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9話



「では、先日通りウォーミングアップとしてランニングから始めてください。前回は5週でしたので今回は10週程お願いします。」


団長にそう言われた瞬間絶望が何人かの顔に浮かぶ。訓練場の大きさは王城ということもありかなり大きい。説明すると大体サッカーコートのゴールからゴールまでの長さで正方形を作るイメージをしてくれれば分かりやすいと思う。まあ大体一辺100mくらいだと思う。それをできる限り壁沿いに走る。


「因みにしっかり誰が何周走ったのか把握してますのでサボる事のないようにお願いしますね?もしそんなことがあればその方は今日明日とランニングだけをして貰うつもりですので。」


団長はいい笑顔でそう言い放った。

何名か冷や汗を流していたからサボるつもりだったのだろう。

苦い顔をしながら皆渋々走り始めた。



ランニングが終わり皆素振りを始めているがもともとが戦いとは無縁の生活なので武器に振り回されてる人が多い。その為騎士は付きっきりで指導している。昨日の四人は団長に呼ばれて集まっている。



「さて此処にいる皆様には他の方々のお手本となる様に模擬戦を行ってもらいます。私達が模擬戦をするよりも身近な皆様がすることによって此処は夢の世界じゃなく現実だと理解させる事が目的です。一部の方たちはどうやらげーむ、あにめといった向こうの文化の者と思い危機感が足りていません。今回は初めてですので木製の武器ですが最終的には真剣を使いますのでそのつもりで。今回の模擬戦の対戦相手ですが誠に勝手ながら私の方でできる限り公正になるように調整致しました。」



どうやら最初に一馬と優が戦うようだ。

俺は中島とか…勝ったら勝ったで面倒そうなんだがあいつには現状負ける訳には行かないな。俺の代わりにパーティーに入れろとか言って来そうだしな。ステータスがあいつの方がおれの二倍くらいあるのが気掛かりだが油断せずにいこう。



「皆様、素振りは本日は終わりにして此処にいる四人の模擬戦を見学しておいてください。そう遠くないうちに皆様もやる事になると思うので他人事のように思わずしっかり見ていてください。そして四名の方達は今回は魔法の使用は禁止となります。それ以外は特に禁止事項は有りません。近くに回復部隊を待機させていますので即死でない限り助けることが可能ですので全力で戦ってください。では最初は佐藤様対高坂様、次戦は波風様対中島様です。では初戦のお二方は此方へ。」



一馬と優は訓練場の真ん中の方に連れて行かれた。俺たちは危なくない距離を保ちつつ一馬たちを中心に円になった。



「では模擬戦を始めます。勝利条件は相手の降参、組み伏せられた場合、此方が危険と判断した場合は介入させていただきます。準備はよろしいですか?

よろしいようなので始めます。」


武器は木製だが優は両手剣一馬はランスはあったみたいだが神魔石で作られたような大きな盾は無かったため片手剣用の中でも少し大きめの盾を持っている。

そして団長の始め!という声で模擬戦が始まった。

まだ両者とも様子見のようでどちらも動いていない。


「一馬痛くても文句言うなよ!!」


「いつも夏美とイチャつきやがって!リア充殺す!」


一馬…お前羨ましがってたのか…

そう言って優は一馬に向かって飛び出した。

ドンっと地面を蹴る音が鳴った。

そのスピードはステータスが高いこともあってかなり早い体感だが車くらいのスピードはあったと思う。優は何も考えずに一馬目掛けて剣を振り下ろした。ブォッと大きな音がし風が吹いた。一馬は冷静に横に回避しランスで突いたが優は前転する様に前に飛び出して回避した。そしてまた最初の距離になった。


「一馬やるな!向こうじゃ負けないと思ってたけどこっちじゃ油断すると危ないぜ!」


「そりゃどうも。大体紅葉の親父さんの訓練受けたことある奴が一般人に倒せるわけねえだろ!!」


そう言いながら今度は一馬が向かって行った。

一馬…悲しくなるからやめてくれ…

一馬は優に近づくと二回ほど突いたが避けられた。その隙をついて優が一馬の懐に入り込んだ。

一馬は体を一回転させるようにし盾で殴りかかったがしゃがんでかわされた。優はそのまま一馬にタックルし転ばせて剣を首に当てた。



「そこまで!最初にしては良く出来ていたと思います。しかし高坂様は直感で動くだけでなく戦略を練って動けるようになればもっと強くなれます。後は両手剣の使い方ですね。佐藤様はまずはランスの使い方に慣れること、そして後は経験を積むことですね。騎士とは守る者です。自分から攻めて反撃を喰らい負けるのは絶対にしてはいけません。これらが現在のお二方の課題といえます。では次の試合に入ります。」



さて行くかな。俺は武器の中から何故か一本だけあった木刀を手に取り中心へと向かった。

そこには両手剣を持った中島が此方を睨みつけている。


「波風くん。向こうでは敵わなかったけどこっちの世界ではそうはいかないよ!何せ僕は勇者なんだから!そして君を倒して結奈さんに僕の方が強いことを証明するんだ!」


「そうかい。まあ頑張れ。」


やばいキモすぎて返答に困った。

その答えが不満だったのか更に強く此方を睨んでいる。

そんなことは放置してどうやって勝つか思考を巡らせ始めた。一番の問題はステータス差だな。戦って見ないとどれほど違うのかは分からないが大体優たちと同じくらいか。なら視覚に頼り過ぎるのは良くないな。この間あいつがステータスを見せてきた時にチラ見した感じ素早さはおれの方が勝っている。しかしその他は向こうが勝ってるから攻撃もできるだけ受け流すか回避しよう。そう思いつつ始めの合図を待った。



「両者とも準備は出来たようなので始めます。」


団長が始め!と言った瞬間に中島が飛び出して来た。これなら優の方が圧倒的に速いな。一馬と同じくらいかと考えながらブンッと頭の上から振られた両手剣を木刀で受け流す。両手剣は勢い余ってそのまま地面を切りつけた。中島は受け流された事に驚いたのか少し動きが止まった。その隙を見逃さない筈がない。中島の脇腹に膝を蹴り込んだ。ドンッと音がし中島は少し飛んだ行ったが感触的に骨は砕け無かった。あってもヒビくらいだろう。中島は空中で身を返し着地体制を取った。その顔は痛そうに歪んでいる。

そんな中島の目には木刀が此方にむかってかなりのスピードで剣先を真っ直ぐにし飛んで来たのが見えた。慌てて持っていた両手剣で弾くが無理に振った所為で体制を後ろに崩してしまった。

そしてそのままグシャッと音がし顔に激しい痛みを感じながら意識が遠のいて行った。






よし!上手くいったな。俺が何をしたのかというと膝を入れて蹴り飛ばした後直ぐに中島に向かって木刀を投げつけ自分は助走を付け高く飛び上がった。中島が木刀しか見ていなかったといくのと木刀を避けずに剣で弾いた事により体勢を崩しそのまま後ろに倒れ込んでいるところに空中で一回転しながら顔面に踵落としをした。

中島の顔は血だらけで鼻は完全に折れ曲がっていた。



「そこまで!回復隊早く治療しろ!

波風様には何も言うことはありませんな。強いていうなら最後ので決まっていなかった時の事を考えて剣は手に持って置くべきかと。それくらいですかね。今日の訓練はこれで終わりです!自室に戻り反省点などを振り返っておいてください!」



団長は勇者があんなに一方的にやられるとは思ってなく焦りが浮かんでいた。




「紅葉やるぅ〜!カッコよかったよ!」


そう言って結奈は腕に抱きついてきた。

柔らかい感触がするが気にしてはならない。

皆んなして集まってきておつかれと言ってきた。

一馬…こっちを睨むな。



「今回はまぐれで勝ったみたいですけど調子に乗らないで下さいね!!晴人様が本気を出しているなら貴方なんてすぐ倒されてしまうんですからね!」



「はいはい。」


そう言って睨みながら取り巻き達が絡んできたが面倒くさいので適当に返した。その態度に気にくわなかったみたいだが医務室に連れて行かれた中島の元へ走って行った。





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