21.
ふと冬乃が目を覚ました時。
小窓から差し込む光は、朧な橙色になっていた。
いつのまにか眠ってしまっていたらしい。
冬乃は体を起こすと、光を零すその小窓へ歩み寄り、つま先立って外を覗いた。
「・・・・!」
そこには、一面の田畑が今まさに橙色に染まっていて。
冬乃は思わず溜息をついて、小窓の鉄格子に手をかけた。
幻想的な景色にすっかり見とれながら、一度、限界に近づいたつま先を解放すべく踵を地に戻した時。
ガタガタ、と蔵の扉が音を立てて、冬乃はどきっとして顔を向けた。
「・・ったくこんな古い錠をいつまでも替えないでいて、結構八木さんも無頓着だよね」
なにやら、聞いたことのない人の声がした。
扉のほうはガタガタとしきりに揺さぶられている。
つと、舌打ちが聞こえ。
「埒があかないな」
低い声の響きが扉の向こうから零された。
(沖田様・・・!)
冬乃にとっては一度聞けば忘れることのない、その声を耳にして。
冬乃は息を呑んで、扉を見守った。
「明日替わりの錠でも作るか」
沖田の声がさらに追い。
扉の揺さぶりが、ふと止んだ。
「げ、何するつもり?!」
「壊す」
「壊すっ・・て鉄だよ!?」
その言葉が、最後だった。
一瞬の沈黙の後。
ドサッ、と何か堅いものが地に落ちたような音が続き。
ぎいいいい、と心臓に悪い音を立てて、強張る冬乃の前、扉が開かれていった。




