17 old fire dragon
「さて、今回の予行演習で討伐するネームドは、知っての通り"old fire dragon"だ。攻撃方法は爪による斬撃、炎属性のブレス、炎属性魔法。皆は炎耐性のある防具で来てくれ」
「情報は何処から仕入れた?」
予行演習会議、ボスの情報についての所で野次が飛んだ。
情報の出所を知りたいのは分かるが、今で無くても良いだろう。
話をしていたラベルは、怒る様子もなく冷静に答えた。
「我々が得た情報だ。何処からも仕入れてはいない」
野次を飛ばしたプレイヤーは、チッ、と舌打ちして黙った。
それを見たラベルが話を再開する。
「別に火属性耐性でも良いが出来れば炎属性耐性を頼む」
ソードマジックでは、火属性の上位として炎属性があった。炎属性の攻撃は火属性耐性でも軽減できるが、軽減率が下がる。炎属性耐性であった方が良い。
「今回のパーティは、事前の打ち合わせ通りタンクが3、アタッカーが4、ヒーラーが3の構成だ。タンクは前方でネームドのブレスと爪を防ぐ。ヒーラーはマジックシールドを張りつつタンク班の回復だ」
マジックシールドは、魔法攻撃軽減の効果を持つ。タンクでは遠距離魔法までは防げないので、マジックシールドは必要だ。
Mシールドと略されるこの魔法は、アタックシールド__Aシールド__と並ぶ防御魔法の中で最重要視される。今回はタンクが物理攻撃を防いでくれるので、Aシールドは必要ない。
「アタッカー班はタンクが爪やブレスを防いでいる内に攻撃する。最重要は尻尾だ。尻尾攻撃をする可能性もある。まず尻尾を潰してくれ」
「くれぐれもタンクが引き付けていないときに尻尾に近づかないように」
「さて、細かいことは実践で試す!今から1時間後にここに再集合、その後"old fire dragon"の討伐に向かう!」
一時間の間、僕は今回のネームドについて考えていた。
old fire dragon。直訳は古き炎の竜。
だが、前に倒したドラゴンはancientと付いていた。どちらも古い物を意味するが、oldはどちらかと言うと老いた、となる。つまり老いた炎の竜。
いくらなんでもそれは無いだろうと思いながら遂にそのネームドの支配する9997層に辿り着いた。
「何かが、違う」
僕の隣にいたプレイヤーが呟いた。
一面青い炎に包まれている。火山地帯を模したような地形だ。
だが事前情報では青では無く赤の炎だったという。
真相は定かではないが、何らかの異変が起こったと思って良いだろう。
「こっちだ。付いてきてくれ」
マップを見ながらラベルが呼び掛ける。
火山地帯を抜けた先には、巨大な影があった。
青白い巨体を朧気な炎が包む。まるで幽霊だ。
ゲージの上の名前は__ghost fire dragonだと!?
名前が違う。しかもghost、つまり幽霊。
もしや、oldは本当に老いた、で合っていて死んだから幽霊になったと?
地形の炎が変わっていたのもこれが原因か。
ゴースト系が追加されたことにより物理は効きにくくなった。幸いmgkが居るので問題にはならないが、ゴースト系には決まって幻惑魔法を使う。
幻惑魔法は厄介だ。早急に対策を取らなければ。
「幻惑系結界発動!」
心配はなくなった。あっというまに結界が張られたからである。
結界に気付いたのか竜がこちらに体を向けた。
「何用か人の子よ」
しゃ、喋った……!?




