16話
取り敢えずのやらなければならない事を考えよう。拠点はこの洞窟で良いだろう。あまり広くはなく奥行きもないが俺一人が拠点として扱う分には問題はない。一番の問題は食事と飲み物だな。
飲み物は最悪遠くに見えた湖まで行けばいいが食べ物はどうしよう。魔物の肉は食べられないらしいしまずこの階層の魔物には勝てる気がしない。
探索しないことには始まらないな…
よし今日はあの湖まで行って水を手に入れて帰ってこよう。
そう思い紅葉は洞窟を出た。
道中先程の百足が居るか確認したがあるのはミノタウルスの死骸だけだった。肉などは百足の毒でドロドロに溶けていたが毛皮はまだ使えそうなので持ち帰る事にした。
トラップや魔物に気を使いながら歩くのは中々に疲労したが何とか湖までたどり着いた。この階層はトラップは見た感じ仕掛けられていないようだった。魔物はかなり様々な魔物がいた。例として挙げるならば見るからに毒々しい紫色の大蛇や俺の胸元位の高さの白い狼の群れや三メートル位の高さの蟷螂など少し探索しただけでもかなり強そうな魔物ばかりだった。湖の奥にかなり大きい山があるがあそこにはとてつもなく強い魔物がいるのだろうか。
何故かあの山の麓までしか魔物が近寄らないのだ。
湖に石を投げてみて湖の中に魔物が居ないか確認したが居ないようだった。こんな簡単な確認方法で良いのかと思うが魔物は基本的に音が鳴った方に近付いてくる。そしてそこに生物が居れば問答無用で襲ってくるらしい。
湖の水が飲めるのかわからない為手の平で少しだけ掬い舐めてみた。少し時間を置いても舌がピリピリした様子は無かったので毒はないようだ。
毒はない事は確認したので腹は壊すかもしれないが取り敢えず飲んでみることにした。
「美味すぎるっ!」
何故かは分からないが今まで飲んだどんな物よりも美味く感じた。本当に飲んでいるのか…?と疑問に思うほどの喉越しに適度に冷えていて匂いも全く無い。味は雑味がなく旨味だけを感じさせ後味に少し甘さを感じさせる。ただの水がこんなに美味しいのかと一人で感動していた。
適度に水を飲んだ後ミノタウルスの毛皮を洗おうとしたがこの湖に沈めて洗うのは気が引けたので手の平で水を掬い濡らし毛皮同士を擦り合わせて肉や泥を落とした。それを何回も繰り返したらかなり綺麗にする事が出来た。これならば問題なく使えるだろう。
食べ物をどうしようかと考えながら奥にあるやまの麓に行けば木の実が有るかもしれないと行ってみることにした。道中にも木の実は有ったのだが近くに必ず魔物がいて取れる状況では無かった。
警戒しながら麓に着くともう少し登った辺りに木の実が生った五メートルから十メートル無いくらいの木を発見した。
木の下まで行ってみて上を見上げると何故か一つの木に色取り取りの木の実が生っていた。
幸い手を伸ばしてジャンプをすれば枝に届くので登って行けば取れそうだった。
ここまで来たからには何個か取っておこうと思い取りやすい位置に有った青い木の実二つと赤い木の実一つ橙色の木の実一つを取って下に降りた。何故か青い木の実だけは凄いプルプルしていたので潰さないようにするのが大変だった。
ここはもう既に魔物が近寄ってくる範囲より少し先なので魔物の気配はしない。その為気楽に座っている。赤い木の実は見た目もそうだが味も林檎のようだった。橙色の木の実の味はオレンジのようだった。さて問題の青い色の木の実だが今までの木の実が拳大なのに対しこの木の実だけはソフトボールくらいある。皮も薄いようで簡単に剥けそうだった。剥いてみると水々しい青色の実が出て来た。
「美味しいけど!美味しいけど!これは絶対に違う!」
そう叫んでしまった理由はその味に有った。正直木の実の中では一番美味しかったがその味は葡萄に近く甘さと水々しさが桁違いに違う。甘いのだがしつこくなくスッと通り抜ける甘さだ。水々しさはこれ一つで水筒の役割も出来るくらい噛めば噛む程果汁が出てくる。
この木にはまだまだ沢山木の実が付いているので余った木の実を毛皮に包んで背負い洞窟に帰った。少しばかり食べる前とでは動きが軽くなっていたようにも思えるが木の実を食べて腹を満たしたからだろう。
今日は洞窟から湖まで直線状に探索したから明日は回り道をしながら探索しようと思いつついい時間だったので少しばかりの仮眠を取った。




