60 港町
ウェーブ3町エリアは、一言で言うと「港町」である。
日本の漁港にも似た町並みをしており、海の方を見れば行き交う船も見える。
「リク君、これって………」
「これは…………」
僕達の目は一つの物に釘つけになった。
町の商店街の一角、魚屋に売られていた魚。
「サンマだ…………!」
サンマだった。
これまでこの世界では見たこともない魚。
と言うより、ここでは魚自体を食べることが少なかった。
メーラの町にフェイムと海から離れた町に住んでいたので必然的に魚を食べることが少なかったのである。
「おっ、いいとこに目を付けたね!」
魚屋の店番をしていたおじさんが僕達に話し掛けてくる。
「いやぁ、この魚は余り取れなくてね…………」
「折角だから買ってくかい?」
「安くしとくよ」
僕は一瞬考え込んだ。
そして、僕は決断した。
「買おう」
僕はサンマの入った箱を指差した。
「箱ごとかい?」
「分かった、持ってきな」
僕は金を渡してサンマの入った箱を持ち上げた。
そのまま収納鞄にしまう。
「さあ、行きましょう」
ミリルが服の裾を引っ張ってくる。
どうやら、もう行きたいようだ。
サンマを買いたくなかったのか?
「いいえ、早く食べたいので」
ああ、そうか。
ミリルは相当な魚好きだった。
休暇中に話してくれた事だが、リアルでは魚を多く食べていたらしい。
「ああ、いこうか」
僕はミリルを追い掛けた。
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町の中の人は余り多くない。
これから新しく入ってくるプレイヤーで賑わうだろうが、おそらく魚は取り合いになるだろう。
元々このゲームは日本で運営されているゲームだ。
日本人がプレイヤーのほとんどを占めているため、魚が食べたいプレイヤーも居ることだろう。
「ああ、すまない。電話だ」
唐突に電話の着信音。
ミリルに一声掛けてからスマホを取る。
「リク、大変だ」
「どうした」
ザンジだ。
一体どうしたのだろうか。
「まさか、モンスターでも出たか?」
「いや、事故だ」
「扉のすぐ先は崖だろ?」
「あそこから落ちたバカがいる」
僕の頭の中には崖から飛び降りて骨折するプレイヤー達が浮かぶ。
砂浜とはいえ、砂の層は薄い。砂の層の真下は石だからだ。
いくら強化された体でも飛び降りれば重症を負うことは分かるだろうに。
「ああ、で…………」
一瞬ザンジが黙った。
スマホから小さく怒鳴るラベルの声が聞こえる。
「そんな訳だからな、もう少し待っててくれ。俺はこのバカ達を町まで運ぶ」
僕もバカだと思う。
崖から飛び降りるとは。
調子に乗って飛び降りた奴らがいるのだろう。
攻略集団にはそのようなバカ達も沢山いる。




