5 二人目の目覚め
全身に、いつもとは違う感触がする。
俺は飛び起きた。その衝撃で布団が翻る。
そして、最初に自分が知らない部屋に居る事に気が付いた。
俺のマンションの部屋と似ているが、少し違う。
壁は白い壁紙が張られている。
俺のマンションの部屋は少し色が違うのだ。
俺は立ち上がる。
何故か少し目線が高い気がする。
立って最初に目に止まったのは鏡であった。そこには、いつもと変わらぬ自分の姿__否、少し違う。今の俺はシャツとハーフパンツを着ているが、寝る前とは少し違うシャツなのだ。そして、何より体格だ。
今の俺は前と比べると少し身長が高い。しかも、少し筋肉が付いているようだ。
俺は鏡に写る自分を見て気付いた。
これは、俺のソードマジックのアバター、ザンジであると。
俺は前からこの手の小説を読んでいたので、状況は理解できた。焦る心を冷静に落ち着け、考える。
「もし、これがソードマジックなのであればあいつらは居るかも知れない」
あいつらとは、俺の所属するギルド「月影」で共にパーティーを組んだ仲間だ。
一人がレン。二刀流剣士と呼ばれる珍しいジョブを持つプレイヤーだ。種族は人間だった筈。
そして、もう一人はイリア。ソードマジックには珍しい性別を偽らない女性プレイヤーだ。確か種族はエルフだった。イリアにはいつも回復役を頼んでいた。
俺も含む三人で俺が盾、レンが攻撃、イリアが回復と分担していた。
レンとイリアは高校時代の同期でもあり、親しい仲だった。だからこそこのゲームで生き延びれたのだった。
俺がこの状況に立たされる中、あの二人はどうしてるだろうか。
俺は気になって部屋のドアノブを握った。
とその時に自分の服装を思い出し、慌てて記憶を頼りにロッカーを開ける。
そこには鎧と斧があり、そして普段着が存在した。
記憶が確かであれば鎧と斧はゲームで俺が使っていたものだ。これを手に入れるのは苦労したなあ、と思いながらもう一方の普段着を取り出して着る。
普段着を着て鏡を見ればそこに写るのはもうザンジそのものであった。
俺はドアを開ける。
流れてくる風が俺の髪を揺らした。少し髪が抜けただろうか。
目にはメーラの町並みが見える。レンガ作りの統率された町。ゲームでも美しかったがこの目で見ると感慨深いものがある。
やはりここは異世界なのであろうかと予想する内に背後から声が掛けられる。
「ザンジ、聞こえてる?」
振り向けばそこには二人の少年少女。
レンと、イリアである。
レンは青い短髪、イリアは金髪とゲームとそう変わらない。因みに俺は赤髪だ。
「ああ、お前らか」
「ああ、お前らかじゃなくて、もっと別の感想は無いの」
金髪の少女が話し掛けてくるのを聞き流して質問する。
お前達はあの二人かと。
勿論、その返答はyes。そして、聞き返されるが勿論俺もyesだ。
「ギルマス、俺たちに探索してこいって」
「ギルマスか、まあ従うとするか」
ギルマスは、ギルドマスターの略だ。
この月影のトップの命令に対してnoは許されない。
俺は先に準備してろと二人に言って部屋に戻った。




