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勢いよく胸元に何かがぶつかった衝撃で、思わず尻餅をついた。
「痛たた・・・・・」
「ちょっと、大丈夫?」
まどかが心配そうに声をかけてくる。
「私は大丈夫。ぶつかった子は?」
「明里と同じように尻餅ついてるわよ?」
促されるように、ぶつかった相手を見た。
「いきなり、立ち止まるなんて危ないですわよ
!!」
日本人では珍しいブロンドで少しカールがかかった髪をもち、目に涙を浮かべた天使がこちらを見据えていた。
「あの?聞いていますの?」
「へっ?う、うん。ごめん、怪我はない?」
胸元にぶつかったぽかったので、慌てて天使の額に手で触れてみた。
「怪我はないみたいだね。ただ、天使の額が少し赤くなってるから、念の為、氷で冷やしとこうか。」
「て、天使?」
「うん。だって、天使みたいに可愛いし。」
あれ?なんか、天使の顔色が赤いな。熱でもあるのかな?・・・・・・・あれ?この天使、もしかして?
「明里、あんた・・・・・」
まどかが呆れた顔でこちらを見ている。
「へっ?まさか、また心の声が漏れてた?」
「それにも、呆れてるけと・・・・・誤解は早めに解いた方が良いわね。」
そう言うと、まどかは私を横に押しやりながら、天使に近づいた。
「私、遠まわしには言わない主義なの。だから、はっきり言うわね。」
「な、なんですの?」
戸惑った顔で天使は、まどかを見上げるように問い掛けた。
「この子、女よ。」
「な、なんですって!!」
「はい、女です。一年A組の中島 明里です。ぶつかってゴメン。この、格好は文化祭の衣装だから着てるだけで・・・・・。勘違いさせたみたいだね?」
「い、いえ、こちらこそ。勘違いを。私、一年D組の西園寺 ヘレンと申します。母がイギリス人ですの。」
互いに頭を下げて謝罪をした後、顔を見合わせ、私や天使はどちらともなく笑い出した。
「こっちも、突然方向転換したけと、ヘレンも走ってたわね?急いでたの?」
様子が落ち着いた所で、まどかが問い掛けた。
「じ、実は・・・・どうしても拝聴したい出し物がありまして・・『SUTA-S』のミニライブに行く所で」
顔を真っ赤にしながら天使は答えた。
「ライブ?そういえば、やるって聞いたな。」
「ええ、でも先着順でしたので、諦めるしかありませんわね。」
諦めた顔で笑う天使に、私は胸が打たれた。
「諦めるには、まだ早いよ!!」
「で、でも」
「なぜなら、伝家の宝刀『チケット』を私が持っているからね。ちょうど3人分」
ポケットからおもむろに取り出して天使にみせた。
「「な、なんですって!!」」
二度目の驚きの声が一階の廊下に響き渡った。




