6 一周
あいつらに準備を済ませるように伝えると、俺は自分の部屋に入った。
ロッカーを開け、中の装備を見つめる。
鎧と斧が入っている。
俺は装備を取り出し掛けて躊躇った。幾ら何でもこんな凶器とも言える様な物を持ち歩いて良いのかと。
散々迷った挙句俺は斧だけ取り出して防具はロングコートで済ませる事にした。
幸い今は冬のようで、時計の日付は12月を示している。ロングコートを着ているのは不自然では無い。
現実では夏だったのに、こちらは冬かと思いながら装備を用意する。
ロングコートを着込み、斧を背に担ぐ。
斧の重さに苦心しながらも、やっとの思いでギルドホームのエントランスに到着した。
「遅いよザンジ」
どうやらレンとイリアはもう用意を済ませていたようだ。
二人は俺と違ってアバターを子供に設定していた。
現実では俺も含め二十二ではあるがいきなり子供に体が変わった事を何も苦としていないようだ。
俺は結構体の差異に戸惑って装備を着るのも苦労したというのに。
まあ、男のアバターで良かったとつくづく思う。
「さて、行くぞ」
俺の発した声に反応して二人も付いてくる。
ギルドホームの玄関を潜り、外に出たとき俺はその場に立ち尽くした。
外は余りにも美しかった。ゲームの時が嘘のように鮮明な景色。
レンガで作られた町の情景に、俺は只々見惚れるばかりだった。
「綺麗……」
いつしかイリアも足を止めていたようだった。
無理は無いだろう。現実では無いようなファンタジー世界が目の前に広がっているのだから。
俺が意識を戻したのは、レンの声が聞こえてからだった。
「ザンジ、いつまで止まっているんだ」
名で呼ばれて我に返る。
俺はそのまま歩き続けた。
二人と共に武器屋や防具屋、雑貨屋を見て回る。そこで幾つか食料を購入したが、値段が跳ね上がっていた。
六十ルアで買えるはずのパンでも百二十と倍の価格設定になっていた。
ルアとはこの世界の通貨単位で、一ルアで一円と見て良い物だった。
これまではルア単位はあまり値が張らなかったが、この世界では値上げされているのだろう。
買ったパンを食べながら歩き続け、ついに町を一周。
一周し終わりまたギルドホームへ帰る事になった。




