9 目覚め
男性を部屋に運びいれてから早五分。
ポーションも飲まし、もうすぐ完全回復するだろう。
改めて男性の体を見る。
全身に火傷を負っている。痛々しい姿だ。火傷は本来ポーションによる自然回復で治るものだが、今は五分が経過しているのにも関わらず火傷は完全には治っていない。火傷が数分で完治するなんて現実では考えられない事であり、治らないのも仕方がないと自分で納得する。
火傷以外の外傷は無いようで、ゲームでは普通であった骨折や身体欠損等も見られない。
ここで怪我をする事は、モンスターと戦うかpvp、つまりプレイヤー同士の決闘等が無い限り怪我は起こらない。
だが、火傷であることからこの二つでは無く、火災にでも遭ったのだろうか。
どれにしても不幸だったと思う以外に無い。
時計を見れば夜の6時。日付は__12月18日。
ここに来る前は8月の夏休み真っ只中であり、中学の課題に悩ませれていた所だ。最も、このような状況である以上学校の心配をする必要はない。
ここと地球は時間帯がずれているのだろう。
まあ、冬で良かったと思うべきだ。僕、つまりリクはいつもロングコートに身を包んでいた。そして片手剣とライフルを背に吊っていた。その姿は自らと同じ姿で有りながら不思議と頼もしく感じていた。
僕もこのゲームを始めた当初はとても弱く、フィールドに出現する雑魚敵を倒しながらレベルを上げていた。それから二年、レベル百万を越え孤独と呼ばれるまでにソロであることを貫き、今に至る。
改めて二年過ごしたゲーム世界を見ると、なんとも言えない感情が沸き上がってくる。
どうやら感傷に浸っている内に男性は回復を終えたようで、ゆっくりと起き上がっていた。
「助けてくれたのか」
男性の第一声はそれだった。
僕も声を出す。
「見捨てれなかったからな」
「そうか、ありがとう」
「ああ」
両者共に声を出した。
「勿論、プレイヤーだよな」
男性が僕を見ながら言う。
僕は男性の体力ゲージの上のランキング表示を指差しながら言った。
「勿論、だってランキングが出てるだろ」
「そうか、外に出たんだな?」
何故こんな質問を、と思いながら返す。
「ああ、勿論」
それを聞き男性は安堵の表情を見せる。そして、何かを考えるように目を瞑った。
次にその目が開けられた時に発せられたのは、驚愕の事実だった。
「メーラの南エリア、分かるよな」
「そこで大規模な火災が起こった」
メーラは元々東西南北で町が分けられている。
この男性は、その内南で火災が起こったと言うのだ。
当初の心配が当たった。やはり火災で受けた火傷だったのだ。
「俺の所属するギルドのホームはもう消し炭になっているだろう。もう日は完全に消火されているだろうが、恐らく町の大半が焼け野原だ」
「そんなに強かったのか?」
少し前に南エリアを見たときは何も異常が無かったはずだ。そして、この短時間でそこまで広がっている事を考えると、自然発火ではなく人為的な、それもプレイヤーの魔法であろう。
魔法のレベルは、火魔法で起こしたのならファイヤーウォール、つまり炎の壁を作る魔法辺りだろう。それでもこの短時間ではそんなに燃え広がらないだろう。だが、複数なら可能かも知れない。
もし単独であれば灼熱大地か、果ては天空火焔とまでなる。
この二つは、前者ですら500万、後者は二千万にレベルが適正となる。メーラの町にはハイランカーは少ない。つまり、単独とは考えれないのだ。
「なあ、ちょっといいか」
急に声を掛けられる。
「俺はザンジ、タンクだ。すまない、名を教えてくれないか」
いきなり名を教えろと言われ、戸惑うが取り敢えずリクと名乗れば良いだろう。
「リクだ」
「そうか、分かった。リク、すまないがギルドホームを見に行きたい、手伝ってくれ」
どうするか。
着いていけば危険は伴うが、南エリアのギルドホームとやらを見に行っても良いだろう。
「分かった、手伝うよ」




