8 火の町
俺はギルドマスターの部屋から出ると早速レンとイリアに仕事を押し付けた。
「報告書、頼むぞ」
「待った、何故そうなる」
戸惑いを見せるレンを横目に無理矢理押し付ける。
ゲームではいつも俺が厄介事を引き受けていたのだからたまにはこれくらい良いだろう。
俺は休息を取るべく部屋に戻る。
疲れのせいか時々よろけそうになるが、無視して部屋に入る。
部屋に入った俺は早速布団に飛び込んだ。
横になった瞬間疲れがドッと涌き出てくる。
一眠りしようか、と思ったが俺は一つの事を思い出し起き上がった。
それは、ステータスの事だった。
ランキングが表示されるのだからステータスもある筈、と手探りに呼び出そうとしてみる。
手を振ってもダメ、イメージもダメ。
残りは………
そこまで考えて俺は一つ思い出した。
音声入力。
ゲームではステータスを開く時にステータス、と唱えて入力すれば音声に反応してステータスが出現する。
早速ステータスと唱えて見る。
ブゥオン、と機械的な音を出して出現したのは宙に浮く板。
そこには俺、ザンジのステータスがあった。
勿論、スキルもそっくりそのまま。
やがて俺は全てを見終わるともう一度ステータス、と唱えてステータスを閉じた。
視界の左上の体力ゲージを見れば、極僅かに減っていた。
もしかしたら、これは生命力全般を表すのか、俺は思った。
ゲームでは体力と魔力、スタミナ、空腹度のゲージが存在した。
だが今はスタミナは消えている。
減っている所を見るとどうやらスタミナと空腹度は体力に統合されたのだろう。
俺は一通り思考してから仮眠することにした。
俺の眠りは余りにも早く終わった。
ドアを叩かれる音で飛び起き、時計を見ると三十分しか経過していない。
俺はドアを叩かれる音を緊急の用事だと判断しロッカーを開け斧とナイフを担ぎ上げ持ち出した。
ドアを開ければレンがいる。
イリアはどこに行ったのか、と声に出していた。
「……見れば分かる」
そう言うレンの顔は必死だった。
その顔で事態の緊急性を察し俺は階段を降りる。
ギルドホームは驚くほど静かで、何処からかパチパチと物が燃える音が聞こえる。
火事か、と思い外に出てみる。
そこにはあの美しいメーラの町並みは無かった。
一面の炎。
見渡す限り火に包まれた町がそこにあった。
もうすぐここら辺も火に包まれると悟った俺は、レンを連れて逃げ出した。
走り、走り、走り続けた。
いつの間にはぐれたのかレンの姿は無く、俺は町の外れまで来ていた。
火傷の痛みが強くなる。
だが俺は歩き続けた。
そして、どうにか痛みに耐え一軒の家が見えた所で、俺は意識を失った。




