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ここでは、エセ関西弁がでてきます。
苦手な方は、読まない事をお薦めします。
夏祭りが終わって、一週間後、中学校硬式野球の全国大会が始まった。
初戦が日曜日だったため、私は、お父さんの車に乗せてもらって試合観戦をしにきた。
「お父さん。先に行ってて!!ここの自販機でスポーツドリンク買って行くから。」
「あれ?準備してなかったかな?」
「うん。冷蔵庫にもなかった。コンビニに寄ってもらう事すっかり忘れてて・・・・」
「お父さんも一緒にいるよ。」
「大丈夫!!グラウンドとは近いし、何よりお父さんにはいい席を取ってもらわないと!!」
私は、胸の辺りで手を握り締めながら説得した。全国大会の試合でなおかつ日曜日ともなれば、いつも以上に試合を観に来る家族が多い。特に、三年生最後の試合が全国大会ともなれば、子供の勇姿を記録や記憶に残そうとする家族がいるため、ベストポジションで試合を観戦するには行動が物をいうのだ。
「そうかい?それじゃあ、先に行ってるよ。」
「うん!!すぐ追いつくから!!」
お父さんを見送り、すぐさま自販機にお金を投入する。
(ペットボトル3本ぐらいでいいかな?・・・・・・やっぱり余分に2本買っとこう)
目的の物を購入し、グラウンドに向かおうとしたときである。右側から突然出てきた人にぶつかってしまい、その衝撃でペットボトルが落ちてしまった。
「すまん!!けがしてない?」
訛りが入った声に声を掛けられる。
「大丈夫です。ペットボトルが落ちただけですから。」
「ほんまや!!あ~少しへこんでるな。」
落ちていたペットボトルを眉をへの字にしながら相手が拾い上げた。
「大丈夫ですよ。へこんでるだけで中身は無事みたいですから。」
ペットボトルを受け取りながら、ぶつかった相手の顔を確認する。
小麦色に灼けた肌に、野球帽を被り、愛嬌のある顔が特徴的だった。
「それに、急いでいたってことは、もうすぐ試合なんでしょう?ペットボトルを拾ってくれただけでも助かりました。ありがとうございます。」
「ほんまに大丈夫か?なんか、心配やねんけど・・・」
どうやら、またペットボトルを落としそうで心配してくれてるらしい。
「大丈夫ですよ。そこの第一グラウンドで試合ですから。」
「第一?なら、途中まで持つわ。俺のチームもそこで試合やねん。もしかして、青春学園の人?」
断りの声も聞かず、持っていたペットボトルを取られてしまった。
「はい。兄が試合にでる予定なので。」
「ちなみに、自分何年生?」
「えっと、一年生です。」
「俺もや。・・・・なんでその敬語やめてくれると嬉しいんやけど?」
野球少年に困った顔でお願いされる。
「えっと・・・・・これでいい?」
「うん。同い年で会話するなら、それが自然やな。」
嬉しそうな顔が眩しい。これは、成長したらモテそうだ。
「ここでいいよ。ありがとう。」
観戦席の出入り口付近まで来た所で、改めてお礼をいう。
「どういたしまして。ほな、俺はこれで。・・・・お互い頑張ろうな!!」
別れ際の際に、わざわざ振り返って挨拶をしてくれた。
しかし、その相手が試合途中でマウンドに上がるとは、私はこの時点で想像がつかなかったのである。




