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リブート・オリジン  作者: とも
転移編:始まりの鐘
14/73

12 宣告

 ギルドホームのビルを出たリクがこちらに近付いてくる。

 俺はリクにナイス、と声を掛けた。


 「ザンジもナイス、引き付けてくれなかったら撃てなかった」

 「いや、こっちもリクの狙撃が無かったら死んでたよ」


 リクは俺を襲ってきた男達の一人の持つナイフを見詰めている。

 

 「どうした?」

 「血が付いている。ザンジ、怪我はしていないか」

 「していない。ナイフでも斬られてはいない」

 「つまり、これは他人の血だ。こいつら、他にも殺してるな」


 血がべったりと付着したナイフを見つめるリク。

 最初に見たときから他にも殺してるとは予想していたが、本当に当たっているとは思わなかった。

 ここで死ぬと、どうなるのか分からないがそれが不明な以上死ぬことは危険だ。

 それは誰にでも言える。

 

 「こいつら、眠ってるな。麻酔弾か」

 「そうだ。殺すとどうなるのか分からない。眠らせば命を奪うことはない」

 

 俺は改めてギルドホームに向き直る。

 帰るぞ、と言う前にリクは歩き始めていた。

 そのままギルドホームに足を進め、入り口を通ろうとする。

 だが、それは遮られた。

 大きな鐘の音。

 __ゴーン、ゴーン

 響き渡る鐘の音に驚いた俺達は無意識にギルドホームの中に入る。

 ギルドホームに入ると同時に鐘の音は止んだ。

 

 「今のは一体なんだ?」

 「今は十時だ。メーラは勿論他の町でもプレイヤーは活発に動く時間帯。何らかの意図が__!?」


 リクが話す事を止めると同時に、次は嵐のような音が鳴り響く。

 反射的に外を見ると、メーラの中央広場を中心に気流が発生している事に気が付いた。

 まるでブラックホール。

 窓が軋んでいる。どうやら吸い込んでいるらしい。


 「ザンジ、踏ん張れ!」

 「リクもな!」

 

 引っ張られる力は強くなり、ついに窓が外れた。

 ギルドの中まで気流が吹き荒れ、俺は必死に耐えた。

 だが、努力虚しく、リクと俺は窓から外に放り出された。

 圧倒的な速度でメーラの中央広場まで到着する。

 そして、広場に落下する。

 周りにも人は多い。ランキングが表示されている所を見ると全員プレイヤーだ。

 恐らく1000人は居る。いや、それ以上だ。

 こんなにもメーラにはプレイヤーが居たのかと驚く内に、思考は遮られる。

 広場からもう一度鐘が鳴ったのだ。

 口々に喋っていたプレイヤー達は、鐘の音が響くと同時に沈黙した。

 鐘の音が終わる。

 終わりか、と思う間もなく次の現象が起こった。

 

 「諸君、この世界は楽しめているだろうか」

 

 機械のような声が響く。一瞬沈黙していたプレイヤー達は、この声で正気に戻り口々に叫びだした。


 「楽しめるか!」

 「仲間が死んだんだぞ!」


 悲観の声を上げる者もいたが中には嬉しく思う輩も居るようだ。

 声はそれを無視して続ける。

 

 「この世界は現実だ。痛みから死まで全てがリアルの世界だ」

 「君達はもう一つの現実に居る」


 俺は響く声の意味を察するのにかなりの時間を要した。

 つまり、コイツはこの世界はゲームでも何でもない一つの現実だと言っているのだ。

 そして、ここでの死が本当の意味での死だと言う意味になる。

 

 「君達には一つの事をしてもらう」

 「それは"創造者の塔"の制覇だ」

 「フェイムに存在する全百万層からなる天涯の塔を極めるのだ」


 百万。

 百万の層の塔。

 それを登り切れと言っているのだ。

 無理だ。絶対に。

 こいつが"天涯の塔"等と言うからには無理な難易度になっているに違いない。

 恐らく、俺ら百万レベル帯では不可能だ。

 それを察したのか次々にブーイングが起こる。

 

 「君達が塔を極めた暁には報酬を授けよう」

 「それは地球への帰還だ」


 クリアすれば、地球に帰れる。

 その意味を理解するのに数分間掛かった。

 百万層であろうと、クリアすれば元の世界に帰れるのだ。

 否、こいつは帰れるからクリアしろと言っている。

 断ることは不可能に近い。

 だが百万……と絶望していた俺の耳に新たな声が響く。


 「1万の倍数フロアは町を設置した。そこを拠点にすると良いだろう」

 「だが町フロアの一フロア前はボスフロアだ。町フロアと町フロアの間はダンジョンになっている」

 「ダンジョンにはテレポート・クリスタルを設置した。触れればランダムで上の層へと飛ばされる」

 「塔の解説は以上だが、注意して欲しい。ここでの死が本当の物なのだと」

 「健闘を祈る」


 声が響き終わり、我先にフェイムへと向かうプレイヤー達。

 勿論、その中には俺達も混ざっていた。

 2045年12月18日。

 それがこの世界の歯車が周り出す最初の日だった。

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