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「気にしないでいいよ。高木さんと戯れてたしね。
さては、羨ましいのか、委員長?私の目が黒いうちは、高木さんには触れさせないよ。」
そんな台詞をいいながら、高木さんを抱きしめつつ到着した二人に答える。
「中島さんは、相変わらず面白いなぁ。それに、今の状況と台詞を他人が中途半端に見聞きしたら勘違するんじゃないかな?」
「勘違い?」
「ぶっちゃけると、カップルに見えるかな?」
そういわれて、自分の格好を振り返った。
ジーンズ、Tシャツ、キャップ帽・・・・・確かに間違えられなくもない。しかも、Tシャツにいたっては黒地で後ろに『闘犬魂』と達筆に書かれてあるデザインだ。
「高木さん、ゴメンよ。」
「あれ?離れるんだ?」
抱きつくのを止めた、私に委員長が質問してきた。
委員長、最近感じてるんだが、私で楽しんでるだろ?
「早々に手を出すことは許さないが、異性と交流することや、出会うことは本人の自由でしょ?そこまで、しないよ。それ以降は、高木さんの行動しだいだね。」
私が嫌なのは、『乙女ゲームのキャラクター』としての役割を演じることだ。なんで、学生生活の半分を他人の為に使わないといけないんだ。『中島 明里』という人物は、情報係だけではなくデートやバレンタインのチョコ作りとか、その他諸々のイベントでお膳立てをしていた。余程、ヒロインが好きだったんだろう。もしくは、趣味がなくて暇つぶしだったかもしれないが。
「中島、大丈夫か?」
暫く考え込んでいると、いつの間に隣にいたのか立川少年が声をかけてきた。
「び、ビックリした!!」
「悪い、何回か声をかけたんだが。木村からなんか言われたのか?」
「言われたというか、委員長が地を出してきたというか。」
「中島もか。最近、俺に対してもなんだ。でも、まぁ・・・・・今の方が木村らしくないか?」
視線を高木さんと会話している委員長に向ける。
「だね。今の方がいいね。」
「よし!その話はここまで。気を取り直すか?屋台を食べ歩くんだろ?」
しばらくの沈黙の後、立川少年が雰囲気を変えるように聞いてきた。
「勿論!!私の目的はそれだからね!!」
こうして、私の夏祭りが始まったのだった。




