ラザンノーチスの技巧士
『円卓』から一週間が経ち。私の生活は幾分落ち着きを取り戻した。
ラバニスの技巧整備士アンダー・アーロンは、私の最終兵装展開は、最高技巧整備士団IDEAイデアメンバーではないため不正であり、『円卓』の条約違反であると指摘した。
しかしその異議申し立てを『円卓』来賓席にて観戦していた連合国の第一国家アリストレア、第三国家アマテラス、第四国家マグナシムの技巧整備士と闘技士、そして総帥はその異議を却下。
ラザンノーチスは明らかにラバニスに武力によって脅かされている状況であったとし、最終兵装を展開した私の判断は特例の英断であり、国家を守る例外的事例として処理した。
……そして、最高技巧整備士団IDEAのメンバーであったアンダー・アーロンは、第七国家ユグドの王女殺害、霊素の不正拘束、死者蹂躙の罪と、何よりその霊素がユグド王女のものであった事実を重く受け止め、資格は即刻剥奪された。
敗戦した以上、ラバニスの技巧整備士は身柄を拘束、最悪斬首というなかで、さらにこれだけの罪を上乗せされてしまえば。もう2度と会うことはないでしょう。
そして、今日。
第六国家ラザンノーチスの宮殿にて、資格剥奪されたアンダー・アーロンの空席を繰り上げて、この私、フィリア・ジャンヌダルクが最高技巧整備士団IDEAのメンバーとなった。
父 《ブラッディ・ジャンヌダルク》と同じ舞台に立ったのだ。
今宵は祝勝会。
滅多に着ないドレスに猫背を矯正されて、息が苦しい。宮の会場では、盛大にパーティーが開かれた。国家単位でのお祝いだ。きっと街の外でも皆浮かれているだろう。
「久しぶりだな。フィリア」ブラッディ・ジャンヌダルク。私の父はにこやかに私を呼び止める。
「えぇ。お父様」
「今日からお前もIDEAのメンバーだ。…蛙の子は蛙ということだな」
「あら、鳶が鷹を生むともいいますわよ」
「十で神童十五で才子二十過ぎればただの人。とも言うぞ」
言葉から滲む圧力。
あまり歓迎されていない事は感じているが、あえてそれを無視する。
「ならば鳶の子は鳶、と、諦めることも大切でしょうね。……しかし、トァザこそが鷹でしょう?」
父は少し悲しそうな顔をして、私を憐れんでいるようだ。そして祝いの席で声を押し殺して告げる。
「本当は、お前がこの舞台に立つことを反対している。お前が鷹を生み出す鳶だという事は感じていたんだ」
真剣な顔になり、父は私の肩に手を置き、諭すように言う。私はその手を取り、握り返す。
「大丈夫よ、お父様。……それと、私が説得されて納得したことなんてないでしょう?」
そう言って私は父を真っ直ぐに見つめ返す。
『円卓』はまだまだ混迷の中にある。激化してゆく戦争の中でも、何も問題はない。
……私は最高技巧整備士団IDEAのメンバー。フィリア・ジャンヌダルク。女性。第六国家ラザンノーチスを代表する闘技士 《トァザ》 の専属技師だ――
―終―




