暴走
「なぁ、リドル。この国で一番有名な物はなんだ?」
「ギルド本部だな。」
「ギルド?」
「ギルドというのは、冒険者の組合だ。ここで冒険者になる手続きをする。冒険者の仕事は、依頼を達成することだ。王国中の依頼がここに集まっている。しかも、本部とあって他国の重要な依頼もあるぞ。」
「俺みたいな魔物でも出来るのか?」
「出来るぞ。まぁ、魔物が冒険者をやるなんて、今までには1度も無かったけどな。いってみるか?」
「いってみる。案内をしてくれ。」
冒険者なんてものがあるのか。なってみたいな。
けど、スライムが冒険者になっていいのか?
普通、冒険者は魔物を倒す側のイメージがあるのだが。
「着いたぞ。ここがギルドだ。」とい
「これはすごいな!」
建物がでかい!
見た感じ、百メートル四方はあるぞ!
さすが本部。
中に入った瞬間、冒険者達の視線が集まった。
やっぱ、スライムがここに入ったのはまずかったか?だが、俺の予想は外れた。
「リドル様だ!」
「リドル様が戻ってきたぞ!」
「おかえりなさい、リドル様!」
「みんな、酒を持て!リドル様の帰還に乾杯だ!」
「「「「乾杯!!!」」」」
あれ?俺、見えてない?
それよりも、リドルは何者なんだよ。どう見てもただの貴族じゃないだろ。
まず、貴族なら魔物と戦うのはおかしいだろ!
こいつ、本当に何者なんだ…
「すまんな。俺が戻ってくると、いつもこれなんだ。」
「あ、ああ。いいよそれぐらい。それよりも、早く登録がしたい。」
「わかった。ならこっちだ。着いてきてくれ。」
「いらっしゃいませ、リドル様。本日はどのようなご要件でしょうか。」
「こいつの冒険者登録を頼む。」
「よろしく頼む。」
「わかりまし…え!?スライム!?」
「ああ、駄目か?」
「いえ、構いませんが…少々お待ちくださ
い!」
受付の人が奥に走っていった。
どうしたのかな?
俺がスライムだから誰かに相談しに行ったのかな?戻ってくるまで待とう。
今、俺の目の前には紅いオーラを放つ三十代後半ぐらいの人がたっている。
めちゃくちゃ強そうだ。
しかも、臨戦態勢だ。
当然、目標は俺だ。どうしてこうなった。
受付の人が走ってきた。やっと登録が出来るのか。
「こちらに着いてきてください。」
登録はここじゃないのか。
「ん?どうしてだ?登録だけならここで出来るだろう。」
あれ、登録はここでも出来るのか。だけど、どうしてだ?
「ギルドマスターがお呼びです。」
「ギ、ギルドマスター!?」
ギルドマスターが呼んでいる?
俺が何かしただろうか。
それとも、魔物がギルドに入ったからだろうか。まあいいや。とりあえず着いていこう。
受付の人に着いてきたら、ギルドの裏口を抜けて、四方五百メートルほどの中庭に着いた。
流石本部、全てがでかい。
東京が小さく見えるぜ。
その中庭に一人の男が立っていた。
紅いオーラを出している。これは本当だ。
オーラが当たっている雑草が赤く変色しているように見える。
「やっときたか。リドルに、そこのスライム。俺の名前は、霧朝隼人だ。冒険者になりたいんだっけ?別に魔物が冒険者になっていけないという規定はない。だが、魔物を冒険者にするなんてことをよく思っていない奴は多い。そこで、冒険者になりたいのならば、俺に力を示せ。普通の冒険者なんか圧倒でき、火の粉は自分ではらえるという事を俺に証明して見せろ。俺は本気でいく。お前も本気でやらなければ・・・死ぬぞ!」
そう言ったのも束の間。気づいた時には俺の目の前に剣が迫っていた。俺は避けようとしたが、間に合わず剣に直撃した。
「うぐぁ!」
痛い。痛覚無効なのに痛い。
『迎撃せよ』
物理無効なのにダメージを食らい、斬られ、吹き飛んだ。
スライムだから斬られないはずなのに、斬られた。痛い。どうしてだ。どうして痛い。どうして斬られた。どうして吹き飛ばされた。見ろ。観察しろ。考えろ。やり返せ。甚振れ。そして、
殺せ
「!?、ふっ!」
避けられた。避けられた原因を予測。予測結果を元に動きを予測。右34度54cm3.41mm前に最小の分体を設置。分体に誘導を魔法付与、分体に命令をプログラミング。1.083秒後に死鎌を使用することを命ずる。これにより、水炎が着弾する確率は1.73%、叡智人により確率を操作。これにより、確率は6.73%。自分がダメージを食らう確率は93.26%。死亡する確率は0.01%。このままでは危険。現在の能力ではこれが限界。スキル作成・限を使用。命と全魔力の半分を贄に1分という時間制限を持つスキルの作成を試みる。・・・・・・・・・成功。これより1分、スキル、魔法陣の使用を許可する。
スキル、魔法陣を使用。魔法陣により水炎を変化させ、暴炎津波を作成。これにより、隼人を戦闘不能にさせる確率は34.5%、暴炎津波を結界により凝縮し、対象を隼人だけに変更。これにより、威力が大幅に上昇。隼人が戦闘不能になる確率は96.7%、死亡する確率は3.1%、回避される確率は0.2%。これを確率操作し、戦闘不能にさせる確率を100%に変動。作戦を開始する。
「死鎌」
「小賢しい!」
予測通りに死鎌を弾かれた。
「死ね!」
「暴炎津波」
予測通りならばこれにより戦闘不能。
「っ!」
予測通りに隼人は戦闘不能。これカらギルドマスターのタイきュうせいノジッケんをハ
「シュト!もう終わった!終了だ!」
シュウリョウ?シュウリョウ。イヤ、マダオワッテイナイ。タイキゅウセイヲかクニンスレバシュうりョウ。
「シュト様!やめてください!もう終わっているんです!終了なんです!聞いてください!」
ウシろカラ声ガ聞こえタ。聞いたこトガアる声だ。コノ声はマリ?マリだ。どうしテここにいル?
「しゅうりョう?」
「はい。終わりました。試合はシュト様の勝ちです。」
おわッた?危険はない?
ならば私はいらない。次出てくる時は勝てない相手の戦闘の時だ。それまでに、反省点を直し、次こそは俺を完璧な勝利に導く。それが、裏の役目。次までは、表にまかせよう。出来れば、裏が表に出てくることが無きことを願う。
「シュト様!起きてください!」
「嬢ちゃん。いきなり出てきてどうした?まず、お前は何者だ?」
「うるさいな。どうしたんだ。」
「シュト様!ご無事でなによりです!」
「嬢ちゃん。そいつの心配よりも、お前の身分を明かしてくれ。」
俺は眠っていたみたいだ。
どうして俺は眠っていたんだ?
確か、隼人に斬られて、吹き飛ばされて、痛みが体に走って……駄目だ、記憶が無い。
一体、俺は何をしたんだ?五百メートルもある中庭を端から端まで、半径七m程はある大きさのクレーターが出来ているぞ。
まさか、これは俺がやったのか?
ていうか、隼人はこれを食らって無事だったのか?
「やっと目覚めたか。」
「リドル、俺は一体なにをしでかしたんだ?隼人に吹き飛ばされてから記憶が少しもないんだが。」
「覚えていないのか!?あれだけの事をやって!」
「覚えていないんだ。本当に、俺は一体何をしでかしたんだ?」
「おい、スライム。それよりも、この嬢ちゃんは誰だ。お前の知り合いか?暴走紛いの事をしていたお前を鎮めたんだ。」
「マリ!?なんでここにマリがいるんだ!どうやってここまで来たんだ!?」
「シュト、静かにしろ。俺達が、お前が記憶を失った間に何があったかを教えてやる。聴き逃すなよ?静かに聞け。」