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「あれ?お兄ちゃんも来てたの?」
前日に聞いた時は、行かない口振りだった為思わず聞いてしまった。
「行かない気満々だったんだが、コイツが無理矢理誘ってきてな。」
お兄ちゃんは、諦めた顔で隣にいる人物を指差した。
指差を指された人物は、見た目はホストだが、身なりはYシャツに綿パンという格好で、じっくり私を観察していた。
「な、なんです「兄貴と似てないな。」
おい、会って早々のセリフがそれか。
「妹は、母親似なんだよ。」
「そうなのか?それにしては、地味だな。」
「地味か?この格好が?目立ってるだろ?」
(お兄ちゃん、フォローしてるのか、してないのか、ハッキリしろ。)
「色の構成が暗いんだよ。俺様なら、もっとマシなコーディネートをするぜ。」
「自分のこと、『俺様』って言う人本当にいるんだ。」
(ん?なんで、皆静まり返ってんの?)
周りが静まった状況が理解できないので辺りを見渡した。
「な、中島さん!!本音がでてる!!」
高木さんが小声で焦ったように耳打ちしてきた。
(なっ!?心の声がでてしまうほどに衝撃的だったのか!!・・・・・・・・あれ?俺様、笑ってる?しかも、お腹抱えてないか?)
「ぜ、前言撤回。やっぱり、お前と妹ソックリだ。リアクションが特に・・・・・笑い過ぎて腹が痛て~!!」
「当然。兄妹だからな!!」
俺様の様子をみながらお兄ちゃんは開き直ったように胸を張ってそんな事を言っていると、射的屋のおじさんが声を掛けてきた。
「話が盛り上がってるとこ悪いんだけど、射的はするのかい?君達の後ろに待っている人達がいるんだが。」
「そうだった。中島先輩からもコイツに一言言って下さい。ぬいぐるみを取れるなら、夜中の道を歩いて帰ると言ってるんです。」
立川少年が、ここぞとばかりにお兄ちゃんに訴えてくる。
「明里。お兄ちゃんが取ってやるから、それは止めろ。・・・・・・・・どれだ?」
「あそこにある、柴犬っぽいぬいぐるみなんだけど。」
真面目な顔で聞いてきたため、正直にお願いすることにしようとしたが、お兄ちゃんの隣で話を聞いていた俺様が割り込んできた。
「中島妹。それが、欲しいのか?」
「は、はい」
「そうか、なら俺様が取ってやる。」
「龍一、取れるのか?」
お兄ちゃんが、真面目な顔から茶化すような顔で俺様に声をかける。
「当たり前だろ?俺様を誰だと思ってやがる。」
「高柳 龍一様だろ?」
「分かってるじゃねーか。」
射的屋のおじさんに射的用の鉄砲を受け取る俺様の様子を見ながらお兄ちゃんに話をかけてみた。
「取れないなら、無理しなくていいから。・・・・歩いて帰るって言ってごめんなさい。」
「分かっているならいいさ。それと、龍一はぬいぐるみを取るぞ。」
「本当?」
「あぁ、・・・・・ほらな?」
「早っ!!」
一発でぬいぐるみを仕留めて、びっくりしている私に俺様が近寄ってきた。
「中島妹、これで良かったか?」
ぬいぐるみを渡しながら、俺様は確認するように聞いてきた。
「あ、ありがとうございます!!」
ぬいぐるみを受け取って、触り心地を確かめるように抱きしめる。
「どういたしまして。そんな風に喜んだ顔を見ると取ったかいがあったな。」
まんざらでもない顔でいいながら、俺様は私の頭を撫でた。
「龍一!?」
「いいだろ?兄妹がいないんだから、それぐらい。」
「まぁ、明里が嫌がってなければいいけど。それより、屋台巡りするんだろ?」
「ああ、俺様の目的はそれだからな。じゃあな、中島妹。気をつけて帰れよ。」
そういいながら、お兄ちゃんと俺様は颯爽と人ごみの中に消えて行った。
(そういえば、俺様を見たときから既視感が消えないんだけど。なんでだろう?)




