トァザ
『円卓』。
あと数時間後にはこの円卓は戦場となる。
「フィリア」
「んー?」後ろから声をかけられる。振り向くとトァザが居た。「調子はどう? トァザ」
「いつもと変わらないさ。少し気持ちを落ち着かせたくてね」
そういってトァザは全身の技巧の噛み合わせを一つ一つ確かめるように、慣れた動作でストレッチする。
トァザは、一言で言うならまるで猛々しい馬ようだ。
黒い鎧のような筋肉は美しく配置され、皮膚と白髪意外、特に四肢の関節は全て技巧によって形作られている。
肉体は鍛え上げられ洗礼された本物の筋肉と補助脳に繋がれた人工筋肉が複雑に絡み合いながらも調和する。生きる芸術品といって過言ではない。事実、闘技士の完成度は国の豊かさと発展を示す一つの象徴的存在として扱われる。
トァザの肉体はどんな一瞬を切り取ったって美術館に飾られる彫刻よりも美しい。なってったって私が作り上げた最高傑作なのだ。緋眼の双眸は真っ直ぐに『円卓』の中央、闘技場を見据えている。
トァザは充分に全ての筋繊維を慣らした後、私の隣に座る。
「ラバニスの闘技士はどんな奴だろうね」トァザは落ち着いた声音で問う。
「さぁ、ま、どんな相手だろうと私のトァザが負けるわけないわ」
ラザンノーチス連合国はこの星の大陸地図上にある6番目の国。広大な土地に豊かな自然。その中で健やかな発展を続けてきた。
第一国家アリストレア、第二国家セーレム、第三国家アマテラス、第四国家マグナシム、第五国家シグラード、そしてラザンノーチス。後ろには第七国家ユグド、第八国家ラバニス、……この八大国家が『円卓』協議によって定められた現八大国家である。
その他の小さな国は八大国家と協定を結ぶ発展途上国となり、『円卓』では国家単位として認められてはいない。
今回のラバニスは第八国家。『円卓』では、戦争によって国が持つ発展途上国の所有権を、まるでチップのように奪い合いために争うという。
簡単に言えば、強気な外交を始めたのだ。
既に1年前、ラバニスは第七国家ユグドに勝利し、ユグドの管理していた発展途上国の所有権利を勝ち得ている。おそらくここから味を占めて、強気な態度なのだろう。
一方こちら、ラザンノーチス闘技士トァザ。
現在『円卓』の戦績は無敗。過去の歴史300年の間にラザンノーチスは15回の戦争をして、4回の敗北をしている。しかし当代、私とトァザは歴代の単機最大戦力を上回り、5年前に国の代表として『円卓』に立ってからは無敗である。
歴代通算16回目の戦争。私とトァザは数えて4回目になる。
ラザンノーチスが今無敗記録をもって他の八闘士と国家を牽制している中、臆さずに侵略を行うという決断をラバニスは下した。それほどまでに揺るぎ無い自信を持てるほど、ラバニスの闘技士と技巧整備士は優秀なのだろうか。




