61 私は飛べない
視点:ラベル
「バカ野郎!」
俺は怒鳴った。
俺の心には怒りが渦巻いていた。
こいつらは本当にバカだ。
まさか崖から飛び降りるとは思っていなかった。
そんな事をすれば大怪我では済まないのに。
こいつらは、下が砂だから大丈夫だと思ったらしい。
それでも20メートル以上から落下するのは危険な事だ。
最悪な事に、砂の下には石が多く埋まっていた。
まるでこの塔を製作したゲームマスターの罠のようなものに掛かってしまった訳だ。
「くそったれ」
近くにいた奴に怪我した奴を回復するように伝える。
骨折した奴も居る。回復にはかなりの時間を要するに違いない。
全く、困った奴等だ。
「ザンジ、出発しよう」
「もう行くのか? こいつらはどうする」
「こんなバカどもは放っていく」
俺の言葉を聞いたザンジが頷く。
リクから聞いた話によると次の町には魚が有るらしい。
俺も魚は早く食べたい。
いずれ皆で食べたい、と思いながら槍を担いで歩く。
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「ここか…………」
俺らは漁港に着いていた。
「日本を思い出すぜ」
ザンジが呟く。
「俺、日本だと港の近くに住んでいたんだ」
ザンジが言った。
ここに来てからも半年は経過している。
このペースだと後50年は掛かると予想されている。
まあ、俺らが死ぬのが先だろう。
今のウェーブでも精一杯だったのにこれから更に強い敵が現れるようでは俺たちも戦えない。
「おっ、サンマだ」
魚屋にサンマが売っていた。
俺は思わず買おうとした。ここに来てから久しぶりだ、魚を買うのは。
「すまねえ兄ちゃん、さっきの客が殆ど買っちまったんだよ」
店長が言う。
もしかして、さっきの客ってリクとミリルか?
ミリルが魚好きだと聞いた事がある。
もしかしたら、買っていたのかもしれない。
「さて、行くか」
俺は金を渡して店を離れた。
その時、電話がなる。
「もしもし」
「ラベルか。こちらの治療は終了した」
ローレウスだ。
どうやら、治療は終了したようだ。
結構早いものだな。
優秀な治療魔法の使い手と言うとミリルが一番であり、次にMgkの魔法使いだ。
Mgkは殆ど全員が魔法一極の構成で、回復魔法の使い手も多い。
俺のギルドにも回復魔法の使い手も居るが、俺のギルドはどちらかと言えば錬金術派であり、魔法型は少ない。
俺のギルドの研究員のトップが錬金術と科学である事が大きく関係している。
まあ、科学者は科学薬をすぐ作れる点で優秀だ。前回のウェーブ攻略での圧縮酸素も、科学者達が作り出していたものだ。




