33.
「あの!!」
突然大声を発した冬乃に、皆が目を見開いて冬乃を見返してきた。
冬乃は咄嗟に叫んでしまったことに恥ずかしくなりつつも、今浮かんだばかりの答えに嬉しさを隠せなかった。
隊名
(そうだ、コレがあった・・!!)
こほん。と、
冬乃は咳払いをしてみせる。
「明日起こることを当ててみます」
「なんだ、ようやく嘘のひとつでも浮かんだか」
「・・明日は、」
こほ、と再びの咳払いで土方の言葉を流しつつ、冬乃は『予言』を続ける。
「明日は何かのきっかけがあり、この隊に新しい名を、さる方から頂戴することになります」
「「なんだって??」」
皆の声が、見事な和音に重なった。
「・・・そいつはまた、たいそうな嘘じゃねえか」
「嘘じゃありませんもん」
冬乃はつんと横を向いてみせる。
「誰なの、その”さる方”ってのは」
冬乃がとにかく答えたことが嬉しいらしく、藤堂がにこにこして尋ねた。
「え、と・・」
(これは、言ってもいいよね・・?)
「会津中将様です」
(表向きには朝廷となってるみたいだけど)
冬乃は心内で補足しながら藤堂に返事を返した。
「中将様・・だと?おぬし、我々が会津中将方に謁見できると何故知る」
「中将様から名を頂戴することになるきっかけとは、何だ」
(は・・?)
芹沢と土方の双方から一度に問われて、冬乃はおもわず目を瞬いた。
(今ふたりとも何て聞いてきた?)
同時に言われたせいでよく聞き取れなかったが、なぜか見たところ二人とも機嫌が悪そうである。
「すみませんが・・お二人とも今なんと言いました?」
「おぬしは、我々が会津中将様に謁見してると何故知る」
「何故、会津中将様から名を頂戴することになる」
「・・・」
「芹沢先生」
土方が呆れた様子で呟いた。
「貴方からどうぞお話くだされたい」
「左様か」
芹沢はフンと鼻を鳴らし。
「では申す。おぬし、中将様の御名をそこで言うからには、我が隊が只のお預かり以上に会津方と関わっていることを知っているのだろう。何故知っている」
「それは、ですから私が未来から来ているからです」
「失礼ですが、芹沢先生、」
今度は冬乃の声と土方の声とが、同時に重なった。
唖然とする冬乃の前で、土方が芹沢を鋭い視線で見やる。
「我が隊と仰るが、この隊は貴方の隊であると同時に、近藤さんの隊であることをお忘れなく」
「私の、と加えるのも忘れないでもらいたい」
すかさず新見が言葉を添えた。
現時点での局長は、三人居る。
筆頭局長の芹沢と、新見、そして今この席には居ない近藤勇だ。
どうやら派閥争いはやはり、すさまじいものらしい。




