第四話 初めてのダンジョン探索
「ちょっと何アレ!グロい!キモい!何アレ!フィールちゃん何アレ!」
「シーナさん落ち着いてって」
「あーわかるわぁ最初はぁビビるよねぇ」
「大事な事なので3回……」
取り敢えず前衛・後衛・補助の動きを知るという建前の上、中レベルのダンジョンに来た私達。
CWOはフィールドマップにはほとんどモンスターは湧かないらしい。
そしてダンジョンも個別に生成されるらしくジャンル的にはMMOよりMOに近いらしい。
どう違うの?
ともかくダンジョン内を探索しだしたところである。
それにしてもリアルである。
モンスターが気持ち悪い。
街から近いってことで"海底洞窟(中級)"に来ている 名前安直だなー。
海の中なのに息が苦しくない。
呼吸自体をしてないのかもしれない。
流石ゲームである。
そんな事はどうでもいい、問題は敵モンスターである。
普通のお魚っぽいモンスターはいいのよ。
でもね、イソギンチャクっぽい触手がうねうねするモンスターやら深海魚っぽい奇妙な形をしたモンスターは生理的に受け付けない。
女の子である当然だ。
「触手ぅ触手ぅうへへへへぇ♪」
フィールちゃんが何処と無く嬉しそうにしてるのは欲しい素材アイテムだからなんだろうキットソウダ。
今私の手には"ヌコサマのブロードソード(土)"なる物が装備されている。
ヌコサマという名前の鍛冶師プレイヤーが製造した属性付きの武器らしい。
ヴァルゾフさんからの借り物である。
武闘家なのに何で剣持ち歩いてるの?と聞いたら。
「初心者さんに貸してあげるためさ!」と変なポーズを付けながら答えてくれた。
本人は格好良いと思ってるんだろうナー。
後ろでフィールちゃんも「だっさwwwww」って笑ってたし。
CWOは属性毎に得手不得手があると先ほどヴァルゾフさんから聞いた。
多分チュートリアルでも聞き流した。
水は火に強く、火は風につよく、風は土に強く、土は水に強い。
水→火→風→土→水ということか。
属性相性があるからほぼ1つの属性で占められる中級ダンジョンまでは精霊師は強いのだ、とは彼の言葉。
「ならそれより上のダンジョンならどうなるの?」と聞いてみたところ。
「私みたいな魔術師の方が強くなるよ!」とタメイゴォさんが答えてくれた。
一概にはそうも言えないんだけど…………というヴァルゾフさんの言葉は何故か無視された。
「作り直し前提ならぁ色んな職業を取っ替え引っ替えすればいいんだけどぉ、そーじゃないならぁ色んな人の動き見たりぃアドバイス聞いてぇ決めればいいしょ!」
というフィールちゃんの言葉に従い今現在のPTはこうである。
前衛:ヴァルゾフ 武闘家
後衛:タメイゴォ 魔術師
支援:フィール 巫女
見学&遊撃:私ことシーナ 初心者
ヴァルゾフさんが敵を集めてひきつけタメイゴォさんがとどめを刺す。
HPが減ればフィールちゃんが回復したりたまに支援魔法を使う。
とどめを刺しきれないモンスターや攻撃範囲から外れているモンスターが居れば私も攻撃したりする。
プレイヤーの攻撃スキルではプレイヤーはダメージを受けないのでタメイゴォさんの範囲魔法も痛くない。
いきなり眼の前が真っ白になったりすると驚くけど。
暫くダンジョン内を進んでたらふと思いついた事を聞いてみた。
「私って火属性だから水ダンジョンって苦手なんじゃないの?なんでここに?」
「前衛の俺が土だから」
「肉壁の負担減らすため」
なるほど理にかなってる。
「触手がぁいっぱぁい」
フィールちゃんは触手が好きなのではなく素材アイテムが欲しいだけなんだキットソウダ。
「そろそろボス部屋だね?タメイゴォさんフィールさんSPどう?」
「中級だもん、よゆーよゆー」
「だぁいじょーぶいぃ」
2人とも大丈夫そうである。
ちなみに私は初心者ゆえスキルなんてものもなくSPは減ってない。
SPは文字通りスキルを発動するのに必要なものだ。
だいたいエスピーって略されてるっぽい。
他のゲームで言えばMPと呼ばれる場合もある。
物理スキルと魔法スキルで消費するPが違うゲームもあるがCWOでは全てSPである。
「じゃー行くかー」ヴァルゾフさん。
「さくっと殺っちゃいましょう」タメイゴォさん。
「逝っちゃうううううううぅ」フィールちゃん。
フィールちゃんの発音に何処と無く違和感を感じたけど気のせいだろう。
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「アイテム拾うの面倒くさいよー」
ボスを危なげなく討伐したあとの事。
このゲームアイテムはいちいち拾わないといけないのだ。
「ペット連れてると自分で拾わなくて済むから楽だよー」とはヴァルゾフさん。
「ペットってその鳥?みたいなやつ?」
「そ、白烏の"ヴァイス"。ガチャのレアアイテムだよ」
「しろがらすだからぁヴァイスぅ?安直ぅ」
「フィールさん言わないで・・・」
ヴァイスってどっかの言葉で白って意味だったっけ?何語か覚えてない。
「支援はほぼしてくれないからアイテム拾い専用みたいになってるけどね」
うーむ欲しいなぁでもレアって言ってるし高いんだろうなぁ当たらないんだろうなぁ。
「毎日ログインしていけばログインボーナスでタダでガチャ引ける時くるからその時に運が良ければ引けるかもしれないよ」
「そーとーぅ運が良くないとぉむりーぃだよぉ」
フィールちゃん辛辣。
「でも騎士とかの騎乗ペットならゲーム内のお金で割と安価で買えるよね」
「タメイゴォさんそれ本当?」
「そうだよ、尤もアイテム自動取得はないから結局は自分で拾わないと行けないけど」
「だめじゃん!」
「てへぺろ☆ミ」
ともかく暫くは私とは無縁のもとの思っておこう。
――――――――――――――――――――
「さて、アイテムの振り分けはどうすんの?」
「4分割でいいんじゃない?」
ヴァルゾフさんとタメイゴォさんが話してると。
「触手ぅ~」
フィールちゃんの安定の触手発言である。
「フィールさんの触手好きは知ってるから・・・」
ヴァルゾフさんも慣れっこである。
「フィールちゃん、そんなに触手集めて何作るの?」
「触手を使うなんてぇとんでもなぁい」
いやほんと何に使うの?
「普通は布系アイテムか食事アイテムにするんだけどね」
「モンスターが落とすアイテムって素材アイテムとか呼ばれるんだっけ?」
タメイゴォさんの発言に続いて聞いてみる。
「そうだね、CWOは全てのドロップアイテムが何かしらの材料になるんだ、だから素材アイテムと呼ばれている」
「それだけで何かに出来る場合もあるし単体では使いみちのないアイテムもあるけどね」
「基本的には複数のアイテムを使って作る物の方が圧倒的に多いよ」
ヴァルゾフさん丁寧に教えてくれるなー下心持ちデスカ?
自惚れんなって?ごめんなさい。
「でも加工自体は街の加工屋を利用するか生産職の人に頼まないといけないけどね」
デスヨネー
「触手はフィールさん、残りはほぼ4分割でフィールさんは少なめ、って感じかな?」
「おっけー」
「触手ぅ♪」
「私はよくわからないのでお任せします」
ヴァルゾフさんがまとめた。
今日の冒険はここまでである。