ジム
私は誠一郎が帰ると同時に家を出た。
今日はジムの体験入学だからだ。ジムのあっている時間は十一時まで。
余裕を持って早めに出た。
誠一郎に教わった通り、駐輪場へいくと、自転車を出した。
自転車で通える位置にあるジム、便利である。
軽い足取りで自転車をこぎ始めたのだが、身体が重くて思うように進まない。
「なんでここまで太れるわけ?」
とぶつくさ呟きながら自転車を押して歩いた。
歩くと距離を感じる。携帯を見て時間を確認する。九時十五分だ。
私は再び自転車に乗ると必死でこぎ始めた。
「こりゃあ、これだけで運動になるな」
自転車をこぎ続けた。
ジムに到着する。
開けるとむわっと汗の臭いが充満していた。
「こんばんは。予約お願いしていた倉田……じゃなかった、本宮です」
受け付けにそう言うと、受け付けから
「ご案内します」
と言って一人の老人――老人の割には体つきのよい男が出てきた。
「今日はまず、設備を見てもらって、ストレッチと腹筋背筋だけしてみましょうか」
と言って施設内の案内を始めてくれた。
よくテレビで見かけるような胸筋を鍛える器具や、その他にもいろいろあった。
「遅れましたが、私はここで初心者を担当しています、宮本と申します」
「はぁ……」
ただただ圧倒されるだけの私に、宮本さんは
「大丈夫ですよ。すぐに慣れます」
と笑顔を返してくれた。
「私、痩せること、できるでしょうか?」
私は思わず口にしていた。
「痩せたい……それが目標ですか?」
「はい……」
しばし沈黙があった。
私、何かいけないこと言ったかな?内心汗だくになる。
「いいんじゃないですか?痩せられるかどうかは本宮さんの頑張りにかかっていますが、目標があるとないとでは全く違いますからね」
私はホッとした。目標……そうだ、私には目標があるんだった!
この男を痩せさせていい会社に入社してやる!
それが私の目標だ。
ストレッチが始まる。だが、私のはストレッチと言えないほどぎこちないものだった。身体が固い。そしてお腹がすべてを邪魔する。
それでも宮本さんの補助を受けながらなんとかこなした。
腹筋は一度でダウン、背筋はいうまでもなく。
宮本さんは親しみやすい笑顔で、
「最初はみんなこんなもんですわ」
と笑った。
そして、興味のあったウォーキングマシンで歩くことに。
春先なのに汗だくになった私は、ウォーキングマシンを舐めていた。
徐々にペースが上がっていく。ジョギングくらいの速度はあるだろう。
足をもつれさせて顔から派手に転んだ。
宮本さんが
「大丈夫ですか?」
と聞いてくる。
「いったーい!なにこれ、マジ難しいんですけどッ」
思わずしゃべり方が女の子に戻っていた。
宮本さんは若干びっくりしたようだったが、さすが、年の功というものなのか、そこはあえてスルーしてくれた。
危ない危ない……
もう少し気をつけないと。
今日は体験入学ということで、軽い運動のみということだったのだが、汗だくで酷かった。
宮本さんがシャワールームの場所を教えてくれたが、どうせ帰りの自転車で汗をかくと思ったので、今日は使用しなかった。
帰り際、受け付けで正式な入会届けと入会金を払った。
宮本さんが、
「これでいつ来ても設備は使い放題ですよ」
と言ってくれた。
ありがたいことだった。
昨日決めた通り、毎日行こう!私の胸は燃えていた。
帰りの自転車でコンビニによって、そうけんぴ茶とポカラスエットを購入した。
ポカラスエットはその場で飲み干すと、ペットボトルをゴミ箱にいれ、アパートまで自転車でダッシュした。
疲れた。よく眠れることだろう。