42 救出戦
沈黙が続く。
双方が構えた銃からは、未だに一発の弾丸も撃たれない。どちらかが痺れを切らして撃ってくるのを待つだけ。
パァンと軽い音が響く。魔法系のカスタマイズをされた銃特有の発砲音だ。女が撃った弾を剣で受け止める。そのままこちらの拳銃で麻酔弾を撃つ。最近買ったばかりの麻酔専用の拳銃だ。
「情報を聞き出したかったが……仕方ない」
倒れた女を一瞥し部屋を出る。強力な麻酔だから、暫くは起き上がれない筈だ。
女が言っていたように反対側の部屋へ向かう。もう気付かれている事は分かっているので銃を構えながらドアを開ける。
「誰だテメエ!」
部屋の中に四人いる。その内の一人はこちらに反応した。持ち物を見る限り相手は銃を持っていない。精々小型の拳銃だろう。
「畜生……気付かれたか!」
一人の男が片手剣を抜いて飛びかかってくる。だが、僕の目なら見切れる。この動き、まだ体に慣れていない奴特有の動きだ。集めた情報によると、身長や体格が大きく違ったり性別が違ったりするアバターになると、それに慣れるまでかなりの時間を要するらしい。昔の姿のトレースで良かったとつくづく思う。
「何ッ……!」
一筋の光が走った。男の片手剣が折れたのだ。男が使っていた剣は店売りの安物だ。性能的に勝るキャンサーに競り負けたのだろう。折るつもりは無かったが、幸運な事だ。
驚いて体が固まった男の腹に一発殴る。体制を崩した所に当たった攻撃だったので、男は大きく吹っ飛び気絶した。そして、男が気絶した事でそれまで見ていた他のプレイヤーも動き出す。
ミリルが見えた。部屋の奥に居る。魔術道具等を見ると、やはり洗脳でもしようとしていたのが分かる。
「畜生!マイケルが殺られた!」
部屋の中に居るプレイヤー達の一人が叫ぶ。
「ここで邪魔されたら終わりだ!殺せぇ!」
リーダー格であろうプレイヤーが指示を出す。
メンバーは斧、ナイフ、槍。斧と槍は部屋の中で使うのは無理が有るだろうがそんなことは気にしていないようだ。
「セイッ!」
先程とは明らかに動きが違う。猛烈な気迫と共に斧の一撃。
だが、斧は重い。明らかに動きが遅い。楽に回避して麻酔を二発。
一発は斧の男に、もう一発は検討違いな方向に向かった。それは、ミリルの方向。正確には、ミリルの側のクリスタルに向かって。
パリィンと音を立てて割れたクリスタル。
それを見て奴等は言葉を詰まらせた。
「やられた……!」
「くそっ!」
地団駄を踏んで悔しがるプレイヤー達。それを見逃す筈は無い。隙が出来たところに麻酔を二発。更に撃って眠らせる。最初の斧の男が耐えたことに驚きだ。耐性を付けていたのだろうか。
何はともあれ、これでここのプレイヤーは一掃出来た筈だ。




