第弐話 自分の容姿を確認してみる
あああやってしまった。
まさか自分の本名をゲームキャラの名前にしてしまうなんて……
と悔やんでも仕方がない。
私は過去は振り向かない女なんだ。
未来を見つめよう。
うん桃山恵美に笑われる未来が見える。
ダメじゃん。
今いるのはなんというかサイバーな空間である。
でっかい正方形の内部を光が走っている。
その真ん中当たりにぽつんと私と丸い物体がある。
チュートリアルなんだと思う。
丸い物体が色々説明してれてるのを聞き流しながら。
「これが私のゲーム内の容姿?」
丸い物体の横に何故か設置してある全身鏡を見ながらなんとなくポーズを取ってみる。
真っ赤な髪はツインテールで腰まである。
解けばもっとあるのだろう。
お目々もぱっちりしてて瞳の色も赤みがかっている。
現実の椎名静華よりずっと美人である。
悔しい。
服装はシャツにズボンと。
装備として胸当て、武器は無し。
駆け出し冒険者ってレベルじゃない。
これじゃ自殺志願者だよ。
胸当て越しにもわかる胸はいっちょ前に現実世界より大きい。
私まだ十三歳だから成長期だよ ホントダヨ。
胸は大きいのに腰はくびれている納得行かない。
背の程はよくわからないが多分本来の私と同等程度かと思われる。
なんか負けた気がする。
いやゲーム内の私も私なのだ。
つまり私と私なのでどっちが優れてるというものではない。
よし納得した
『チュートリアルは以上になります、御不明な点は御座いますでしょうか?』
「あ、大丈夫です」タブンハイ。
ろくすっぽ聞いてないのに はい と答えるのは私の悪い癖だろうか。
そもそも最初にログアウトの仕方だけ動作付きで教えてくれた後はだらだら話ししてるだけだもん。
もう飽きた。
ちゃんと聞いてなかったので解らない事が解らないなんて今更聞けない。
学校の授業だって先生が念仏みたいにだらだらと喋ってるだけだと眠くなるもんだ。
こんな事だから新規ユーザーが居つかないんじゃないの?
悪いのは聞いてない私じゃなくて、聞いてもらえない説明しかしない丸い奴なんだ、うん。
とそんな自己正当化をしつつどうでも良いことを考えているうちに目の前が暗転した。