表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
夕焼けショコラティエ  作者: 香ノ月 十佳
第一章 新しい恋人たち
5/50

デート

 多くの人たちが待ち合わせに使う、とある街の噴水近く。

 そこにはあの人たちの姿がありました。


「可愛いな、優子」

 のっけからこれです。

「あ、あの……ありがとうございみゃふ」


「だめ!ゆーこちゃんに萌えちゃうっ!」

 島澤しまさわさんに思わず抱き着くユキナさん。

「あ、いーなー、僕も僕もっ!」

 今日はダブルデートだったのですね。

 あ、フミ君が抱き着いているのは川瀬皆八木かわせみなやぎさんですよ?


笠薙かさなぎ君はしないの?ハグ」

 島澤さんの柔らかなお腹に手を回して、抱き着いている川瀬皆八木さん。

 そんなことすると、島澤さんのブラウスが引っ張られて、お胸が強調されてしまいます。

 すごいです。


「する」

 男がおる。

 そして、可愛い彼女をぎゅっと優しく抱きしめる笠薙君。

 笠薙君は背が高いので、頭を胸に抱え込む形になりますね。


「あ、あの、ちょ、ちょっと恥ずかしいのよ?」

 でも島澤さん嬉しそう。

「今日もいい香りだ、優子」

「~っ!」

 だって、艶やかな黒髪が間近にあるのです。

 頑張ってお洒落してきて良かったですね、ゆーこちゃん!


「フミくん!フミくん!私はどうだいっ?」

 らぶらぶな空気にあてられたのか、愛しのフミ君に抱き着く川瀬皆八木さん。

「うん……いつものユキナだね!安心するよ?」 

「きゃ~、マーキングしてあげよう……すりすりー」

 ユキナさんとフミ君は背が近いので、ほっぺすりすりができてしまいますね。



 少し離れた木陰から、いちゃらぶな恋人たちを見守る四人の姿がありました。

 そう……彼女たちです。


「……うん。あの二組の恋人たちは、少し自重したほうがよくないかな?」

 今日もおさげ眼鏡は絶好調です。


「教室でのいちゃらぶと変わらないよねっ!」

 妃ちゃんのリボンは毎日変えています。


「ねぇねぇ、なんでボクたちこんなことしてるのさ?」

 ポニテなボクっ娘の井上さんは、常識人。


「仲が良いいのはいいことよ~?」

 あらあらうふふ。


「『ゆーこちゃんとナギくんが、私服で並んでいるところを見てみたいっ!』って言っていたのは妃よ?」

 肩にかけたバッグ紐の位置をそっと直す工藤さん。

 土曜日の朝から大変でしたね。


「おー、そのとおりっ……来てよかったよねー?見て見てっ!大きなナギ君とおしとやかなゆーこちゃんが並んでいるのを見ると、なんだか無性に安心するの!……なんでかな?」

 あの二人は、絵になりますね。


「妃ちゃんって、おっきな人が好きだからじゃないのかな?妃ちゃんのお父さんもおっきいし、お兄さんもおっきいでしょ?」

 ほほう。


「初々しい恋人のような雰囲気でありながら、それなのに何故か、仲のいい若夫婦をみているかのような感覚がするわね……」

「そうねぇ……若い恋人たちというのであれば、ユキナちゃんとツツ君のような感じかしら?」

 ダブルデートだと、それぞれの特色がでますね。



 とある、総合ショッピング施設が集うシティエリア。

 大きなタワーが、いくつもの広い階段や空中回廊でつながっています。

 オフィスも沢山入っているそうで、とても清潔で綺麗です。


「へぇ……最初はステーショナリーを見にいくのね」

 お洒落な文房具ですね。

「あ、私も新しいシールが欲しいなっ!」

「ボクはカラーマーカーが見たいな、オレンジとパープルが欲しい」

 綺麗な文房具とかって、なぜかわくわくしますよね。

「私も、明日ここにデートしに来ようかしら~?あら可愛い小物入れ……」

 山海さんもわくわくがとまりません。


 

「インテリアフロアにも行くのね……。あら?あのシェードランプ、ちょっと可愛いわ」

「いいわねぇ……こっちのふわっとしたのも素敵」

 インテリアもいいですよね。カタログを眺めるだけでも楽しいです。

「ねぇねぇっ!このサボテン可愛いっ!」

「あ、ほんとだっ!……このスポイトでお水をあげるのかなっ?」

 観葉植物もいいですね。



「家具……フロア?」

 工藤さんが疑問を呈します。

「ファッションチェアでも見に来たのかな?」

 むふん?と首をかしげる妃さん。

「でも、ここ家族向けの大物ばかりだよ?」

 周りを見渡すポニテっ娘。


「そうねぇ……もう少し小さいサイズのものは一つ下のフロアでしたし……」

 フロア案内板をみる、ほわほわ山海さん。

「あれって、リビング用のテーブル?」

「なぜ、あれを見て盛り上がっているのかしら……」

「うん……あのソファも確かにいいんだけど、ちょっと堅実だよね」

「どうして多人数用の値段をチェックしているのかしら?」

「自分の家のものを買い替えるための下見、とかかなぁ?」

 きっと違うのです。


 

 赤ちゃんグッズ売り場。

「……違うと思うのよ?」

「さすがに、違うと思いたいの」

「ちょ、ちょっと場違い感が……」

「あらあら~」

 まだ早いですよ?


「なに、なに!?もう、なの?」

 違いますよ?

「そんなことはないはずよ。だって、あの子たちが付き合い始めたのは一月かそこらよ?いくらなんでも……」

「ほ、本人たちではなくて親戚の子用とか?」

「向こうは盛り上がっているようね~……」

 ダブルデートならではの盛り上がり方っぽいですね。



 少し高い階層にあるレストランエリア。

 眺めが良いです。

「うわ!人がすごいね……」

「お昼だから仕方がないわ」

「あ、廻るお寿司がある!ボク、あそこ行きたいなぁ」

「かなり並んでるわね~」

 廻し寿司は人気店。


「あの子たちはどこで食べるのかしら……屋上エリアへ行くの?」

「そういえば!屋上エリアにもフードエリアがあったよっ?」

「手軽に軽食が食べられるから、そっちかな?」

「あら、おいしそうなマチュドニア……」

 レストランエリアも目移りしますね。



 広い屋上も、平坦な造りではなく、なだらかな曲線や階段が優しい雰囲気を醸し出しています。

 緑や、小さな噴水も素敵です。

「そうきたかっ!」

 そうなのです。

「まさかの……」

 そうなのです。


「愛妻弁当ね……ユキナのことを甘く見てたわ」

「ゆーこさんは期待を裏切らないわね。まさかお重箱で用意してくるなんて」

 ユキナちゃんもゆーこちゃんも、お料理できます。

 そして島澤さんは古風美少女でした。


「ねぇ。私たちも食事に行きましょ?というかこれ以上この場にはいたくないの」

「あ、そっか!そうだね~……えへへ。ボクも今度ここに来ようっと!」

 この場にいることの危険性に気づいた、おさげ眼鏡さんとボクっ娘ポニテさん。

「あれ?凛ちゃん、お弁当作れたっけ?」

 井上さんちの凛ちゃんです。


「お料理は練習中なんだけど、このシチュエーションは譲れないのさっ!」

 そうだよねっ!

「おかずは少し小さめに作っておくといいのよ~?」

「「あーん、ってするにはねっ!!」」

 はい、あーんは素敵です。



 未来的なプラネタリウムエリア。

 広々とした空間とそれでいて静かな光がムードを高めてくれます。


「ふふ……ロマンティックでいいわね」

「ここ、ふわふわクッションで横になってみれるんだよねっ!」

「恋人用リクライニングソファもあるよ?」

「床も硬くなくて、柔らかい芝生みたいね~。学校帰りの土手、といったイメージかしら」

 そう……座席に座って、首が痛くなることはないのです。恋人たちも安心です。

 やすらぎの一時を貴女に。


「梅雨が過ぎれば、夏ね……」

「花火大会に海開きっ!」

「夏祭りにプールっ!」

「デートもしたいけれど、みんなとももっと遊びたいわね~」

「「期間テストさえなければ……」」

 夏の星空をみて、思い至ったようです。テスト頑張ってね。



 少し離れたところにある、品の良さを感じさせるカフェ。

 ツタ模様とか、植えてあるお花がかわいらしいです。

「学生が来るには、少し敷居が高くないかしら?」

 まさかのドアノッカー付扉。


「姫ちゃんとかいそう……」

 いるの?


「よ、予約がいるのかなっ?」

「お値段高くないのかしら~?」

「ねぇ、ここに入るの?」

 カジュアルなお店によくあるような、メニューやプライスリストが外に置いてあるわけではないのですね。


「今度、デートで入ってみるわっ!」

 意思を固めるリボン娘の妃ちゃん。

「そうだねっ……ちょっと興味があるカナ」

 井上さんちの凛ちゃんもやる気です。


「詳しそうな子に聞いておくわね……あら?ユキナに聞けばいいんじゃないかしら?」

 そう頷く、おさげ眼鏡工藤さんと小首を傾げる山海さん。



 もう少し歩いたところにある大型書店。

 とても大きいです、カフェもありますよ。


「笠薙君のセレクトかしら?」

 熊さん、島澤さんのことをよく見てるもんね。

「ゆーこちゃん、本好きだもんね」

 そうなのです。


「あ、あの本の最新刊でてるかな、ボク、ちょっと行ってくる」

 ポニテっ娘も本は好きらしいです。

「あら?この編みぐるみの本いいわね~」

 山海さんは編み物ですね。



 少し陽が傾いて、いい雰囲気になる時間帯。

 もう少し歩くと、海がよく見える広い公園があるのです。


「ま、ここになるわよね」

「そうだねー。私もデートの時、ここくるもん」

「あ、妃ちゃんも?ボクもここくる。アイスとかもあるし、あのベンチに座って海をみるの落ち着くよねっ?」

「そうね~。隣にいる人の体温も感じられて、心が満たされるのよね~」

 みんな、来たことがあるようです。デートの定番ですね。


 これで今日のダブルデートは終わりのようでした。

 楽しそうで良かったです。



 休日明けの学校の教室。みんなの元気な声が聞こえます。

「おっはよー!デートどうだった?」

「おっはよー、妃ちゃん!最高だったわよ?」

 きゃっきゃっと、リボン娘の妃ちゃんとツーサイドアップ川瀬皆八木さんが手をとりあっている。


「あれが、デートか……とてもいいものだ」

 今日も大きな笠薙君は大満足です。

「そうでしょー?今回はダブルデートだったけど、二人っきりで行くのもいいよ~?」

 一歩先を行くフミ君。


「ふ、二人っきり……想像すると、すごくドキドキするわ」

 その大きな胸に手をあててドキドキする島澤さん。


「ああ、今度は二人で」

「静真さん……」

「優子……」

 見つめあう二人、会話は……要らない!


「あなたたち、朝からお熱いわね……」

 おさげ眼鏡登場です。

「おっはよー、ミミナちゃん!」

 誰……っ!ああ、工藤三美奈くどうみみなさんね。


「おはよ。あら、新しい飾り紐ね……?」

「いいでしょー、フミくんがプレゼントしてくれたんだよ?」

「えへへ、ユキナに似合うと思って」

 フミ君はデートの時に、きちんと選んでいたようです。

 ユキナさんは幸せ者です。


「やるねーツツ君、おっはよー!」

「おはよう、井上さん。今日も元気だね」

 元気なポニテっ娘、井上さんちの凛ちゃんが、乱入してきました。


「うんうん、楽しいお休みだったのですよっ!……あれ、かおりんは?」

 あふれるエネルギーを周囲に振りまいています。

 かおりん?……山海香織やまみかおりさんですね。


「山海さんは、彼氏さんのところに行っていたわ、おはよう井上さん」

 あ、島澤さんがこちらの世界に戻ってきました。

 おかえりです。

 山海さんの彼氏は年下君だそうです。


「おはよう、ゆーこちゃんっ!そっかー……日曜日の件かな?」

「ところでユキナさん、聞きたいことがあるのだけれど……」

 さり気に情報を集めるミミナさん。



 予鈴がなっています、もうすぐ授業が始まりますね。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ