22.
(まぶし・・)
突如、蔵の中へと飛び込んできた大量の橙光に、冬乃は慌てて目を瞑る。
サッサッと袴の捌かれる音が近づいてきて。
「・・そろそろ此処を出ましょうか、冬乃さん」
沖田の声に。
冬乃は怖々と目を開けた。
開けた視界のなか。沖田が、懐手で立っていて。
冬乃は目を見開いた。
なぜにも、いま沖田は先程の稽古着姿ではなく、着物に袴、腰には帯刀という姿だったのだ。
(超カッコイイっ!!)
思わず心のなかで絶叫し、感動した眼差しで沖田を見つめ出した冬乃に、だが沖田の隣に佇んでいた男が咳払いした。
「あのお、沖田。俺のこと、紹介してくれないかな」
(あ・・)
はっと、冬乃はその声の主を見やった。
冬乃と同じほどの背丈の男が物珍しそうに冬乃を眺めている。
(この方、誰だろう?)
ようやく彼に注目した冬乃に、沖田が、
「これは藤堂平助君」
と伝えた。
(藤堂様!この方が!)
「よ・・」
よく存じておりますっ、
危うく言いかけた冬乃は慌てて口を噤む。
また余計な事を言って、密偵だと確信されてはたまらない。
「冬乃さんって言うんだよね!宜しく!」
藤堂が屈託なく笑った。
冬乃は思わずつられて微笑みながら、
「こちらこそ」
と頭を下げる。
「沖田。こんな可愛い子が密偵なわけないよ」
そんな言葉が下げた頭の上に降ってきた。
「馬鹿。そんな理由があるか」
頭を上げながら冬乃は、沖田が笑って藤堂へ返すのを見て。
冬乃の胸はどきり、と跳ねた。
(そんな表情を友達には見せるんだ・・・)
心を許しきったような笑顔というのは、彼の今の表情を指すのだろう。
(・・・て、あれ?)
ふと。
(刀・・)
冬乃は橙光に眩んでいた視界が漸く収まってきた今になって、沖田の腰の大刀のほうが未納であることに気づいた。
(・・?)
手に抜き身を下げてもいない。
彼の腰の鞘に納まるはずの刀身はどこにあるのだろう。




