69 無法地区
ある商業都市の一角、かつて大火災により焼き払われた場所。
政治的にも経済的にも陥落状態にあるここは、最早かつての平和はなく、無法地帯と化していた。
「おら死ねぇ!」
今もこうして、暴行が発生していた。
幼い少女に向かって、斧を振りかざすのは中年の男。
容貌からして、男はプレイヤーではない。プレイヤーならば、もっとキャラメイクの時に凝る筈だ。
プレイヤーは、性別種族千差万別だ。勿論、日本の時とは性別が違うプレイヤー……………… 特に、男性プレイヤーに多い。
性別が違う状態であるプレイヤーは、今のプレイヤーの6割を占めている。
その上、全体で見ても女アバターは8割。
プレイヤーには圧倒的に女が多い。
僕の知人も、その状態であった。今は女だが、元々は男だったらしい。
さて、目の前の暴行だが。今なら、一発で仕留められるだろう。少女を逃がすのは簡単だ。
ゴム弾をスナイパーライフルに装填、構える。
引き金を引き、命中を確認して撤退。
商業都市に久し振りに来ていたが、ここまで荒れた地域があるとは思いもしなかった。
確かに、僕はここで襲われたが、あまり印象には残っていない。
ここに来てからもう100人は倒している。
治安維持が行われていない区域に、暴走族や犯罪者が蔓延っているのだ。それを知らないプレイヤーが、ここに踏み込めば、リンチは間違いない。
殺されて身ぐるみを剥がれるのだ。ここには法律がない。日本に有った法律も憲法も。殺人も、強盗も窃盗も。それらは犯罪ではない。そんな世界だ。
フェイムだとかは警察が居て、治安も維持されているが、ここには居ない。
全員大火災に巻き込まれて撤退、もしくは死亡した。
「……………こんなものか」
僕は帰ることにした。ラベル達から治安維持のための征討活動を頼まれていたが、今日はこんな物だろう。
きっとミリルは大量に倒しているに違いない。
彼女は何事にも真剣に取り組むタイプだ。彼女であれば熱心に戦っているだろう。
「止まれぇ!」
大きな声で呼び止められる。
声の主は、背後の女だった。
口調と容姿が一致しない事を踏まえると、プレイヤーだろう。
しかし、このプレイヤーは初心者だ。
銃を突き付けられてはいるが、僕はいつでも攻撃できる。
それは、手を挙げろと指示されていないから。
相手の武装解除を完璧に忘れている。
僕は少々呆れつつも、銃を奪い、一発殴って気絶させる。
「返すぞ」
僕は女の銃を置き、その場を立ち去った。
今日の征討は僕が113人、全員合わせて1244人であった。




