってしまうだろう。悪いのはあの3人とはいえそれは少し忍びない。


 だから僕は自転車を駆って最寄りの交番へと向かう。携帯電話で自首をする手もあっただろうけれど、こういう大事なことは口で直接伝えるべきだと思ったのだ。情報化社会となった現代でもきちんと顔を見て話すべきこともあるのだから。そしてそれはこんな寒い中だというのに立派にお勤めを果たしているお回りさんを少しでもねぎらうために笑って言うべきなんだろう。


「すいませ~ん。」

「はい、どうなされましたか?」

「今3人ほど人を殺めたのですけれど―――――――――――」






 ぎょっとしたお巡りさんの表情が昨日テレビで特集をやっていたウーパールーパーにどことなく似ていてちょっと面白かった。




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