25 密談
「調べろ?」
「そうだ。強硬派に類する奴を炙り出して欲しい」
「分かった。ギルドのメンバーを調べるのは申し訳無いがこれも君達の為だ。調べておこう」
「ああ、ありがとう」
「………そうだ、明日会議に来てくれないか」
「明日?次の日はウェーブ攻略だぞ」
「すまない。これは極秘会議になっている。俺の方から呼び掛けさせてもらった」
「何処で会議だ?」
「我々のギルドホームの地下室だ。フェイム中央公園の近くの白いビル。合言葉は"解放の円卓"」
「了解。明日の……何時だ」
「午前9時。よろしく頼むぞ」
そこで電話は途切れる。
受話器を置き僕は寝た。
次の日の事だ。
僕は会議の為に朝早く起きて家を出ようとしていた。
「リクさん、何処に」
「少し出掛けてくるだけさ、心配はしなくていい。それよりも明日はウェーブ攻略なのだから休んでいてくれ」
「分かりました……」
ミリルが少し悲しそうにしている。
僕は行ってくる、と一言言い残して家を出た。
フェイム中央公園の近隣にある白いビルが、ラベルのギルドホームだった。
ザンジのギルドホームとは違う大きく高いビル。
玄関の自動ドアを潜ると暖房が体を暖める。今は冬と春の境だ。この地域は日本とほぼ変わらない気候で、今もしっかり寒い。暖房が付いているだけ喜ぶべきか。
ホールは以外と賑わっていて、プレイヤーも多い。二大ギルドの片割れなのだから当然か。
受付の男に近付いて囁いた。
「密談だ」
それを聞いて男ははっとしたように返してくる。
「合言葉は」
男が囁いてくるのを僕も囁き返した。
「解放の円卓」
「では、そこの通路の階段を下りドアの隣にあるチャイムを3.2.1.3.7で鳴らして下さい」
僕達の声は他のプレイヤーの声に負けて他には聞こえていない筈だ。
3.2.1.3.7。リズムを覚えて通路に向かう。
階段を下ればドアが見えてくる。僕はチャイムを、リズム良く鳴らした。
ピーッと音を鳴らしてドアが開く。
今ので人物認証をしていたのだろうか。
「良く来たな」
「ラベルか」
「まあ、そこに座れ」
僕は言われた通り椅子に座る。
机は円を描いていて、まさに解放の円卓。
「全員、揃ったな」
この円卓には4人が座っていて、全員顔見知りだ。ラベル、カイン、ローレウス。
この人数では円卓とは言えないだろうがこれから増えていくのであろう。
「今日の密談は、増えつつあるプレイヤー相手の犯罪についてだ」
「犯罪か。俺も遭遇はした」
カインが呟いた。確かにカインは僕と共に犯罪者と遭遇した。
「この場にリクが居るのは、恐らく一番犯罪者集団とコンタクトしているからだ」
「……そうか。じゃあ話をしよう」
「僕が会った犯罪者は、どれも僕が一人の時だった。この世界には犯罪を見抜く仕掛けはない。証拠を隠滅しようとしたのだろう」
「武器は、銃が多かった。理由は不明だ」
そこまで聞いて、ローレウスが言葉を初めて発した。
「日本人の多くは銃に対して恐怖を持っているからだろう。相手を脅す事も簡単だ」
「この世界では、HPは特殊になっている。生命力の可視化だからな」
「ハイランカーが自分よりもレベルの低いプレイヤーに一撃で殺された例もある」
ローレウスの言葉で、皆に動揺が走る。
最初に口を開いたのはラベルだった。
「それは、いくらレベルが高くても一撃死の危険があると言うことか」
「防御力により変動するだろうが」
この会話は、この世界で銃が最も危険と証明された瞬間である。
レベルを上げ続ければ銃の弾は弾けるようにはなるだろうが、スナイパーには無力だ。
「そうだな……では次はこれからの計画について話し合おう」




