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夕焼けショコラティエ  作者: 香ノ月 十佳
第二章 ア・ラ・カルト
18/50

クール?

 一組の工藤三美奈くどうみみなは、三つ編みおさげ眼鏡の女の子である。


 委員長ぽくて、ちょっとクールで頼りになる女の子と思われている。

 そんな彼女も現在付き合っている相手がいる。


 二組の金井沢博かないざわ ひろし君だ。

 彼も眼鏡をかけていて、見た目委員長ぽい。

 委員長ぽくて頼りにされ、やはりクールだと思われているようだ。


 なぜか、気があった二人はお付き合いをし、今日も今日とて、仲良くデートをしていました。



「三美奈、今日のチェックのスカートと、サマーベストの組み合わせがとてもいい、そして三つ編みとよく合っている」

「ありがとう、博。あなたも、眼鏡と少し赤いシャツが似合っていてよ。特にカジュアルシャツの袖の折り返しがとてもセクシーだわ」

 クールな言葉とは裏腹に二人はとても嬉しそうに微笑みあい、そして優雅に手をとりあっている。


「今日のデートコースだが、まずは、新しいおそろいのアクセサリーを作りに、いつものクラフト工房に行くつもりだ。そして、軽くイタリアンのランチコースをとり、午後は夏に向けて、見ておきたいという三美奈の希望を大いにとりいれ、スクエアのグランド・メティカバールに行く。そしてミスト・フルートで午後のお茶を楽しみ、公園で海を眺めて、帰途に就くことになる。なにか、過不足はないだろうか?」

「完璧ね。過不足ないわ。博……貴方が決めるコースはいつも最高よ。想像しただけで私の心が躍るわ、ええ。まずは、クラフト工房「モニカ」にいきましょう」

 まるで秘書が社長に今日のスケジュールを述べているようだが、デートである。


 そして、二人の顔に不満はなく、本当にこれからが楽しみだという風にほころび、手は指と指を絡めてつなぐ恋人つなぎになっている。

 きらりと光るお互いの右手薬指のリングもまぶしい。



 それから、ビジネスの会話のような恋人たちの甘い?話?が続き、二人の目的のお店、クラフト工房「モニカ」にやってきたようです。



「さて……今日のペアアクセサリーだが、何か希望はあるかい?三美奈」

「そうね……リングは記念日ごとに作ったものがあるし、ファッションチェーンなんてどうかしら?リングをつけることもできるし、アペンドを活用することによってはネックレスのタイチェーンにすることもできるわ。ミサンガのように腕に重複して重ねて少しシャギーな感じもだせると思うの」

 ほうほう。


「いいね……少し考えてみたが今の僕にはそれ以上のアイデアは出せそうにないな、それで行こう。三美奈、君はいつも冴えている、まるで知恵の女神が君だけを贔屓しているようにしか僕には思えない」

 何を言っているの?この人。


「よしてよ博、そういう貴方だって太陽の馬車を操る神のように、素敵な機転と、いつだって迷わない頼もしい判断力を持っているわ、とても素敵よ」

 工藤さんってそういうキャラだっけ?


「三美奈……」

「博……」

 おーい。


「さて、ではさっそくチェーンを選ぶとするか」

 何事もなかったかのようにクールに戻ってくるね。

「ええ、そうね……かなり種類があるわね、迷いそうよ」

 本当だー、チェーンのコーナーだけで、こんなに?


「いいや、大丈夫だ三美奈。種類が多いようには見えるが、ある程度は好みを絞ることができる、簡単なことだ」

 ほうほう。


「そうなの?たとえば、どうするのかしら?」

「ああ、任せたまえ。まずは、なんといってもデザインやカラーから選ぶことになる。レングスはある程度自在に調整できることがファッションチェーンの醍醐味であるからな。そうすると、三美奈、君と僕に相応しいカラーをまずは、決めるんだ」

 まずは、色を決めると。

 れんぐす?ああ、長さね。


「ええ、そうね、それがいいわ」

「クールな僕たちに相応しい色は、これだ」

「ええ、この気品あふれるピンクしかないわ」

 ピンクってクールなのっ!?


「さすがだ三美奈、僕も丁度それを選ぼうとしていたところだ、可愛らしさと美しさを兼ね備えるだけでなく、その淡い色が一定の謙虚な様を現している。実に……クールだ」

 そ、そうなの……。


「そうね、この綺麗な色だけで、私、満足してしまいそうよ」

 なんだか、どこかの上流階級の人の会話みたい。


「ああ、君はなんて謙虚なんだ三美奈、だが、僕がこれを加えることを許してくれないか」

 芝居がかる博君。


「……それはっ!ええ、ええ、いいわ。さすがよ博……私、それがそんなに似合うとは気づかなかった」

 工藤さんもお付き合いいなぁ。


「舞い降りてきたんだ……このシャープピンクなチェーンに、ブルーカットのダミーロケットをつけることで、そこには、暖色系と、寒色系のこそばゆい共演が実現されるのではないか、と」

 なんだか、この二人の会話むず痒い。


「対照的な二つの色が織りなすコントラストが目に印象的ね。確かに一瞥した時には強烈な色の対比に目を瞬かせるかもしれないけれども、落ち着いたピンクが、静かな青を引き立たせるのね……クールだわ」

 いつもの工藤さんは、どこ?


「あら……?」

「どうした?三美奈」

 どうしたの?


「いえ、ちょっと……ああやっぱり、あれは同じクラスの小野上おのうえ君ね、何をしているのかしら?」

 ふと、工藤さんが、少し離れたところにいる、一人の男の子を見つけたようです。


「ふむ……男子が一人でクラフト工房のリングコーナーで悩んでいる……っ!」

「そうね、間違いなさそうね」

「君も気づいたか三美奈」

 なんか探偵ものっぽい。


「ええ、彼は……彼女に渡す指輪を選んでいるわ」

「ああ、間違いないだろう……そして、初心者は往々にして一つ、抜けているところがある」

「そうね、懐かしいわ」

 そして遠くを見る二人。

 そういうお芝居デートなのかしら?


「小野上君、こんにちは。何をしているのかしら?」

 小野上君に声をかけるおさげ眼鏡工藤さん。


「……おわっ!って、工藤さんか。こんにちわ、そちらはデートのようだね」

 ちょっとびっくりする小野上君。


「こんにちは。工藤三美奈とお付き合いをしている金井沢博という、よろしく」

 そして、すーっとでてくる眼鏡。

 そのまま名刺とか渡しそうな勢いだ。


「ああ、よろしく。俺は小野上大地といいます。工藤さんとは同じクラスです」

 何事もなく、明るい笑顔で返す小野上君。


「ところで、ここにいる用件なのだけど……」


「ああ、まぁ、隠すものでもないからいいんだが……彼女に指輪を贈ろうと思ってね。ちょっと見てたんだ」

「なるほど、彼女もきっと喜ぶわ、いい選択よ小野上君」

「えへへ、そうかな、ありがとう」


「ところで、君はどういうものを選択するつもりなのだい?」

「うーん……デザインは、シンプルでも綺麗なこれかこれにしようと思ってる。勿論ペアリングだから俺も同じのにするんだけれど」

「うむ。いいセンスだ。君の彼女は同じ趣味をもち、かつ小柄で、またよく手を動かすことが多い、と、そのあたりかな?」

「……!な、なんで屶網なたみのことを?」

 探偵、きさまっ!


「なに、簡単な推測さ。ところで、君は彼女のどの指にはめてもらうつもりかね?」

 推理ではないのね。


「そ、それはさ……あの、やっぱり、薬指に……はめてほしい……」

 ですよねー。


「可愛いわ、小野上君。大丈夫よ、屶網さんもきっと喜んで嵌めてくれるわ……ところで指のサイズは測ったのかしら?」

「あ、ああ、それは。指輪だから」

「もちろんだ。指にするからには指を測るだろう、ちなみにどの指のどこを測ったのかね?」


「えと、薬指のここをこうやって……」

「いいセンいっているわ。そうね、第二関節が一番太くなるから、それを通る上で一号か二号上のものがおすすめよ」

 へー、そうなんですね。


「ああ、仮にうまく合わなくても、そのままチェーンに通してリングをつけることもできる。その場合は改めて指のサイズを聞いておくのも手だね。幸運を祈っているよ」

「ええ、素敵なものを選んであげてね?」

「ああ、ありがとう二人とも!助かったよ」

 素直にお礼をいう小野上君とお店を後にする二人。

 あれチェーンは?




 レンガ畳がお洒落な通りにある、イタリアンレストランの前に来ています。


「ここが、今日のランチを頂く場所さ」

「素敵ね、何を出して頂けるのかしら」

 つくづく、どこの人たちだよ君たちは。


「ああ、今は新鮮な夏野菜の素材の味を生かしたメニューをセレクトしてくれるらしい」

「ええ、健康的な涼の取り方ね、イカしてるわ」

 夏野菜は、体の熱をとってくれるものが多いもんね。


「もちろん、体力も必要だ、メインにはきちんとステーキもでる。なに、君と僕なら食べられるさ」

「パスタの上にステーキも来るのね、楽しみだわ。少し、量が心配ではあるのだけれど」

「なに、コースだからゆっくり時間をかけて食べればいい、消化が進むし、一品一品の量はさほどでもない、カロリーの心配なら要らないさ」

 なるほど。ちなみにコースは二時間かかるそうです。


「さ、これもどうだい」

 そういって、フォークに突き刺したトマトを差し出す眼鏡。

「ええ、頂くわ。あら、ひんやりしていてとても美味しいわ。お返しにこちらはどう?」

 同じく、瓜のようなものを掬って、差し出す三つ編みおさげ眼鏡。


「勿論、頂くさ。さすがだ、三美奈に食べさせてもらっていると思うと、より一層美味しく感じるのはなぜだろう」

「博……さすがに私も恥ずかしいわ」

 照れますよね。周りの人もちょっとみてますもん。



 総合デパートが三つくらい繋がったような大きなショッピング施設に来ています。


「グランド・メティカバールだ」

 そうだな、眼鏡よ。


「ええ、そうね。流行……もある程度取り入れたいのだけれど、総合的にまずは見て回りたいわね」

「夏の特集コーナーもあるようだね」

「そうね、今日は普段着よりもそちらを見たいのよ」

「ああ、実を言うと僕も三美奈の浴衣や水着が見たいのだ」

 眼鏡って、結構欲望に忠実。エロ眼鏡……?


「も、もう博ったら……楽しみにしていてね」

「勿論だ、夏が待ち遠しいよ」

 でも、工藤さんも嫌ではないようです。



 可愛いというよりは、綺麗で大人びた浴衣を身に着けた工藤さん。

 素敵です。でも眼鏡。

「……素敵だよ、三美奈……」

「あ、ありがとう博……」

「そうか、浴衣候補はこれか」

「いえ、期待しているところ悪いのだけれど、今日決めるつもりはないの。あ、誤解しないでね?当日まであなたに秘密にしたいのよ?」

 あ、そうなんですね。

「ああ、なんてクールなんだ、僕にサプライズを用意してくれようとは」

 うんまぁ、その方が二人ともドキドキするもんね!


 水着コーナーです。

 おい眼鏡、何しれっとついてきてるんだ。


「水着……ね、少し運動量をふやそうかしら」

「なぜだ?その、悪いが、僕にはとてもそうはみえないのだが……」

 恥じらう様子もなく女性用水着コーナーについてきて挙句、まじまじと彼女の体を見つめる眼鏡。

 光ってる。

「その……ね?ちょっと胸とかおしりがきつくなってきて、その……きゃ」

 いきなり抱きしめるなんて、大胆な眼鏡め!


「大丈夫だ、三美奈……君はこんなにも抱き心地がいい、気にする必要は何一つないんだ」

 なんかこの眼鏡えろい。


「で、でも、その少し……あ」

「……僕を信じてくれ」

「は……はい……」

 でも好きな人には弱い工藤さん。

 仕方ないよね。惚れてるんだもの。


「でも、さすがにウェストの関しては譲れないわ!」

「ああ、三美奈がどうしても譲れないところは、きっと僕も譲れないところだ安心していい」


 そうこうしていると?


「あら……?」

「どうした?三美奈」

「今日は、よくクラスメイトに会う日らしいわ……あそこにいるのは綾霧あやぎりさんね」


 可愛らしい雰囲気の服が沢山ある中、一際個性を放っているドレスの前で、ちょっと毛先がカールしたセミロングの女の子がいました。


「ふむ、なんというかこう。黒いドレス?にひらひらふりふりが沢山ついている服の前にいるようだね」

 あ、しってます、ゴシックロリータっていうのですよね?


「こんにちは、綾霧さん。このドレスをみているのかしら?」

「あ、こんにちはみーなさん。ええ、これ、ゴシックロリータっていう種類のドレスなんだけど、可愛くていいなぁ、って」

 ちら、とおさげ眼鏡を見て挨拶をかわす毛先カールさん。

 声が特徴的ですね。少し幼い?


「気に入ったのならば試着したりしないのかしら?」

 そう、聞いてみる工藤さん。


「うーん……私さ、こういう服大好きなんだけど、さすがに、ちょっと恥ずかしいな、って」

 ちょっともじもじしてスカートを揺らす綾霧さん。


「それにー、私たちだと少し上背があるからねー。こういう服が似合うのはうちのクラスのマスコット三姉妹くらいなもんだよ」

 そこに割って入ってきた第三者の声がします。


「こんにちは、みーな、それと、彼氏さんかな?初めまして、一組の沖峰絵里おきみねえりです。こちらも同じクラスの綾霧ノエル」

 ロングストレートの少女が立っていました。

 身に着けているのは、胸にリボンのついたどこかの学校の制服みたいな服ですね。

 あと、綾霧さんのノエルという名前は本名のようです。


「ああ、二人とも初めまして。工藤三美奈さんとお付き合いをさせてもらっている二組の金井沢博といいます、よろしく」

 眼鏡がさりげなく名刺を……ださないよっ!


「よろしくねー。ところでさ、みーな、こういうのきてみない?普段、あまりガーリッシュなのとかフェミニンなの着ないでしょ?ひらひらふりふりとかどう?可愛くていいと思うよ?」

 くいくいと、押してくる沖峰さん。

 中々ぱわふる。


「わ、私は、そういうのはきっと似合わないわ……」

「ち、ち、ち。違うんだよみーな。着たいか、着たくないかだ。大丈夫、今日は素敵な彼氏にも見てもらえるし、きっと楽しいデートの思い出になるよ?」

「僕は、三美奈が何をきても似合うと確信している」

 後押しをする眼鏡。


「ほらー、彼氏さんもそういってるじゃない!」

「あ、私、みーなが来てくれるんだったら、私もゴスロリ着たい!ね?お願い、一緒に着て?」

 ノエルちゃんも着たいんですね!


「え、え……でも着方なんてわからない」

「だーいじょうーぶーい。私たち、そういうのしってるから、ね?いこいこ。あ、彼氏さんはちょっと待っててね?みーなをお姫様にしてくるよ」

 否も応もなく、くいくいとおさげ眼鏡を引っ張っていくロング制服。


「ああ、期待してまっているぞ!」

 そして、取り残されたその場で告げる、眼鏡。



 ドレッサールームからお姫様が出てきました。

「……ど、どう?その……に、似合わないよね、こんな可愛いの」

「……」

「な、なにか言ってくれないかな……」

 とても恥ずかしいのか、もじもじしている工藤三美奈さん。


「か」

「か?」

「可憐だ……」

 喉の奥から声を振り絞るようにして出す博君。

 無理もありません。


「あ、ありがと」

「まってくれ、三美奈」

 そのままドレッサールームに戻って着替えようとした工藤さんを、金井沢君は腕をとって引き留めてそのまま彼の胸に彼女を抱き込み、そして。


「え?」

「!」

「きゃー」


「我慢できなかったんだ、愚かな僕を許してくれ。だが、言わせてくれ、あまりにも可憐すぎて歯止めがきかなかったと」

「う……うん……」

 そう、キスしてしまったのです。

 熱い本気のキスを。


「す、すごいわ。いきなり抱きしめてのキス」

「あらー、情熱的ね、いいなぁ。でもわかるわ」

「うん」

「みーなって眼鏡外して、髪を流したら本当にお姫様みたいに綺麗なんだもん」

「反則よね。眼鏡とったら超美人って。普段のお堅そうなギャップとかがものすごい」

 そうなのです。

 眼鏡をとって、三つ編みおさげをほどいたら、ゆるふわウェーブお姫様になったのです。

 すごい。


「眼鏡といえば、眼鏡とった金井沢君も王子様っぽかったよね」

「この恋人たちって、眼鏡で世間から正体を隠してるんじゃないかしら」

 なるほど、それで、二人は眼鏡を……。


「三美奈……!」

「は、はい……」

「これだ、これを買おう。そしてそれを着て、僕の家に来てくれ」

「!あ、あの、あのあのあの……」

 眼鏡王子が何か言い出しました。


「大丈夫だ、何も心配はない。きわめてクールなシンキングプロセスをスイングバイしアライブドしたプリンセスにめろめろだとか、そんなことは、断じて」

 何言ってるの?


「もう、なにを言っているのかわからないほど、興奮しているのはよくわかったわ」

「ええ、これを着て彼に迫るのは危険ね」

「あ、あのあのあのあの」

 戸惑いすぎて、思考回路がまともに動かない三美奈お姫様。


「はいはい、こっちおいでみーな」

「彼氏さんもちょっとまっててねー」

「ま、まつんだ、そ、それは、それだけはあああああ」

 混沌とした売り場に眼鏡の鳴く声が響きました。



「すまない、我を見失っていた」

「え、ええ、その、わ、私も」

「もっとクールに……いや」

「どうしたの?」

「今日は可憐な君の姿を見られて、とても嬉しかった……また、その姿を見せて欲しい」

「……ふ、二人きりの時に……なら、いい……わ」

 クールな二人に戻ったりそうでなかったり。眼鏡の奥には熱い情熱があったのですね。



 服をいくつか買って、それからそれから。


「えー、いや、悪いよ二人はデートしてるんだし」

「ええ、私たちがお邪魔するわけにはいかないよ?みーな」

「いや、そんなことはない、このくらいでどうこうなる仲でもないしな。二人にはお礼がしたいんだ」

「ええ、結局、幾つか服を見たててもらったし、正直、ああいう着こなしのものがあるとは思わなかったの。新しい発見よ。ありがとう二人とも」

 丁寧にお辞儀をするおさげ眼鏡。

 あ、また三つ編みしてもらったのです。


「というわけだ。ぜひ、一緒に午後のティーをミスト・フルートで一緒にしてもらいたい。お代はこちらがもつ、お礼だと思ってくれ」

「そ、そこまでいうなら」

「う、うん。甘えちゃおうかなぁ」

「ええ、是非、一緒しましょう?」

「そしたら、よろしくです」

「ごちそうになります。えへへ」

 ミスト・フルートのティーはお洒落な入れ物に出てくるのですよ。



 ミスト・フルートです。


「へえ、二人は、次のイベント?とやらに着る服の参考になるものを探していたの?」

「ほう、それで、あのように可憐な非日常を感じさせる衣装を沢山みていたのか」

「そうねー、コスプレっていうんだけどね」

「うんうん。サイズやデザインもあるし、一から作るのは結構大変なものもあるので、既存のものをちょといじってみたり、付け加えたりして、質感とかを確保するの」

 もっぱら会話は女の子たちがしています。


「すごいのね、お裁縫ができるなんて」

「そこまでのものじゃないけどね」

「屶網ちゃんのお友達なんかは、本職顔負けの方もいますしね」

 あれ、その方、どこかで……。



 楽しいお茶のタイムも終わりなのです。




 夕陽が差す海が見える公園で二つの影がベンチに寄り添っていました。

 一つは眼鏡で、もう一つはおさげ眼鏡です。

 世界から身を隠すための眼鏡です。


「今日は、特に刺激的で楽しかったね」

「ええ、私もあそこまでどきどきさせられたのは久しぶりよ」

「僕も、自分の中にまだ見知らぬ熱い情熱をもった自分がいることを知った。そう君が可憐な姿を隠しているように」

「ええ、あなたがあそこまで熱くなってくれるなんて……」

「三美奈……」

「博……」

 でも、最後は愛し合ってる二人がゆっくりと溶け合うのでした。


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