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夏だ。夏と言えば、甲子園!!今年の大会も、熱かった。優勝候補の高校が勝ち抜くかと思いきや、初出場のダークホースと言われた高校が頂点に立ったのだ。
私がひいきにしている青流ドッグズの選手に爪の垢を飲ませたい程の熱闘だった。
まあ、その話は置いておこう。私は、今、中学野球関東大会の試合を観戦に来ている。建て前は、お兄ちゃんの応援。本音は、白熱するであろう野球の試合観戦だ。中学生だからと甘くみるなかれ。これが、以外に熱い試合があったりするのだ。
「あら~中島君の妹さん。また、応援に来てくれたの?ありがとう!」
野球部のお母様方に声をかけられる。
「今年の夏も暑いからきをつけてね。」
「日陰ならここが空いてるわ」
折りたたみ式のイスに座った時には、溢れんばかりの塩飴を頂いてしまった。
さっそく、塩飴を口に入れてグラウンドに視線を移した。
ピッチャーマウンドには、エースナンバーを付けている兄が投球練習をしている。こういう時の姿は、友人のまどかが言うとおり格好いいと思う。
その後、周りを守備する選手を確認していくと見慣れない背番号がショートの守備に付いていた。顔を確認しようにも帽子を被っている為か知ることはできない。ただ、背格好からして一年生という事は推測できた。
考える暇なく審判のブレイボールの合図が始まり、思考は試合の展開に移行していった。
試合は、完勝!!兄も良く頑張ったが、守備の貢献もあったように感じた。特にショート!!ボールに飛びついてアウトにした時は思わず手を叩いてしまった。
後片付けも終わり、両親が運転する車に二人で乗り込んでしばらくしてから兄に声をかけてみた。
「ねぇ、お兄ちゃん。」
「・・・・・・なんだよ。」
完勝したが、ランナーを出してピンチの場面を作ってしまった為か少し反省モードらしい。
「今日のショートは誰?レギュラーじゃないよね?」
「あぁ、いつも奴が自転車で転倒して骨折してな。そいつの次に実力があったのが新人だっただけ。」
「へぇ~そんな子が同級生なんだ。名前は?」
反省モードだった兄が私に視線を合わせた。
「お前も知ってる奴だよ。」
「だから、誰?」
兄がため息を大げさに吐く。
「立川だよ。」
「・・・・・・・・・・嘘。知らなかった。」
「当たり前だろ。今日、変更になったんだから。」
(会話する機会があったら祝いの言葉をかけよう。)
そんな事を考えていると、兄がそれを察したのか釘を刺してきた。
「言うなら、守備だけを誉めとけ。まだ、正レギュラーじゃないからな。立川も正レギュラーになってから祝われるのが嬉しいはずだ。」
「それは、経験から?」
「当たり前。」
その言葉を最後に、兄はまた反省モードに入っていった。




