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そこは誰もいなくなった  作者: 椿 雅香
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プロローグ――秘密基地(5)

プロローグが長くなってすみません。m(__)m

 それからが、大変だった。


 どの家を秘密基地にするか決めるべく、全ての家をチェックして回らなければならなかったのだ。しかも、全ての家に鍵がかかってなかったわけじゃなかった。

 つまり、施錠されている家もあったのだ。

 そういう家は、諦めてすっ飛ばすしかないのだが、もしかして、鍵のかかった家の方が秘密基地に向いているかもしれない、と思うと、見逃すことはできなかった。

 

 簡単に言うと、好奇心を抑えることができなかったのだ。


 鍵のかかった家に入るため、俺たちは、こっそりピッキングの練習をした。

 ネットというのは、便利なものだ。両親にパソコンのインターネットの履歴を調べられたら一発でアウトだが、そのスリルもたまらない。


 そういうと、祐樹が皮肉っぽく笑った。


「俊哉、お前、真面目が取り柄なんだから、悪い子になるなよ」

「何?それ。俺の取り柄は、真面目だけか?俺だって、聖人君子じゃない。第一、聖人君子なら、こんなところに来ないよ」


 ということで、学校の特別教室の鍵を使って、せっせと練習した。まあ、柴山で使われている鍵が簡単な南京錠だったり、せいぜいシリンダー錠だったので、初歩的なテクニックで開錠することができたのだが。


 鍵のかかった家というのは、しっかりしていて、埃こそ他とは変わらないものの、家財は、かつては値打ちものだったであろうことが想像できた。テレビの鑑定団に鑑定を依頼したいくらいだ。


 そうやって家々を回っていると結構変わったものがあって、見てるだけで楽しかった。


 餅つきに使う臼や杵、せいろまであったし、農作業に使うクワやスキやカマなんか話には聞いたことがあっても見るのは初めてだ。

 

 


 秘密基地を作るに当たって、俺たちはルールを決めた。


 集落の家に勝手に上がり込むのは、OK。そもそも、それを可としないと、全てが始まらない。

 家々にあるものを使ったり、それを他の家に持っていたりする集落内の物品の移動は、OKで泥棒とはならない。

 家々にあるものをこの集落から持ち出すこと、つまり集落内の移動じゃなく、他の地域へ持ち出すことは泥棒になる。


 まあ、万引きが成立するのは、商品を持ったまま店を出たときっていうあの理屈と同じだ。

 物品の移動をこの集落のエリア内ならOKだってことにしたのだ。


 俺たちは、気に入った一軒に手を入れて、滞在できるようにした。価値のなくなったものから新しいものを作る。

 一種のリサイクルだ。


 いろんな家から、使えそうなものを集めて、秘密基地と定めた元小山さん家へ集めた。


 そうやって活動しているうちに、俺たちは電気が来ていないことに気が付いた。

 柴山ここへ来る途中、電線が切れて垂れ下がっている箇所があった。きっと、あれのせいだろう。ここらは、雪が深い。きっと雪のせいで電線が切れたのに、電力会社が住む人がいないから必要ないって判断して放置してるんだろう。


 水道だって、蛇口だけじゃなく元栓をひねっても水が出ない。しかも、全ての家で出ないのだ。

 多分、浄水場から集落までの間で水道管が破損して、それきりになっているのだろう。


 何しろ、ここには、水を必要とする住民がいないのだ。


 幸いだったのは、どの家にも井戸があったことだ。これが、家の中、しかも台所近くにあるのだ。最初の日、井戸を探したのに見つからなかったのは、こういうわけだった。


 そして、ついにというか、ようやくというか、ある家で発電機を見つけた。

 最初、それが、何をする機械か分からなかった。正体が分かったとき、俺たち二人は小躍りした。

 現代社会では、電気がないと何もできないからだ。掃除機だって動かないし。



 廃屋とはいえ、所有者はいる。固定資産税だって誰かが払っているのかもしれない。


 高校生の俺たちには、世の中の仕組みは分からない。

「棄ててある」、イコール、「持ち主がいない」イコール、「使ってもいい」と、至極単純な理屈で行動していた。



 俺たちは、勉強が忙しくても、学校行事が忙しくても、とにかく時間を作って出かけることにした。






やっと、お話が始まります。

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