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夕焼けショコラティエ  作者: 香ノ月 十佳
第一章 新しい恋人たち
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みっしょん2

 斎藤クンのおうちにきてます。やっほー。


「あらあらこんにちは、可愛いお嬢さんたち……話は聞いていたけど実際見るととってもかわいいのね。ここで立ち話もなんですし、どうぞ上がってくださいな」

 熊さんを通じ、カズ君経由でお母さんに話をしたそうです。

 四天王が行くよーって。


「おじゃましまーす」

「お邪魔いたします」

「お邪魔します」

「お邪魔します」

 綺麗な制服に身を包んだ女学生四人、華やかさが四天王です。

 手土産はショコラです。


「それで和孝かずたかのことだったかしら?」

「はい!好きな子っているんでしょうか?」

「うーん……そういうことは本人に……と言いたいところだけれど、その様子はないわね。貴方たちの誰かが立候補してくれると嬉しいわ?」

 お気に入りの子は誰ですか?


「いえいえ、私たちは全員恋人がいるので無理です」

 ふりふりと胸の前で手をふる我らがユキナさん。

「すごいわね」

 すごいです。


「ただ、私たちのクラスにとってもいい子がいるんです。その子はとても頑張り屋で小さな子供たちの面倒を一生懸命見ている健気な子なんです」

「小さくて可愛いしね」

斎藤さいとう君とも仲良しだとは思いますし」

「ただ、忙しすぎて自分の気持ちを見つめる時間もないんです」

 一生懸命プレゼンです。頑張れ!


「あら、ひょっとしてそれはあの子のことかしら?」

 そうなんです。


「ええ、私たち佐藤さんと同じクラスなんです」

 頷く参謀眼鏡。


「そう……それで佐藤さんは、和孝のことを好いてくれているのかしら?」

「実を言うと、そこがよくわからないところなのです」

 正直に話すユキナさん。


「好き、とは言ってましたけど、男の子として好き、までかは微妙なところなのです」

 そこは大事なところです。


「私も佐藤さんは大好きよ?とても可愛いし頑張り屋さんで……佐藤さんのところの事情も知っているし、おうちのことを頼まれもしていますからね。あの子がうちの娘になってくれるとしたらとても嬉しいわ」

 お母さまにも好感触です。


「斎藤君も多分、まんざらでもないとは思うのです。ただ距離が近いのか意識はしてないようですが」

 大事な幼馴染ですもんね。


「ほんの少し、莉理花りりかの……佐藤さんのことを女の子として、大事な女の子としてみてくれたら、それで大丈夫だと思うのです」

 想いが手にこもり、発言する三橋みはしさん。


「ええ、機会は沢山あります。一旦意識して、お付き合いの仕方を間違えなければ恋の花はきっと綺麗に育ちますわ」

 さすが文学少女島澤(しまさわ)さん。

 素敵な表現です。


「楽しくなってきたわね。貴方たちが、佐藤さんのことをとても大切に思ってくれているのはよくわかるわ、そしてその大切に思っている子を、誰でもないうちの子に、和孝に託そうとしてくれているのも……それで、具体的にはどうするのかしら?」

 お母様も、のってきました。


「デートを……初々《ういうい》しいデートをする時間を作ります!」

 社長、我が社の勝利です!




 おばあちゃぁぁん。

 所変わって、佐藤莉理花さとうりりかちゃんちです。


「ほうほう……りりをねぇ」

「えぇえぇ、そういうことでしたら喜んで協力しますよ」

 孫は可愛いのです。


「ありがとうございます」

 代表はユキナ。


「貴女たちもありがとうね。どうにも私たちの息子たちは、仕事にかまけすぎて」

「決して、孫たちを大切にしていないわけじゃないのだけれどねぇ」

 頬に手をあてるおばあちゃんズ、まだそこまでお年は召してないけれど。


「最初はりりちゃんの下に、あみちゃんとひろくんの二人で子供は三人だったのだけれど、ゆうくんとゆきちゃんの双子二人、そのあとにれいくんとのぞみちゃん、みかちゃんの三つ子ちゃんが産まれたからねぇ。可愛い孫がたくさん産まれてくれて、とても嬉しいのだけれど、息子たちにとってはちょっと大変になったみたいでねぇ」

 すごいですね。


「そうなのですね」

 ちょっとびっくりの小動物みゆみゆ。


「それでよろしければ、莉理花りりかさんが斎藤君とデートをしてる間、私たちで子供さんたちの面倒を見させてもらえれば、と思っています」

 参謀はおさげ眼鏡さん。


「あらあら、頼んでもいいのかしらね。それは助かるわ」

「斎藤さんのお母様にもお話は差し上げていまして、何かあればフォローもして下さるとのことでしたの」

 座れば牡丹ぼたんの島澤さん。


「あらあら、こちらも後でお礼のお伺いにいかないとねぇ」

「そうねぇ、でもなんだかうきうきしてきたわね、可愛い孫の大事な初デート、よろしくお願いするわね」

「はい!お任せください!」

 ミッション発動なのです。




 放課後のチャイムが鳴る教室にて。


「え?今日、明日の都合はいいかって……どうして?」

 鞄に、ウサギさん型のフェルトペンケースをしまう佐藤さんは、目をぱちくりさせています。


「ふふふ、こういうことなのですよ、ごにょごにょ」

 悪だくみなら任せて!小悪魔天使みゆみゆです。


「……んー。まぁ、嫌じゃないからいいけど……その、できるのかな……。あたしデートなんてわからないし、着ていくお洋服もないし、お小遣いもないよ?」

 段々と胸が締め付けられる言葉が増えてく、りりかさん。

 いたたまれない。


「だーい丈夫です!服の話なら、そのちーとみゆみゆが相談に乗ってくれます。〈アンティーク・フェアリー〉なら高くない服だって売ってるしね!」

 出た、小悪魔ユキナ!

 アンティーク・フェアリーは、質のいいユーズドを良心的な価格で提供してくれます。

 学生さんの味方です!


「その……いいのかな」

 不安げな、りりちゃん。

「いいの!りりかだって、女の子だし。おしゃれしないと」

 そうです!可愛くなれ~!


「カズ君きてくれるかな……」

 ちょっと瞳がウルウルしてる。きゅんとくる。

「大丈夫よ、島澤さんの旦那とユキナの彼がきちんと話をつけてくれるはずよ」

 きちんとフォローする小動物みゆみゆ。


「うん、うん……本当はね。ちょっと嬉しい……えへへ。みんなありがとう」

 最後の天使が柔らかく微笑んだ。


「!か、か、か、可愛い~っっ!!小さくて健気で、素直で……!!」

 ユキナさんのハグハグ。わかります。

「ユキナちゃん苦しいよぅ」

 ぎゅー。


「ふ、不覚にもきゅんと来たわね。さすが莉理花」

「りりちゃんは頑張り屋さんのいいこなのです」

 同じ背丈でなでりなでりする小天使。


「えへへ。ありがとうまりちゃん!」

「私もりりが大事よっ!」

 仲間に入れてもらう小悪魔天使みゆみゆ。


「みゆちゃんもありがとう~」

 仲良きことは、美しきかな。



 放課後のみんなが帰り始めている、向こうの棟の教室で。


「斎藤君はいるか?」

 熊さん、来襲。


「!は、はい……さいとーくん!さーいーとーくんっ!」

 そして女生徒、再び。


「「呼んだ?」」

 お前たちも再び。


「あ、和孝君の方ね!」

 そうだよね?


「また?……って、ああ一組の、今度は何?」

 なんでしょう~。


「ここではなんだ、場所を変えよう」

「わかった」

 互いに通じることがあったのか、すんなり承諾する斎藤君の和孝君の方。


「またか……」

「今度こそ終わったな」

「カズ君も覚悟を決めたようね」

「日誌に書いといてやるぜ!」

 クラスのみんなは応援しています!負けないで!



 例の軽食ラウンジの隅っこです。

 放課後のマフィンのいい匂いがしています。


「今度の土曜日、都合をつけられないか?」

 腕を組み、渋い声で語る笠薙君。


「ん、どういうことだ?」

 何を企んでやがる?と。


「いや、今度の土曜日よかったら遊べないかな、と思って」

「なんで俺と?」

 まさかのお誘い!

 しかも熊さんからのっ!


「佐藤のことで世話になったし、その礼も兼ねてな、どうだ?」

 逃げてっ!斎藤君逃げてっ!

「意外と義理堅いんだなぁ、そんなことで……。別にいいぞ……といいたいところだが悪いな、土日は忙しいんだ。前に話したとおり、ちびたちの面倒を一日がかりで見なきゃいかんのだよ。気持ちはありがたいがすまないな?」

 本当にすまなそうに断りをいれる斎藤君……助かった?


「ああ。それなら大丈夫!その日は助っ人が入るって佐藤さんが言ってた。だから今週末は来なくていいって?」

 明るく話す衣津々(いつづ)フミ君。

 助かってなかったーっ!


「初めて聞いたぞ……そんな話」

 びっくりしている斎藤君。

 後ろは壁だ、逃げられない。


「ま。今日帰りにでも、佐藤に聞けばわかることだろう。で、どうだ?」

 そんな……どうって言われても。


「今日確かめて大丈夫だったら、構わないけど……」

 あ、いいんだ。


「よし、決まりだね!じゃあ時間と場所はこれだから。あ、それから当日は女の子達もくるのでちょっとおしゃれしてきてね?」

 さらりと、最後の仕上げをする仕事人フミくん。


「!」

「じゃぁねー」

「おいっ!ちょ、ま」

 ミッションこんぷりーと。


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