ギルドはどこだ
「モエルくん、私たちは、このパーティは、決して素晴らしいパーティではないんだよー」
それは異様に起伏が少なく、平坦な声だった。
「メンバーも今二人、あなたを入れて三人。『たったの』三人。お金にだって困っていることは、すでにわかっていただけたと思うけれど。あなたを入れるにしても、食料が少ないし。ちゃんと言っておくわ。この町でなら、大型ギルドはいくつもある。面倒見がいいところもあるよ―――ちゃんと探せばね」
俺が聞く前に、ミナモと呼ばれた昼寝少女は、ぺらぺらと喋りまくった。
おれが旅に同行してはいけない理由とやらを。
声が平坦だったが、彼女の視線も、感情が薄かった。
「ミナモ!」
俺はうろたえる―――と言うほどではないが、やや困った。
「俺は―――」
何とも言い難い気分になる。
ぽかん―――と、まあしていたのだろう。
突然現れた少女にまだ対応しきれてないところはある。
だから先のことはミキが進めた。
「黙ってなさいあんた―――ああ、モエル、ちょっと待ってね、こいつはいつも楽することばかり考えるの」
ミキが面白くもない、どうしようかという表情をする。
「楽をする?違うよ、状況を踏まえているんだ。旅をするにも、まずは安全だよ。こんな、装備もろくにない、旅と言うよりも、ただ移動しているだけの二人にシロウトを一人加えて、それで一体どうするつもりだい」
む。
シロウトと来たか。
「―――あたしは馬車で移動しているだけかもしれないわ、けれどあなたは寝ているだけでしょう?」
「食費を抑えるようにって言いだしたのはミキの方で………」
「―――それは!」
二人は、俺の方を見る。
ええと………。
「………あのう」
「見せもんじゃないわよ!」
そう怒鳴られたので、俺は一人で街を歩いている。
………だったらわざわざ俺の前でけんかをしなくてもいいのに。
しかし、あのミナモと言う少女………。
彼女の言うように、この町をもう少し見てみる必要はあるかもしれない。
「ギルドがどうとか言っていたな………」
ギルド。
元は中世のころから存在する商工業者の組合のことであるが、なんと心沸く響きか。
なんか、凄い能力者とか、勇者いるのかな………。
「オイ聞いたか!ドグリーネが出たって」
「あー、もうそんな季節かよ」
「ああ、今回は三人らしいぜ、こっぴどくやられたって噂だ」
「それはスインド?」
「いんや、リグリグ」
街中では、何やらよくわからない会話をする町人がいる。
専門用語か何か、まったくわからないが、そのうちこの世界の事情も呑み込めるだろう。
そう信じるしかない。
カバンすら持っていない、身一つの一文無しだが………行くアテはある。
ギルドはどこだろう。
「なぁに、モンスターの徘徊する森の中じゃないし、さしあたって、緊急な危険はないだろう」
俺は火曜日燃絵流ではなく、この世界では『モエル』として生きて、何事かを成し遂げてみよう。
ええと、まずギルド、ギルド。
「地図とかないかな………カンバンに書いてあると助かるんだが」
『二ホン』にいるのと同じ感覚で、俺は歩いていく。
この世界を。