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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

夜は明けぬ

夜の舞踏

作者: 護守 紫

長い短編を書いて見たいと思い執筆しました。

かき始めると終わらないもので、眠い眠い。

誤字訂正、教えていただけたら幸いです。

「酔ってしまったの。」


今日も王都は月明かりの綺麗な夜。

その中にひときわ目立つ黒髪をもった齢十六の少女。

目はとろんとして、頬は朱に染まっている。


「すぐそこの大通りまで手を貸していただけませんか。」


月明かりに生える青白い手を伸ばし、男に甘える。

男は少女同様、少し酔っているのだろうか。

無精髭が印象的の顔は真っ赤だ。


「そうだな、お前ごときうら若き娘。

夜道はあぶなかろう。

最近は物騒だと聞く。

そこの大通りまでとは言わずとも儂の家まで来るといい。

介抱してやろうぞ。」

「あら…嬉しいわ。」


そう言って微笑む様は夜の妖精。

男は少女の魅力に取り憑かれる。

早足で少女に近寄り、腰と肩をだく。

ほんのり香るバラの匂いに、舌なめずりをした。


「お前、名は?」

「名乗らぬ方が、貴方の心に残れますでしょう?」


口元をちょこんとあげ見つめる少女に、がははと声をあげて笑う男。

今が深夜だと思われぬ笑いだ。


「では何と呼ぼう。

呼び名が無いと大方不便だ。」

「ルラで如何でしょう。」

「ルラ、不思議なアクセントだな。」

「私の愛称ですわ。」


愛称を許すなど、何と愚かしい娘か。

男はそう思う。

何と言っても愛称は真名に値するからである。

真名は人間を縛る鎖。

真名を呼ぶものに逆らえなくなってしまうものだから、普通は誰にも教えるはずは無い。


酔いとは怖いものだ。


そう思いほくそ笑む。

この少女を如何にするも、自分次第。

美しい娘だ。

妾にするも良い。


「ルラ。」

「はい…。」


男を見上げる少女の黒い目。

どよんと曇り、真名に縛られた如く身体を男に寄せる。


「俺のものになれ。」


一生可愛がってやろう。

…。







そう言ったつもりだった。

ルラを連れ込んだ路地裏。

鈍く痛む胸。


「ファーレス子爵。御機嫌よう。」


痛む胸を抑えると、どくどくと命の滴がこぼれ落ちる感覚。


「ああ、ああ…!!」


男の血がつかないように、男が手を伸ばす先に立つ少女の笑みを見てしまったと確信する。

目が霞、息ができないと喉をかきむしる。


笑う少女の美しき様。

《夜の舞姫》

その名が浮かんだ時にはもう遅し。

命の火は消えた。


………………………………




「ハヴィス姉様!」


孤児院の朝は早い。

ハーヴェストが布団を干していると、弟分のカームがやってくる。


もちろん、ハーヴェストと言う名もカームと言う名も真名では無い。

孤児院の子どもは、本人でしかその名を知らないからだ。

呼び合う名は、所謂通り名だ。


「あら、カーム。

今日はお早いのね。」

「今日はハヴィス姉様を手伝うって約束したからね。

この布団を干せばいいかな?」

「ええ、届かなくて。

助かるわ、いつの間にかでかくなっちゃってね。」


一つしか年の違わない二人だが、身長差は歴然だ。


「そう言えば聞いた?

また寄付金だって。」

「黒服の?」

「そ。継母さんが言ってた。

玄関に立って居た男の人が。」

「そう。」

「本当最近多いよな。」


毎月初めの日にお金の入った袋を届けに来る黒服の男。

金額はまちまちだが、最近になって金額が増えてきたのか月に二度、三度のペースでやってくる。

カームは怪しいと睨むが、経営困難だった孤児院が切り盛りできるようになったのは彼のおかげだ。


「ハヴィス姉様?」

「何かしら?」

「ぼーっとしてたけど大丈夫?」

「え、ええ。」


真っ白いシーツを干し終わると、午前中の仕事はおしまい。

人数の多い孤児院だからこそできる当番制はなんとも便利だ。


「ハヴィス!継母さんがお呼びよ!」

「はあい。」


お手伝いのキャレアに礼を言い、急いで二階の書庫へ行く。

孤児院の子は誰もここに来ないと、継母さんはいつもここにいるのだ。


「ハーヴェスト。」

「はい継母さん。」

「聞きたいことがあってね。」

「レオン様のことでしょうか。」

「…察しの通りだよ。」


はあと大きくため息を吐く。

レオン•カームレイズ

ハーヴェストに婚約を迫っている相手だ。


「悪くない縁談だ。

何が嫌なんだい、年頃の娘にも人気の好青年じゃ無いか。」

「私はあの人が怖いです。」


その言葉に目を見張る。

顔良し頭よし家柄よし、オプションで紳士とくれば、なびかない女などいないと思ったのに。


「継母さんが私に早くここを出て行ってもらいたいのはわかっております。」

「悪い意味じゃ無いよ。

あんたは綺麗だし容量もいい。

貴族の仲間入りをしてもいい人材だよ。

幸せになってもらいたいんだよ。」

「私は今のままでも十分幸せです。

でも、そろそろ自立も考えてるんですよ。」

「…何をするきだい?」

「私、明後日ここを出ます。」


いきなりの話に、立ち上がる継母。

じっとハーヴェストを見つめ、諦めたように椅子に着く。


「決意は固いんだね。」

「行く当てもありますし。」

「じゃあ、お礼を言わなきゃね。」


ハーヴェストを止めることはできないと踏んだ継母は、書庫の棚から大きい袋を取り出した。

金属のこすれ合う音が聞こえる。


「どんな仕事かわからないけど、これはお前のものだろう。」

「…いつから?」

「最初から、私はお前の母だからね。」


そう言って、中に入った金貨を渡す。

これがあれば、一生一人で働かないで生きていけるお金だ。


「この不安定な世の中。

出処不明のお金なんて幾百万とある。

ありがとうね、みんなを救ってくれて。

帰ってきてもいいんだからね。」


優しい笑顔でそう言う継母にハーヴェストも微笑んだ。





………………………………



出て行くことは誰にも言わないでと言ったからか、いつもと変わらない朝が来た。

明日のこの時間には、私はここにいないのだ。

そう思うと悲しい。


でも仕事上、ここに長くいれないのもわかって居た。

もし私の正体がばれた時に、この孤児院が真っ先に潰される。

それだけは避けたかった。


元は親が殺されてから入った暗殺者組織である。

最初は親の仇と思って居たが、偶然親をよく知る継母さんとであって孤児院にはいった。

経営困難だと知り、親の仇をうってからもやめられなくなった。

今ではここいらの暗殺者組織のトップ10にはいる凄腕だ。


「カーム、いる?」

「どうしたの。」


一番気がかりな弟分。

私が出て行くと、必然的に長男だ。

成人の十六まで一年あるが、荷が重そうで心配になる。」


「もしかして、レオン•カームレイズの縁談受けるの?」


突拍子のない言葉に、ハーヴェストは笑う。

そんなはずあるわけないのに。


「そんなことはしないわよ。」

「じゃあ、どこにもいかないよね?」


いい年して見上げてくるカームにちょっとだけ迷うが、頷く。

嘘を言うのは、慣れているのだから。


「おれ、姉様が好きだよ。

一生一緒にいたい。

一年待ってよ、俺、結婚申し込む。」


向けられているのは兄弟間の親愛だと思って居たハーヴェスト。

真っ赤になった所で、抱きしめてくる。


「ハヴィス。」


耳元で囁くカームの声は知らない男のものだった。











もんもんとした気分の中、次の日を迎える。

仕事は身辺整理のために一週間は入っていない。

まだ日も出てない朝。

荷物をまとめ、十数年お世話になった家に別れを告げる。

カームにはやっぱり、さようならを言うべきだったと後悔してももう遅い。

ハーヴェストは孤児院を名残惜しげに後にした。



この先何度後悔した、孤児院との。

仲間との一生の別れだった。




………………………………




「え?」


聞き返したのも無理は無い。

書いていた書類にインクを落としてしまう小さなミスをすることなんて今までなかったのに。


しかしハーヴェストはそんなことを気にする余裕もなく馬車を走らせた。


「マネマ孤児院へ!」


そう叫んで、目的地へ着くやいなや、お釣りなどもらわず金貨を投げ捨てた。


「嘘。」


もう、何もかも終わった後だった。

あるのは黒がかった燃えかすのみ。

ハーヴェストが去って一週間。


「ここの孤児院の出身のものです!

皆は。皆はどこですか!?」


叫んだ所で変わらぬ横たわった遺体。

自分に恨みのあるものの犯行か。

いや、皆消したはずだ。

生き残りや目撃者もいない。

これは断言できる。

ならば暗殺者組織か。

いや。私はもうこことは縁を切ったんだ。

だとすると誰が……。


考えれば考えるほどに混乱して行く頭。


継母さん。

カーム。

キャレア。

ベティー。

シオラム。

まだ、赤子まで居たのに。


「みんな食堂に避難したらしい。

火の手がまわり外へ逃げられなかったんだろう。

可哀想にな、誰がやったんだろう。」


遺体が焼け焦げた木の間からどんどん出される。

ハーヴェストには誰が誰だかもうわからなかった。


「誰が…やった?」


焼け焦げた遺体を見ても、私は泣けなかった。

遺体なんて、それこそ毎日見ているのだから。

私はここを出た身。

今は、暗殺者組織の一員だ。



そう納得しないと、私の心は壊れそうだった。






………………………………






「ハヴィちゃん、今日位休んでもいいのよ。」

「いいえ。これが私の仕事ですもの。

今働かないと。

心配をありがと。」


「ハーヴェストさん、ボスが呼んでいます。」

「すぐ。」


〈ハヴィス!継母さんがお呼びよ。〉


「…はい…すぐに。」


もうすぐに忘れられる。

「大丈夫なんですかい。

孤児院燃えたそうじゃないですか。」

「過ぎたことよ。」


そう言って過ぎ去る。

これで、二十八人目。


ボスからもこの話されたら、泣いてみようか。





「で、どうなんだ。」

「それ聞きます?」

「君の働きには将来を期待しているんだよ。

これ位でどうじてもらったら困るんだが。

この暗殺者組織もこの地域では一番大きいもの。

期待しておる、夜の舞姫。」

「はい…。」


また今日も、私は人を殺す。





「ねえ旦那さん。」


そう言って喉元に刃物を突き立てる。


私の罠にかからない貴族なんていない。

いないんだから。


血に染まるのはいつも、短剣のみ。

誰かを殺して行くことで、私の何かが変わるはずはない。


そんなある日。

ここへ来てから一ヶ月ほど過ぎた頃だ。


「レオン•カームレイズの暗殺?」

「ああ。もう何人か失敗しているんだ。

受けてくれるね。」

「もし私が失敗したら?」


キラリと光るボスの目。

私がこの場で質問をするとは思っていなかったか。


「何故聞く。」

「いえ。」


私はその場を後にした。




………………………………





私が驚いたのは、屋敷の大きさだった。

カームレイズ邸。

下見に来たはいいがその大きさに驚く。


「ハーヴェスト嬢?」

「!?」

「ああ、驚かせるつもりはなかったのですが、覚えておいででしょうか。

レオン•カームレイズです。」

「…お久しぶりです。」


いつから居たのかわからない。

私が背後を取られるなんて。


「孤児院の火事で…亡くなったかと思っておりました。

もう会えないかと…。」

「もう死んだものには会えません。」

「そうだね。無神経だった。」


悲しそうに目を伏せる。

なんだか嘘くさく、ハーヴェストはさっさと立ち去ろうとした。


「待って、君は行く当てがあるのかい?

私の屋敷に来ないか。歓迎するよ。」

「気になさらないでください。

私には居場所があるのですから。」


肩にかかる手を払い、歩き出す。

今日は偵察のためだったのだ。

まさか本人に会うとは思わなかったが、知人であることは吉にも凶にもなる。

どう、やろうか。


「居場所?」

「ほかに何か?」

「居場所というのは…?」

「ちょうど火事の前日あたりに、孤児院を出て居たんです。」


不思議そうな顔をするレオン。

孤児院だけが自分の居場所だけではない。

私に限ってはそうだった。

だから私が助かったのだから。


「そう、居場所があるのか。」

「ご心配は無用でございます。」


一礼をし、背を向ける。


「君は、私が君に婚約を申し込んだことをお忘れか。」

「忘れてはおりません。

しかし、私は平民も平民、孤児院出身でございます。

お戯れはほどほどにしたほうがよいかと思います。」

「戯れねぇ。」

「なんでしょう。」


くくくとさっきの表情とは打って変わっておもしろそうに笑う。


「…なんでしょう?」

「十年とちょっと前に断絶したローズマリー家。

聞いたことはないかい?」

「…ああ、現王弟陛下のお家様でしょうか。」

「よく知っておられる。」


じっと見つめ合ったのは一瞬。

二人は別々に歩き出した。



「追え。」


その彼の言葉に気づかなかったのが、悔やまれる。





………………………………



正式にレオンの案件を断ろうと思って居た矢先、それは起こった。


「ここだ!

抵抗するものは撃ち殺して構わん。

孤児院放火の罪で暗殺者組織並びに、誘拐罪で極刑に処す!!!」


何が起こったのかわからない。

あの制服を見てとるに、王国騎士団だろう。

目の前で起こる乱闘。

私の肩を笑いながらつかむレオン•カームレイズ。


「どうして。」


皆抵抗し、銃声の音に悲鳴がかき消える。


ボスが叫ぶ。

はめやがったな!?


私は何もしていない。

それにボスは孤児院を焼くような、そんな人じゃない。

自分も孤児院出身だと笑って言っていた。

ギロリと睨むボスもいつしか倒れ、残ったのは王国兵士のみ。


「離して!」

「ローズマリー嬢、お怪我はございませんか?」

「全部、貴方が仕組んだことなの?

レオン•カームレイズ!」


叫ぶハーヴェストを黙らせるように後ろから強い力で抱きしめる。

顎に手を添え、後ろから彼女の顔を覗き込むレオン。


「私はただ密告しただけですよ。

暗殺者組織が最近放火にはまってしまったらしいと。

さあ、私の家で保護して差し上げましょう。

貴方の親戚である王家もとても心配しておりました。」


そういいつつも、まるで腕の中に一生閉じ込めてしまう勢いで羽交い締めにする。


「おねが…い。離して…。」

「悲劇のお姫様が、助けた騎士の花嫁となる。

美しい王道の物語ですよ。」

「いや、嫌よ!」


死体の事後処理で忙しい騎士らには気づかれなかったのが幸いだった。

力づくに振り向かせた私に濃厚な口づけをしたレオンは、気味が悪いほどの妖艶さだった。

あまりの強烈さに気を失ってしまったのは苦し紛れのご愛嬌としておこうか。




………………………………



ここはカームレイズ邸。

使用人の噂が絶えない最上階の小部屋。

中には、とても美しい少女が閉じ込められているらしい。


しかしその姿を見たものは、二度とここで働けなくなると言う。


ほら、これで三人目。

噂では屋敷の主に…。


門を潜り抜けるのは、目を潰された庭師。

もう何もできないで、飢え死にするのだろう。



暗殺者組織を壊滅させてからと言うものの、レオンは変わってしまった。

毎夜、屋敷の例の小部屋に行き、朝に戻ってくる。

たまに傷を負いながらも、笑って仕事に着く。






ある日。

レオンが一人、赤ん坊を抱いてきた。

もちろんあの、小部屋から。










別視線…

レオン視線とかどうでしょうか?

閲覧いただけるなら、書きたいですね。

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