47 防衛戦終結
「やったな………」
全身を切り刻まれ動かなくなった男を見て呟く。
「良くやった!」
ラベルの嬉しそうな声に思わず振り向く。
「良くやったリク!」
「まあ、そうだけど」
「もっと喜べよリク!お前が倒したんだろ!?」
カインも話し掛けてくる。
いつの間にか周りには沢山のプレイヤーが集まっていて、身動きが取れなくなっていた。
「今日は宴会だ!」
「英雄に乾杯!」
どこから酒を持ってきていたのだろうか。いきなり飲み出す人も現れてきた。
「ほれ、あんたも飲め」
「いや、未成年だから………」
「そんなこと言わずに!」
「やめてやれグレイ、リクはアバターが子供だからな」
「いや、俺が飲ませようとしてたのはただのジュース………」
「先に言え!」
ポカリと一発ラベルがグレイと呼ばれた男に殴る。
すっかり公園は宴会広場となっている。しかも、気が付けば地面の血も掃除されている。年越しパーティーの時も、準備はみんなあり得ないほど早かった。これもアバターが強化されたからか。
僕はひっそりと宴会広場から抜け出した。
宴会広場の灯りが遠くに見える位まで遠ざかると、すっかり音は聞こえなくなり、風の吹く音だけが聞こえる。
こんな時にミリルが居ないとは。今日は月が魔力を帯びるらしい。現に月は青白く光輝いている。見せてやりたかったが、仕方がない。
ーーーミリルさんですが、当分起き上がれないでしょう
ーーーこの症状は、洗脳魔法が中断されたときの症状です。ゲーム風に言えば、精神接続欠如でしょう
ーーーそうか
ーーー安心して下さい、回復する症状です。最も、植物状態になる危険性がありますが………
ミリルを見た医師が言った言葉が蘇る。ミリルなら、必ず回復する筈だ。
植物状態になんてならない筈だ。
「リク、リク」
誰かに呼ばれていたようだ。
「ザンジか、どうした」
「来てくれ」
ザンジが歩いていった場所は、戦闘があった場所から少し離れた場所だった。
そこには、蝋燭が何本も置かれていて、十人ほどのプレイヤーが立ち尽くしている。
「見ろ」
ザンジが指差した先は、中央の台だった。
人が、寝かされている。
「この戦いでただ一人の死者だ」
「祈ってやってくれ」
そういえば、最初にあの男に殴られたプレイヤーは内蔵がズタズタになっていたらしい。
つまり、あの人はそのプレイヤーか。
大きな怪我の為に体の殆どが無くなっていて、男か女かすら分からない。
だが、死亡した事は変わらない。
僕は黙祷を捧げた。
後から分かった事ではあるが、あの戦いの日は、偶然にも月が魔力を帯びるだけではなく太陽も魔力を帯びていた。
太陽も月も魔力を帯びた日は、世界で最も幸福な日らしい。その代わり、不幸が一人の人間に一極集中するらしいのだが、それは別の話。




