19.
格子窓から差し込む日の光を冬乃はぼんやりと眺めた。
(どう思うだろう)
冬乃の心は、つと母親のことを想い描いた。
(私がいなくなったら、少しは悲しむ・・?)
来るはずがないと分かりきっていながら、冬乃は母親の姿を大会場で探していた。もちろんその姿を見ることなど無く。
(いいかげん、あんな人どうでもよくなってしまえたら、どんなに楽だろ)
何度、そう思ったことだろう。
それでも今。もう二度と会えないと思えば。
あれほどつらい目にあわされたというのに愛しさが込み上げて。
(とうとう分かりあえずに終わっちゃったんだね)
泣きたい気分なのに。
涙が出てこない。
(なんだか・・)
まだ現実を受け入れてない。
(こんなのはやっぱり、夢で)
本当によくできた夢なだけで。
もしかしたら覚えていないだけで、冬乃は医務室まで辿りついていて、そこで薬でも打たれたのかもしれなくて。
その薬の副作用か何かで、いま幻覚じみた夢でも見てる最中なだけだと。
誰も居ない薄暗い蔵のなか、こうして一人座っていると。
そんなふうにさえ思えてくる。
どこからどこまでが現実なのか。分からなくなる。




