20話
「それで爺さんはいつから此処にいるんだ?」
「そうじゃのぅ…勇者と名乗る自分の正義を振りかざすだけで周りを見ない馬鹿な人間が挑みに来て直ぐ閉じ込められたのう。それから体感だと六百年くらい経つかのぅ。」
おかしいな。どう考えても時間軸が合わない。
図書館みたいな所に有った本によると過去に勇者と呼ばれる人間は二百年前に俺たちと同じように召喚された人以外居ないはずだ。
それを爺さんに伝えた。
「真か?そうなるとこの部屋の時間は外とズレが生じているみたいじゃのう。白神龍の仕業じゃな。人間らに知られている儂ら三神龍には特性は儂は水、赤神龍は火、白神龍は光を操ることじゃな?じゃがそれだけではないのじゃ。本当の能力は儂は空気を操り、赤神龍は熱を操り、白神龍は時空を操るのじゃ。此処の一日が外の大体八時間といったところじゃな。」
「それだけ聞くと白神龍が最強だな。」
「それは違うぞ小僧。確かに一番強いのは白神龍じゃ。じゃが操るにしてもたいむらぐや魔力の消耗というものが発生してのぅ。儂はたいむらぐや消耗が少ない代わりに一番技量が必要とされるのじゃ、赤神龍は平均的じゃの。白神龍は強力な能力の代わりに使用制限や発動までのスピードといったデメリットが多いのじゃ。」
まあ発動されてしまったら元も子もないのじゃがのぅ…と顎を摩りながらぼやいた。
「あの二頭に抑え込まれて此処に来てから能力の訓練ばかりしておったからのぅ。今じゃ負ける気はしないのぅ。」
そう自慢気に高笑いしていた。
「じゃが小僧遊び人とはまた酷な職業じゃの。もう一種の呪いじゃろう。転職も出来ないステータスも上がらないとなるとのう、正攻法では強くなれぬからの。普通なら速攻死んでいるところじゃが小僧は本当に運がいいのぅ。この階層はのう遊び人の為に作られた物なのじゃよ。どの迷宮にも遊び人しか入れぬ階層があってのう?その階層にいる魔物はかなり強いがそれを上手くかわして湖の水や木の実を食すことで微々たるものだがステータスが上がる仕組みになっておるのじゃよ。世界からの一種の救済処置じゃな。」
「そんなこと初めて聞いたぞ?かなりの数の本も読んだがそんなこと一切書いてなかったしな。」
「それはそうじゃろう。まず遊び人が迷宮になぞ来る訳なかろうて。もし来たとしてもそこらの魔物に襲われれば一溜まりもなかろう。小僧は少々腕が立つようじゃが他の遊び人は絶望して鍛える事すらしないじゃろう。そうじゃ小僧!お主他の勇者なぞ呼ばれてちやほやされてる連中を見返したくは無いか?もしそうなら儂が鍛えてやろう!」
目をキラキラさせながら言ってきた。爺さんのそんな姿見ても嬉しくも無いから辞めてくれ。
「爺さん見返したいのは山々なんだが俺には友人がいてな早く此処を出て無事なことを伝えたいんだよ。」
「そうか。じゃがお主に此処の階層主は倒せそうにないぞ?彼奴は中々に面白い魔物での。今のお主なぞ一瞬で倒されてしまうわい。儂の魔力も後半年程で無くなってしまうし、どうじゃ半年だけでいいんじゃ儂の技術を受け継いでくれぬか?」
「爺さん、あんたそんな元気そうなのに後半年で死ぬのか?」
「そうじゃの。地上に出れるのなら話は変わるんじゃがどうにも白神龍の奴が儂を出したくないみたいでの。このまま行けば余命半年といった所じゃ。どうじゃ老いぼれの最期の頼みを引き受けてくれぬか?」
今までで一番真剣そうな顔をして頼んできた。
此処での半年は外での二ヶ月だしな。階層主もこのまま倒せるとも思えない。
「分かったよ。このまま帰ってもまた屈辱を味わうだけだしな。その代わりとびっきり強くしてくれよ師匠?」
悪戯な笑みを浮かべながら肯定の意思を示した。
「そうかそうか!受けてくれるか!これから半年じゃが頼むぞ弟子よ!」
本当に嬉しそうに笑いながら言った。
ここから師匠による地獄の修行が始まった。




