16.
「え?」
そういえば、冬乃はどこで見つけられたのだろう。
「よりによって土方さんの部屋で机につまずいて倒れていりゃ、」
・・・はい?
「ちょ、ちょっと待ってください、机につまずいて、って・・?」
わけが分からないといった顔で聞き返した冬乃を、沖田の怪訝そうな眼が見返した。
「貴女はつまずいたような格好で文机に足をかけ、畳にうつ伏せで倒れていたんですが」
「・・・・」
唖然。
(な・・)
冬乃は目を白黒させ、沖田のほうへ間の抜けた顔を向けてしまった。
(なんだって、そんな格好で、見つからなきゃいけないわけぇ?!)
奇跡、にしては、ちょっとヒドイんじゃ??
さらに泣きたい理由が増えて、がっくりとうなだれた冬乃の耳に、しかし突如、笑い声が飛び込んできて。冬乃は驚いて声の主、沖田を再び見上げた。
「その様子じゃ、よほど不覚だったようですね」
どうやら冬乃の反応に、思わず笑ってしまったらしい。
(笑った顔も素敵・・)
すぐ目の前で見れたその笑顔に、つい場にそぐわぬ感想を胸に懐きながらも、冬乃は、
「私っ、机につまずいた覚えはないし、土方様の部屋に居たなんてことも知りませんでしたしっ」
何とか誤解を解こうと、懸命に説明を試みる。
確かにそんな見つかり方をしたのなら、疑われても仕方ない。
だからって・・・
(沖田様に疑われるなんて耐えられない!!)
「どうしたら信じてもらえるのですか!貴方にそんなふうに疑われてたら、私っ・・」
「おい、いつまでうろついてる」
背後から響いた土方の声に、冬乃は振り返った。
「土方様、信じてください!私は確かに未来から来たんです!」
冬乃は土方の姿を見るなり、訴えていた。
「よほど強かに頭を打ったらしいな」
土方は完全に呆れきった顔を冬乃へ返し、
「総司、」
と、沖田へ向いた。
「この女、記憶が戻るまで蔵に突っ込んでおけ」
くっ、蔵あ?!
「閉じ込めておかずとも、どうせこの人逃げそうにありませんよ」
続いた沖田のその言葉に、
「ええ、逃げたりしません!」
冬乃は必死で頷いてみせる。
(冗談でしょ~?!)
そんな所に閉じ込められてはたまったもんじゃない。
「駄目だっ、怪しい者を野放しにしておくわけにいくか。どうせおまえだって、この女を四六時中監視してるわけにいかねえだろ」
「可哀想になあ」
(・・・。)
沖田のその呟きに、冬乃は、ぽかんと彼を見つめた。
本当に同情してくれてるのか分からないが、確かなことは、冬乃のために土方を止めてくれる気は、さらさら無さそう、ということだ。
「さっさと連れてゆけ」
そして。
冬乃の蔵行きは、決定となった。




