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きちんとした生活

九時、帰宅。

俺はきちんと門限を守るタイプなんだよな。


帰るとリビングから母が

「沙織、ご飯出来てるから早めに食べてしまって」

と急かす。

「はい!わかりました!」

俺はそう言うと二階にかけ上がった。

パーカーと七分丈ズボンに着替えると、なんとなく履いたこのズボン。丈がつんつるてんじゃないか!と思ったが、サイズもおかしくないし、そういえば会社の女子もこういうの履いてたなと思い直してそのまま階下に降りていった。


夕飯は白身の魚をやいたものと、サラダにスープだった。


絶対足りないよ……、と重いながら食べると意外に腹一杯になった。


「ごちそうさま」と言って自分の食器をシンクまで持っていく。

するとそれを見た母が驚いた顔をする。


「沙織が自分からお皿をさげるなんて!」


母のおしゃべりは止まらない。

「昨日の夕飯のお手伝いといい、学校でなにかあったの?」

と、にこやかに聞いてくる。

「べ、別に、そろそろちゃんとしなきゃいけないかなって思ったんです」

「です?」


しまった!またやってしまった!

俺はびくびくしながら

「じゃあ、俺、勉強するから」

と言って二階にあがった。


もうやだ、こんな息苦しい生活は止めてしまいたい。自由気ままだったぼっちに帰りたい。俺はそう、強く思った。


勉強と言って上がってきたが、実際に勉強するわけじゃない。だって、まずどこを習っているのかすら知らないから。

一応数学のノートを開いてみる。

懐かしいな。俺もこんなのよく解いたよ……

今となってはもうちんぷんかんぷんだけどな。


沙織から渡されたプリ帳をだして、一から友達の名前を暗記する。しかし、最近のプリクラとやらは沙織の言う「盛れる写真」だそうで、実際とイメージが違うかも、と言われた。つまりは詐欺写真というわけだ。

明日は化粧講座を開くと言っていたが、大丈夫か、俺……

化粧してる女の子は苦手だ。できれば素っぴんでいてほしい。そう思うのは童貞の意地か。

とにかく明日は気合い入れていかないと、沙織にしかられるからな。そう思いつつ風呂に入った。


まだ、慣れない、この身体。そしてついやってしまうのが胸揉み。これだけは止められない。

沙織はサイズ的には小さい方だが、美乳だ。

手のひらサイズ。俺のような童貞には優しいサイズである。

揉んでない、洗っているんだ、揉んでない。

断じて俺は揉んでない。

そう自分に言い聞かせると潔く「ぐへ、ぐへへへ……」と、胸を堪能した。


そういえば、沙織はたまってきたらどうするのだろう?女の子だから、対処の仕方がわからないよね。明日教えてあげよう。


俺は親切心からそう思った。


髪を洗う。シャンプーは二つあって、片方が可愛らしい絵のシャンプーだった。おそらくこれが沙織のシャンプーだろう。

手に取り洗い始める。沙織の髪は肩下まであるロングヘアーなので、洗うのも一苦労だった。

コンディショナーやトリートメントなどがあったが、いまいちよくわからなかったので、シャンプーのみで風呂を上がった。


風呂からあがると十一時だった。メールと、ラインの着信が鳴り続けている。俺はどうしたらいいのかわからずに困り果て、結局沙織に電話で聞いた。

「あぁー、それね。寝落ちしてたってことにすればいいから放置していいよ」

「でも、やたら鳴るんです」

「音量を切っちゃえばいいよ」

「音量のボタンはどこにあるのかな?」

「メニュー、設定、音とサウンド、で切れるはず」

「わかった。やってみます」そう言って電話を切ると、

「メニュー、メニュー、設定、音とサウンド……っと、出来た!」

その頃にはもう、十二時を回っていた。

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