20 フライパンゴーレム殴り
久し振りの穏やかな朝だ。
最近はずっとボス攻略関係で忙しかった。たまにはのんびりしたいものだ。
この世界の技術は地球より遥かに発達している。普通に過ごす分には地球よりも快適だ。僕も内心金稼ぎだけしてのんびりと過ごしたかったが、ザンジに迫られて塔の攻略をせざるを得なくなった。
今日は家でのんびりしようと思ったその時、チャイムが軽い音を立てて鳴った。
「はい」
軽く答えて玄関のドアを開ける。
そこには、昨日助けた少女がいた。
昨日、雑魚ドラゴンに殺されそうになっていた。
直ぐに去ったので詳しくは覚えていない筈だが、どうやって来たのか。
「どうやって来た」
「私、"記憶保持"のスキルを持ってるんです」
記憶保持は、確か情報を見たらもう一度確認せずに表示できたスキルだった。恐らく、スキル効果変更の弊害で見たものを忘れない的な物に変わったのだろう。
「良く当てれたな」
「手当たり次第に聞き込んできたんです」
おいおい……
どれだけ時間が掛かったのか見当も付かない。あの一瞬で覚えて、名も分からないのに適当に聞き込んで僕を当てれるのか?僕は称号こそ持っているがザンジも、ラベルも僕の事は話さないと約束してくれている。僕はソロだし、何処で情報を仕入れたのか。
「あの……頼みたい事があるんです」
「何だ?」
「私、レベルが低いんです。まだ適正もクリアしてません」
「困ったな。適正もクリア出来ていないのなら"あれ"も行けない__いや、二人なら行けるか」
「"あれ"て何ですか」
「真実の迷宮。真祖にランクアップするためのダンジョンさ」
「真祖って、古祖、真祖、神祖の真祖ですか?」
プレイヤーは、最初はランクが無いが、特定のダンジョンやクエストでランクアップ出来る。古祖、真祖、神祖とランクアップする。ランクが上がるとレベルキャップが解放され、通常は100まで、古祖で100万、真祖で1億、神祖で制限解除。今僕は真祖なので、1億まで上げることが出来る。ランクスキルもあるので、上げて損はない。噂によると、「種族神覚醒」なる物が有るらしいが、真相は定かではない。
「私、まだ古祖なんです」
「丁度良い。レベル上げついでに真祖になっておけば良い」
「どうすれば上げれますか?」
「着いてから話すよ」
「私、ミリルって言います。今日は、宜しくお願いします」
「リク。宜しく」
今日はゆっくり出来なさそうだ。
まあ、新しい人材が増えると考えれば悪くはない。
暗い迷宮の奥底に、僕達はいた。
「先に、レベル上げの方法を教えよう」
「分かりました」
「まず、これに武器を変えて」
「……フライパンですよね、これ」
「良いの良いの、ほら来たよ」
僕が指差す先には、鉄のゴーレム。
「まず、コアを狙って、壁に嵌めるんだ。その後ゴーレムのHPがゼロになるまでフライパンでコアを殴り続ける」
「分かりました」
そう言ってミリルはフライパンでゴーレムを殴り続ける。
「そう、そんな感じ」
数十分で、ゴーレムは崩れ落ちた。
「どう?」
「疲れました……」
「これを何回もやるんだ。これはレベル120万までしか出来ないから、その時は次に__」
「もう123万です」
「……次行こうか」
おかしいな、こんなに直ぐレベルが上がるはず無いのに。
しかも少し時間が短かった。筋力特化かな?
だが、あの体つきは筋力特化とは思えない。
「ほら、行きますよー」
「……分かった、次行こうか」




