70 帰宅
「おかえりなさい、リクさん」
「ああ、ただいま」
家に帰るとミリルが待っていた。
ミリルは今日の掃討でかなりの戦果を上げたらしい。
僕としても驚くばかりだ。
もっとも、ミリルは物理もかなり強い。
物理攻撃力は僕にも匹敵する。
ついこないだ気付いた事だった。
ミリルのスキルで、上がる筈がないスキルレベルが上がっていた。
彼女の主武装はレイピア。勿論、使っていればレイピアのレベルが上がる筈なのだ。しかし、上がっていたのは杖のレベル。
ミリルが持つ武器は、レイピアのように見えていた。しかし、それは杖だったのだ。
レイピアと杖の二つの属性を持つ武器だった。
ゲームでは存在しない筈だが、ミリルがこの武器を手にいれたのはウェーブ2の中盤、僕たちが休暇を取っていた頃だ。
これまでの不条理や理不尽、不自然さを考えるとまだ理解できる。
ミリルの物理攻撃力が異様に高い原因は、武器にあったのだ。
二つのスキルの補正を得られているのだから、強いに決まっている。
「そう言えば、聞きましたか? 義勇軍の話」
急にミリルが話を振ってきた。
戸惑いながらも答える。
「義勇軍か。知らないな」
僕の答えを聞くと、待っていたと言わんばかりに話し出す。
「商業都市の犯罪多発地域で、掃討に協力してくれてるらしいんです。それ以外にも、旅人の護衛とか、町の自治も行っているそうです」
「それ、義勇軍とは言わないような気がするぞ」
「そうですか? 結構気に入っていたんですけどね」
それにしても、義勇軍か。
ザンジは違うだろう。彼は新しく作られたギルドでタンク隊の隊長を担っていたはずだ。
カインも、中立のギルドだから違う。そもそも、カインは自治とかには興味はなく、レベリングをこつこつとやって死なないようにする方が楽しいらしい。
「それで、その中の一人が3200万レベルですっごく強いらしいんです!」
ミリルが目を輝かせながら言う。
彼女にとって、上位プレイヤーは憧れの的なのだろう。
実際、3200万と言えばこのウェーブの目標レベルの十倍程である。
僕から見ても、圧倒的に強い。そのプレイヤーなら、リヴァイアサンも倒してしまうかもしれない。
念のために、ラベルに連絡を入れてみよう。
もし協力してくれそうなのであれば、心強いことこの上ない。
「少し電話してくる」
ラベルはまだ寝ていない。
彼は11時に必ず寝る。しかし、それより前は絶対に寝ない。
今は9時半だ。起きているのは確定とも言っていい。
「もしもし、ラベル____」
僕が声を掛けると、スピーカーから焦った声が聞こえた。
「丁度良い、リク、義勇軍の団長を知っているか!?」




