3 商業都市メーラ
メーラの町に着いた頃には、すっかり夜になってしまっていた。
だが、そんな中でも人々の話し声は聞こえてくる。
元々メーラはその設定上メーラに拠点を構える者も多く活気に溢れていた。
その設定、それは商業都市である事だ。
ゲーム時代、ソードマジックではアイテムが非常に重要になっていた。回復薬一つでデュエル__つまり決闘をするまでに重要だった。
無論、それはこちらでも変わらないだろう。この世界で死ねばどうなるのか不明な以上、出来る限り安全に行動したい。少し前の初戦闘で分かった事だが、この体は十分に強い。ビルから飛び降りた程度では死なないだろう。つまり、死ぬ可能性はモンスターとの戦闘かデュエルのみとなる。
だが、後者に関しては確証が持てない。町が必ずしも安全だとは言い切れないのだから。ゲームでは町は安全地帯であり、全攻撃を無効にするシールドが張られていたのだ。
しかし、この町にはシールドがある事を示すビーコンが無い。
つまり、町に居てもダメージを受ける可能性があるのだ。唯一存在したのは、モンスター避けの結界だけだ。しかも、この世界がゲームの設定に従って具現化されているのならモンスター避けの結界はあまり効果を発揮しなくなる。
モンスター避けの結界、その設定は「周辺のモンスターに効果のある魔力を放出し、モンスターを遠ざける」である。一見問題無さそうに見えるが、フィールドボスの設定を見ればその欠陥が分かる。
設定は「周辺を統率する力の強いモンスター。"人間の作った対魔物魔力が効かない"」である。
設定に忠実なのであれば、結界はフィールドボスには効かなくなる。
そして、その設定に関係する一番恐ろしい事が、侵略である。
侵略は、周囲のモンスターがフィールドボスと共に大挙して町に侵攻してくる事だ。
ゲームでは一度も起こっていないが、これは設定資料集に乗っているのだ。もし設定の再現がこれにも及んでいれば、大変な事になる。周期は三年に一度と格段に強いものが三十年で、今年が前者なのだ。
そして、この二つが重なるときが、一番強いモンスターが襲ってくるものだ。レイドボスと呼ばれるゲームでは狂気とも言えるステータスを持つ敵が出現する。レイドボスは、かつてイベントが起こった時に一度だけ出現した。全員でHPを協力して削るイベントだ。レイドボスイベントは設定と関係なしに起こったが、それが出現する設定が存在するのだから恐ろしい。
話を戻そう。メーラは、商業都市である関係上活気がある。ゲームでは昼夜問わず人に溢れていた。
だが、今は大通りでさえゲーム時代の半分ほどの人しかいない。
だが、それでも__
「ソードマジック最高!」
こんな声も聞こえる。恐らくプレイヤーだ。
人々の中にはプレイヤーらしき者もチラチラと見受けられる。
だが、驚くべきはNPCであろう。ゲームではプログラムに書かれた事しか答えないそれが、もはや普通の人間のように話している。否、もうこの世界では人間だ。あの表情や話し方を、プログラムが再現は出来る筈はない。
そして、プレイヤーも多いようだ。一目で分かる。普通の人間とプレイヤーの違い、それは、体力ゲージの上のランキング表示だ。僕は千万台のランクだが、希に十万台もいる。
ここまで聞けば普通だと思うであろうが、勿論裏もある。
嬉しそうに騒ぐプレイヤー達とは対照的に、明らかに絶望に満ちた者もいる。
町のレンガ床に備えられたベンチに座り、頭を垂れる者も居れば泣いている者もいた。
町を一通り見て回ったところで、僕は帰ろうと体を捻っていた。




