24.
(わ・・)
その、沖田の掴んだものを見て、冬乃は唖然とした。
「その刀・・・どうしたのですか」
「この蔵の鍵、壊した代償」
藤堂が笑って代返する。
冬乃は食い入るように沖田の手の内にある大刀を見つめた。
ものの見事に刃の部分が粉々になってしまっている。
「・・この程度の刀しか持てないようじゃ、この先、俺たち長くないな」
沖田が苦笑するのへ、藤堂は肩をすくませた。
「この程度の刀で、こんな分厚い鉄ぶった斬ったおまえなら、まず大丈夫だよ」
藤堂が言いながら見下ろした先を冬乃も見やれば、みごとに真っ二つになっている鍵が草の中に見えて。
(・・・・?)
冬乃は、つと沸き起こった疑問に首を傾げた。
(今って・・いつなんだろう?)
壬生に屯所がある以上、時期は壬生だ。
だが冬乃の今現在いる時期は、壬生に屯所があった時期のなかの、いつ、なのだろう。
『この程度の刀しか持てないようじゃ、』
沖田のその台詞に、冬乃のなか、ひっかかるものがあった。
沖田達がここ京の地で結成した武人集団、新選組は、彼らを世に知らしめる “池田屋事変”も過ぎた頃からいわゆる裕福になる。
沖田など中核幹部の給与はものすごい額だったというから、良い刀などいくらでも買えたはずだ。
しかも沖田はその幹部のなかでも新選組の撃剣を担う巨擘。
沖田の持つ刀の良し悪しは、そのまま新選組の命運を左右するといっていい。
彼が欲する刀なら、個人出費ではなく組の出費として購入することさえできたはずだ。
その沖田が、いま『この程度の刀しか持てない』と言って苦笑している。




